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司法権の限界とは?公務員試験に出題されそうな判例を紹介

国は、立法・行政・司法による三権分立で成り立っています。今回のブログでは、司法の内容の基礎となる司法権の範囲と限界について解説しましょう。

特に押さえてほしいのが、各判例の内容と結論部分です。公務員試験を含め、資格試験で法律を使う方はぜひ参考にしてみてください。

 

司法権の限界とは

まずは、簡単に司法権の範囲と限界の定義を解説します。公務員試験で直接問われるケースはほぼないと思いますが、基本を知っておくことは大切です。

司法権の範囲と限界の意味をしっかりと押さえてください。

司法権の範囲とは

司法権の範囲とは、司法が自らの権力をどこまで行使できるかを示した基準です。

戦前までの大日本帝国憲法では、司法権の範囲は民事裁判と刑事裁判のみとされていました。行政事件については、通常の裁判所とは異なる行政裁判所の管轄でした。

しかし、行政事件を行政主体に裁かせてしまうと、身内に甘くなるといった弊害も生まれます。そこで、日本国憲法では行政裁判所を筆頭に特別裁判所の設立を禁じました(一部例外もある)。

現行制度での司法権の範囲は、行政事件も含めた全ての裁判となっています。

司法権の限界の定義と例

司法権の限界とは、司法が権力を行使できない概念のことです。司法権で決着を付けられない領域であり、他の機関が代わって裁判を担当します。

主な事例として挙げられるのが以下の2点です。

  • 議員の資格争訟
  • 弾劾裁判

議員の資格争訟については、衆議院と参議院によって裁判が行われます。一方で弾劾裁判を担当するのは、両議院の議員で組織された弾劾裁判所です。

弾劾裁判所は、憲法の例外として定められた特別裁判所にあたります。そのため、一般的な裁判所では審査の対象にはなりません。

 

 

司法権の限界にかかる判例

司法権の限界にかかる判例を紹介します。さまざまな判例がありますが、公務員試験でも問われやすい内容に焦点を当てましょう。ここで取り上げる内容は、最低限として覚えるようにしてください。

砂川事件

砂川事件は、米軍基地の拡張に反対したデモ隊が基地内に侵入した事件です。騒ぎはどんどん大きくなり、最終的には流血事件にまで発展します。

安全保障条約が違憲にあたると争われ、最高裁判所は司法審査が全く及ばないとまでは言っていないものの、結論として違憲無効とは認めませんでした

安全保障条約については、高度な政治性を持つために司法審査には原則として馴染みません。一目見ただけで、明らかに違憲無効と判断された場合は司法の対象となります。

共産党袴田事件

共産党袴田事件とは、自身が所属している日本共産党を批判したことで除名処分を受け、さらに当該政党から家屋の明渡し命令が下された事件です。

最高裁判所は、政党の内部的自律権について特別の定めがない限りは尊重すべきと判断します。要するに「政党のルールくらい自分たちで運営してくれ」ということです。

当然ながら除名処分も、内部的な問題に留まる限りは審査権が及ばないとしました。

苫米地事件

苫米地事件は、衆議院の解散において内閣による助言と承認がなかったなどのルール違反が争われた事例です。苫米地さんという元議員が、資格の確認と歳費の支払いをすべきだと訴えます。

最高裁判所は、国会の行為は基本的に裁判所の審査に及ばないと判断しました。こうした判断は、最終的に国民の政治判断に委ねられるためです。

したがって、衆議院の解散に関しても国家統治の話になるので、裁判所は審査できないと結論を下します。

富山大学単位不認定事件

富山大学のA教授の講義を受けていたところ、その教授が授業担当を停止する処分を受けました。これにより、学生に対しても大学側は代わりの講義を受けるように指示します。

しかし、一部の学生は指示に従わなかったために単位の認定が認められませんでした。単位不認定に納得が行かず、原告は行政訴訟を提起します。

最高裁判所が出した結論は、これまで紹介した判例とほとんど同じです。要するに、とある組織で起きた内部的な問題は、自主的・自律的に解決するのが望ましいとしました。

今回のケースについても、あくまで富山大学内で解決すべき問題だと判断します。結果的に、司法審査の対象にはならないと結論付けられました。

なお内部的な範囲を超えて、法律的に問題がある場合は対象となることもあります。

警察法改正無効事件

こちらのケースでは、警察法の改正を巡って与野党で激しい対立が起こりました。そのため会期が2日間延長されたものの、そもそも延長に反対していた野党議員は出席しませんでした。

しかし、野党議員が欠席している最中に法案が可決されてしまいます。この議決は違法かつ無効であると住民も怒り、住民訴訟が提起されました。

裁判所は、議事手続について司法が審査することを明確に否定します。例外もなく、裁判所としては両議院の自主性に委ねるべきだと判断しました。

板まんだら事件

板まんだら事件とは、特定の宗教団体で使われる「板まんだら」が偽物ではないかと争われた事例です。結論としては、法律の争訟にはあたらないと裁判所は訴えを却下しました。

裁判の対象となるのは、具体的な権利義務かつ法律関係があるか否かです。加えて、終局的に解決できるものに限定されます。

板まんだら事件で争われたのは寄付金の返還です。ここだけに焦点を当てれば、確かに具体的な権利義務と法律関係は認められるでしょう。

しかし、偽物か否かを判断するには「板まんだら」の価値を裁判所がジャッジしなければなりません。板まんだらは信仰の対象であり、その価値を客観的に見出すことはできません。

そのため、裁判の対象にはならないと最高裁は判断しました。板まんだら事件については、以下の記事で詳しく取り上げているので参考にしてください。

 

司法の限界のポイント整理

最後に司法の限界の重要なポイントを整理しましょう。

裁判所は、全ての争いについてジャッジできるわけではありません。内容によっては、訴えが認められないケースもあります。

ここで、司法の対象にはならないケースの例をまとめてみましょう。

  • 高度な政治性を有する
  • 権利義務が抽象的
  • 宗教や信仰が関わる
  • 内部的な問題に留まる

とはいえ、判例によってどの程度まで認めるかの基準はさまざまです。砂川事件の判旨では高度な政治性を有するものの、司法審査の対象になることもあると認めています。

公務員試験レベルであれば、判例の内容と結論を中心に覚えた方が望ましいでしょう。

最後に、司法の対象となるケースとそうでないケースを表でまとめてみました。今回の記事で紹介しなかった判例も書いているので、公務員試験の勉強の参考にしてください。

対象になる 対象にならない(原則)
・地方議員の除名処分
・国立大学の専攻科修了の認定
・議員の資格争訟
・弾劾裁判
・地方議員の出席停止
・政党による党員への処分
・衆議院の解散
・法律の制定や改正
・国立大学の単位不認定
・安全保障条約

 

ただし富山大学単位不認定事件や砂川事件など、当然ながら例外もあるので自身でも判例を読んでおくことをおすすめします。