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セイの法則と有効需要の原理の違い|マクロ経済学の理論

経済学の勉強をすると、セイの法則という言葉が出てきます。セイの法則は財市場を捉える方法のひとつですが、有効需要の原理と対立の関係にあります。

今回は公務員試験のマクロ経済学より、セイの法則と有効需要の原理の違いを解説します。理論の違いを押さえつつ、自分なりにも比較できるようにしてください。

◆この記事でわかること◆
・セイの法則の仕組みと具体例
・有効需要の原理の仕組みとセイの法則との違い
・世界恐慌にかかるアメリカの対応
・財政政策と金融政策の関わり合い

 

セイの法則とは

セイの法則とは、財市場の供給は常に同じ量の需要を作り続けるという考え方です。フランスの経済学者で、古典派のジャン=バティスト・セイが提唱しました。

セイの法則の細かい内容について解説しましょう。

セイの法則の具体例

セイの法則について具体例を挙げながら説明します。

例えば、スーパーでパンが30個売られていたとしましょう。経済学の観点では、商品として販売されるパンの個数を供給量と考えます。

財の供給が常に同量の需要を作り続けるのであれば、消費者側は店頭に並べられている分を購入すると想定されます。

仮に売れ残りが出た場合は、価格を下げることで需要を等しくするのがセイの法則の理論です。

確かに、夜遅い時間にスーパーへ行くと「おつとめ品」と商品が安く販売されていることがあります。このスーパー側の対応は、まさしく価格を下げて需要を設定し直す行為です。

実際にイメージしてみると、セイの法則の詳しい内容が理解できるかと思います。

古典派は財と労働に着目

ここまでの話は、あくまでミクロ経済学での考え方です。次にマクロ経済学の理論として、古典派の考え方を見ていきます。

古典派はセイの法則にもあるとおり、価格に大きな信頼を寄せています。需要と供給の差は、すべて価格の調整によって改善されると考えました。

そのため完全雇用国民所得を達成させるうえで、財市場と労働市場のみに焦点を当てます。この2つの市場を合わせて、実物部門と呼ぶことも念のため押さえるといいでしょう。

古典派と貨幣市場

古典派の立場では、貨幣市場を実物部門と分けています。つまり貨幣は、財市場や労働市場には影響を与えないとするのが主な考え方です。

この状態を貨幣ヴェール観と呼びます。重要なワードになるので、定義と合わせて用語を覚えてください。

なお古典派は、貨幣の残高によってインフレーションを調整できるとも考えました。この理論が貨幣数量説です。

詳しい内容は別の記事でまとめる予定ですが、古典派は貨幣残高が物価水準のみに影響を与えると結論を下しました。

セイの法則の限界

セイの法則は一見理にかなっているようにも見えますが、ケインズからは長期的な視点を持てていないと批判されます。その原因が投資に対する見方です。

古典派の立場では、企業の貯蓄は全て投資や消費に回すと考えました。貯蓄が投資されることで、利子率を決定するのが理論の基軸です。

対するケインズは「企業は将来を見据え、お金を投資に回さないで貯蓄することもあるだろう」と唱えます。いくら投資するかを長期的に考えたうえで、貯蓄額を決めると論じました。

特に、セイの法則の説が通用しなくなったのは恐慌が訪れたときです。本来不況の中でも、セイの法則が正しければ市場で販売されているものは全て購入されなくてはなりません。

しかし、不況が続いてしまっては価格をいくら下げても商品は購入されないでしょう。こうした観点から、供給が需要を左右する考えは現実的ではないとケインズより批判を受けました。

 

セイの法則と有効需要の原理との違い

セイの法則を否定する形で誕生した理論が、有効需要の原理です。こちらはケインズ経済学をもとに確立されました。

有効需要の原理の特徴を押さえつつ、セイの法則との違いにも触れていきましょう。

有効需要の原理とは

有効需要の原理とは、需要が供給を作り出すという考え方です。供給から需要が作られるといったセイの法則とは逆の立場を採っています。

ケインズが有効需要の原理を唱えた背景には、1929年の世界恐慌による大量失業があります。たとえ失業者が出た場合、政府による財政出動で経済状況を救えるのではと考えました。

つまり、ケインズ政策で重要な要素のひとつが財政政策です。実際に世界恐慌時のアメリカでは、政府資金の投入や大規模な公共事業といったニューディール政策で乗り切りました。

有効需要の貨幣市場

ケインズの考えでは、金融政策(貨幣市場)と財政政策(財・労働市場)は深く関連します。ここが、貨幣ヴェール観を生み出したセイの法則との大きな違いです。

まず貨幣の量を増やせば、国民の持つお金も増えて債券を購入しやすくなります。債券に需要が集まると、債券価格が上がる一方で負の相関関係を持つ利子率が下がります。

利子率が下がれば、企業も銀行から借り入れできる金額を増やせるはずです。したがって、投資の増加に繋がります。

これらの動きを経済学で表せば、LM曲線を右にシフトしたらIS曲線も右にシフトできる状態です。図で表すと以下のようになります。

このようにケインズは、財政政策と金融政策は常に連動すると提唱しました。

なおそれぞれの曲線については、下記の記事でも詳しくまとめているのでご覧ください。

www.yamatono.info

 

セイの法則および有効需要の原理を整理

今回は、セイの法則と有効需要の原理の違いについてまとめました。特に押さえてほしいポイントを表で整理しましょう。

  セイの法則 有効需要の原理
提唱者 セイ(古典派) ケインズ
定義 供給が需要を作る 需要が供給を作る
重視するもの 価格 数量の調整
利子率を決める要素 貯蓄 金融政策
完全雇用国民所得 実物部門のみ 財政政策と金融政策

 

マクロ経済学を勉強する際には、どうしても専門用語を理解する必要があります。最低限の用語を復習し、公務員試験のテキストもストレスなく読めるようにしてください。