どーも、ヤマトノです。
エネルギー価格の高騰もあり、今の日本はインフレか、それともデフレかで議論されています。
もしかすると、インフレやデフレの正しい定義がわからない方もいるかもしれません。
この記事では、両者のメカニズムを図でわかりやすく解説します。
インフレギャップとデフレギャップの内容を勉強しましょう。
公務員試験を勉強されている方、学生や社会人で経済学を学びたい方におすすめです。
インフレギャップとは
インフレギャップとは、総需要のグラフが完全雇用国民所得を下回る現象です。
完全雇用国民所得は、以下の記事で詳しく解説しています。
ここでは「総供給のグラフ」と表しましょう。
総需要のグラフが総供給のグラフを上回ると、物価が上昇してインフレーションを引き起こします。
つまり、インフレギャップはインフレーションが起こる前触れです。
なお、基本的にインフレは物価上昇が継続的に続く状態を指します。1回だけ物価が上がったとしても、特にカウントされません。
デフレギャップとは
デフレギャップは、インフレギャップの反対だと押さえてください。
総需要のグラフが、総供給のグラフを上回っている状態です。
需要不足を示しており、この状態が続くとデフレーション(物価の下落)を引き起こします。
デフレーションは失業率を高めやすく、日本でもこれまで何度も苦しめられました。
図でわかりやすく解説
インフレギャップとデフレギャップについて、図解で詳しく解説しましょう。
実際に問題を解いていくと、内容が理解しやすくなります。
図を見ながら、インフレギャップやデフレギャップのメカニズムを確認してください。
まずは、インフレギャップです。このように、総需要のグラフ(C+I)が総供給のグラフ(Y)を上回っています。
下に書かれているYFは完全雇用国民所得のことです。総需要のグラフは、G(政府支出)が含まれるケースもあります。
反対に、デフレギャップの状態も確認しましょう。こちらでは、総需要のグラフが総供給のグラフを下回っています。
要するに、需要不足の状態です。図で見れば、何となくイメージが掴めたかと思います。
計算でギャップを求める
次に、計算問題からインフレギャップとデフレギャップの開き具合を求めましょう。
よく使われるのは、総需要のグラフと完全雇用国民所得です。
後ほど詳しくまとめますが、総供給のグラフは45°をとるのが基本なため、計算で使わないパターンも少なくありません。
総需要のグラフがC+Iで表せられる点を踏まえ、それぞれのギャップについて求めましょう。
インフレギャップの計算
問題はこちらです。
0.4Y=120
Y=300
デフレギャップの計算
同じように、デフレギャップの値を求めます。
計算方法については、インフレギャップと大して変わりありません。
まずはY=C+Iの式から、Yの値を算出してください。
Y=0.5Y+85+90
0.5Y=175
Y=350
デフレギャップを求めるには、完全雇用国民所得との差を出します。
「300(完全雇用国民所得)−350(均衡国民所得)」
計算で導き出されるデフレギャップは-50です。
総供給のグラフは45°
インフレギャップとデフレギャップについて、それぞれ計算方法と図解を紹介しました。
ここで気を付けたいポイントは、総供給のグラフを45°にして考えることです。
国民所得を求めるには、45度分析が頻繁に用いられます。以下の記事も読んでみてください。
つまり、インフレギャップやデフレギャップを見直すには、総需要曲線を動かす必要があります。
なぜ解消しなければならないかを踏まえ、具体的な手段をまとめましょう。
ギャップを解消するには
インフレギャップとデフレギャップが広がりすぎるのは、経済的にも望ましい状態とはいえません。
主な理由は次のとおりです。
- インフレギャップ…物価が上昇しすぎる
- デフレギャップ…失業率の増加を招く
なるべく均衡国民所得へ収束できるよう、さまざまな対策を講じることが求められます。
それぞれの対策について触れましょう。
インフレギャップの是正
インフレギャップを放置しすぎると、物価の上昇を加速させる恐れがあります。
このギャップを解消するには、次の方法が有効です。
- 需要要因の削減
- 増税
- 金融引き締め
それぞれの対策を詳しくまとめます。
需要要因の削減
需要要因とは、簡潔にY=C+I+Gの右辺に当たると考えてください。
消費や投資、政府支出を下げる取り組みを施します。
総需要曲線が総供給曲線を上回っているため、単純にグラフを下げる考え方です。
開放経済であれば、輸出量を下げるのも需要要因の削減のひとつです。
増税
市場の需要が大きくなっている場合は、景気の熱を冷ます方法として増税も挙げられます。
消費税で考えると分かりやすいですが、5%と10%であれば5%の状態の方が買い物したくなるはずです。
仮にお金持ちの人数が増え、需要を押し上げている市場では増税でインフレギャップを解消できます。
しかし、今の日本では消費者物価指数が急上昇しているとはいえ、景気が良いともいえません。
確かに失業率は下がっているものの、賃金上昇率は世界ランキングで33位と微妙な結果です(G7最下位)。
インフレはGDPデフレーターやコアコア指数など、数々の見方があります。
現状の日本では、増税はあまり望ましくないと私は思います。
金融引き締め
インフレギャップの解消において、金融引き締めも対策のひとつです。
中央銀行が金利を引き上げれば、民間銀行も釣られて利上げに走ります。
利子が上がると企業は各民間銀行から借り入れしづらくなり、お金が市場に出回らなくなる寸法です。
このように財市場ではなく、貨幣市場でインフレギャップの解消もできます。
財市場と貨幣市場を区別させるためにも、IS-LM分析の記事に目を通してください。
デフレギャップの解消
デフレギャップを放置しすぎると、物価の下落を招きます。
お店で売られている商品の価格が下がれば、一般的な消費者からするとラッキーと思うかもしれません。
しかし、デフレには思わぬ落とし穴が存在します。
その落とし穴とは、物価の下落が住宅ローンや賃金に影響を与えないことです。
商売している側は、デフレの状況では価格を下げて売らなければなりません。
住宅ローンは下がらないため、ローンを組んでいる方はより多くの商品を売る羽目になるでしょう。
正社員の賃金も簡単には下げられず、あまり人を雇わないように調整します。
その結果、デフレの状況下では失業率の増加を招くのです。
デフレギャップの解消方法は、インフレギャップと真逆と捉えて問題ありません。
- 需要要因の増加
- 減税
- 金融緩和
それぞれの方法の特徴を掴んでください。
需要要因の増加
インフレギャップと異なり、デフレギャップが発生している市場では需要要因の増加が効果を発揮します。
消費や投資、政府支出の量を増やす取り組みが重要です。
ただし、消費や投資は意図的に増加できるものでもありません。国民や企業の意思に左右されるからです。
需要要因の中では、政府支出が最も直接的に影響を与えられます。
とはいえ、単純に政府支出さえ増やせばいいわけでもありません。消費や投資を刺激し、総需要の曲線を押し上げます。
GDPの計算式は、あくまで恒等式だと押さえましょう。政府支出さえ増やせば、必ずGDPが上がるものでもないのです。
減税
デフレギャップを解消するには、減税で需要を増加させた方が得策です。
税率を下げ、国民が消費しやすい環境を整えなければなりません。
日本がデフレに苦しんでいた頃、政府は消費税を中心に増税へ向かってしまいました。
デフレの脱却に苦戦した大きな要因だと考えます。
税金にもさまざまな種類がありますが、景気の動向を見つつ上手く調整する取り組みが大切です。
金融緩和
金融緩和もデフレギャップを解消できる方法のひとつです。現在の日本でも、引き続き金融緩和を続けています。
賛否両論ありますが、デフレから抜け出す意図としては間違えていません。
政府と日銀がお互いに協力し、それぞれの政策を全うすることが大切です。
まとめ
この記事では、インフレギャップとデフレギャップについて解説しました。
まずは、紹介したとおり図を見ておくとわかりやすくなります。
公務員試験では計算問題が問われる場合もあるため、確実に解けるよう練習を重ねてください。
インフレギャップおよびデフレギャップの解消の仕方も押さえると、経済のニュースを見るときにも役に立つでしょう。