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ピグー効果とは?古典派やケインズモデルと比較しながら解説

マクロ経済学では、資産の価値に焦点を当てた分析手法であるピグー効果も有名です。

この記事では、IS曲線や総需要曲線を使ってピグー効果の内容を紹介します。公務員試験対策として、ピグーの理論と古典派およびケインズモデルとの比較を押さえてください。

 

ピグー効果とは

ピグー効果とは、物価の下落が実質的に資産価値を向上させる効果のことです。イギリスの厚生経済学者であるピグーが提唱しました。

例えば、皆さんが1,000円のお金を持っていたとします。仮にパンが200円で売られていた場合、1,000円では5個しか購入できません。

一方でパンの値段が100円に下がると、購入できる数が10個に増えます。したがって相対的に自身の持っている資産(お金)の価値が高まったのを示しています。

物価の下落はデフレーションを招くものの、資産を持つ人が商品を多く手に入れられる要素の一つです。結果的に消費のみならず、生産高や雇用も刺激しやすいと考えています。

 

ピグー効果と総需要曲線

次に、ピグー効果と総需要曲線の関係性を解説します。総需要曲線とは国全体の需要を考慮すべく、財市場や貨幣市場および物価を考慮したモデルです。

ピグー効果は、ケインズを否定するうえで誕生した概念でもありますピグー・ケインズ論争。具体的にどのような仕組みを否定したのかを解説しましょう。

なお、総需要曲線については以下の記事でも詳しく紹介しています。マクロ経済学の重要な部分にもなるので、こちらも合わせて参考にしてみてください。

古典派モデルの総需要曲線

まずは、古典派モデルの総需要曲線を紹介します。

古典派は、物価が下落すると国民所得は増加すると考えました。このことから、総需要曲線は一般的に右下がりに描かれます。

加えて古典派は、IS曲線が垂直になるケースLM曲線が水平になるケースも想定していました。この場合は金融政策しても国民所得が変わらないため、総需要曲線は垂直になります

また古典派モデルでは、総供給曲線は基本的に垂直になると考えました。実質賃金と名目賃金は一体だと考え、常に完全雇用の状態の位置にあります。

しかし総需要曲線と総供給曲線がどちらも垂直になっていたらどうでしょう。

上図のように、総需要曲線と総供給曲線は交わらなくなります。この状態になってしまうと、完全雇用国民所得が実現できません。

ピグーの示した考え方

ピグーは、古典派モデルの総需要曲線・総供給曲線の2つが垂直になることはないと考えました。人々の消費は、所得のみならず資産価値にも影響するためです。

先程も説明したように、物価が下がれば商品を購入する量も増えます。物価の下落は、人々の消費を上げる要素の一つです。

人々の消費が上がれば、IS曲線で示される財市場の需要は増加します。なぜなら財市場は「Y=C+I+G」で構成され、C(消費)の部分が国民所得を増やす要素となっているからです。

要するに物価が下落すると、回り回って国民所得の増加には結びつきます。総需要曲線は垂直になりようがなく、必ず右肩下がりで示されるとピグーは唱えました。

 

ピグー効果とケインズ

次にピグー効果とケインズモデルの関係性も紹介します。ピグーの考えは、ケインズの考え方も否定する要素があります。それぞれの主張をしっかりと区別して押さえましょう。

ケインズの総供給曲線

まずは、ケインズモデルにおける総供給曲線を理解しましょう。

基本的にケインズの理論において、重視されている要素は貨幣・利子・雇用です。労働市場では、古典派とは異なり「名目賃金」に依存すると考えました。

名目賃金は物価を考慮していない賃金のことです。ケインズモデルによれば、実際は物価高騰によって賃金が増えたとしても、明細上の金額が上がっていると人間は喜びます。

つまり物価が上がれば上がるほど、働きたいと思う人も増えて国民所得は上昇します。この特徴を示したグラフが次のとおりです。

ケインズのAD-AS分析

ケインズモデルでは、総供給曲線は完全雇用が達成されるまで右肩上がりのグラフになると考えました。上記でも説明したように、物価の上昇は明細上の報酬アップにつながるためです。

国は完全雇用を達成すべく、積極財政や金融緩和を採ります。するとAD曲線が右側にシフトするため、完全雇用の位置に近づくと考えました。

ケインズの理論では、積極財政や金融緩和の重要性を唱えているといえます。

ピグーとケインズの考え方の違い

単純に国の物価が下がった場合、ケインズはLM曲線(貨幣市場)のみが変化すると考えます。物価が下がると貨幣供給量が高まり、LM曲線が右方向に進むという考え方です。

一方で、ピグーの場合は物価の下落が財市場にも影響を与えると論じました。このことから、たとえIS曲線が横軸に垂直あるいは流動性の罠が生じても総需要曲線は右肩下がりとなります。

ピグー・ケインズ論争

最後に、ピグー・ケインズ論争をまとめましょう。この内容は公務員試験では問われないかと思いますが、背景を知る際の参考材料として押さえてください。

ピグーの立場は、やや異なる部分はあるものの基本的に古典派側に立っています。そのため、ケインジアンの考え方とは真っ向から対立しました。

ピグーの場合は賃金の引き下げが起こっても、貨幣価値の需給関係がしっかりと調整できていたら完全雇用は達成できると考えます。

一方で、ケインジアンは不況に陥ったときは「政府の積極的な介入」が必要だと論じました。

特にピグーの「貨幣賃金を下げれば物価も下がり、雇用量は増える」という考え方には、利子率との関係性を無視していると批判します。

ピグーの立場に立つと、貨幣賃金の下落はIS曲線を右側に動かすため、本来ならば利子率を上げなければなりません。

ケインズの立場では、貨幣賃金が下落すると利子率は下がるとしました。貨幣賃金が下落すれば債券価格が上がり、逆の相関関係にある利子率が下がるという理論です。

ここでポイントとなるのは、LM曲線の動きです。ケインズの理論では、貨幣賃金の下落はLM曲線を右側に移動させるため、利子率が下の方に動きます。

本当はカルドアなどの人物も出てきますが、簡単な背景としてピグーとケインズは利子率を巡って争いがあったことを押さえてください。

 

ピグー効果のまとめ

今回は、ピグー効果についてまとめました。ピグーは、物価の下落は結果的に生産高や雇用の増加につながると考えます。

この特徴を押さえつつ、総需要曲線や総供給曲線の動きを理解することが重要です。

また直接的に問われるケースはほとんどないものの、ピグーとケインズの論争も背景として知っておくといいでしょう。

古典派とケインジアンの内容理解にもつながるので、何度も復習を繰り返してください。