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便宜裁量と法規裁量の違いとは?行政裁量のポイントを押さえよう

今回も公務員試験対策ということで勉強を頑張っていきましょう!

自身が持っている参考書も見比べながら対策してみてください。

今回の内容は「行政裁量」です。

伝統的な(古い)解釈である便宜裁量と法規裁量の違いを中心に、細かな制度の仕組みをまとめたいと思います。

さらには、現代でも使われている要件裁量と効果裁量の違いも解説します。

全く聞き慣れない言葉だと思いますが、世の中の仕組みを知る上でも重要なので勉強しましょう。

 

便宜裁量と法規裁量の違い

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行政裁量には、古くから以下のような分け方がありました。

  • 便宜裁量(自由裁量)
  • 法規裁量(覊束裁量)

こちらは、伝統的な解釈で現在から見ると古い考えだと認識されています。

裁判所は法規裁量しか審査しないことが通例だったものの、現在では便宜裁量も審理の対象になりました。

公務員試験では、これらの裁量も問われるためしっかりと違いを押さえてください。

便宜裁量(自由裁量)

はじめに便宜裁量についてですが、こちらは目的や公益に適するかを判断する裁量です。

主な具体例は次の3つあります。

  • マクリーン事件
  • 伊方原発訴訟判決
  • 文部大臣の教科書検定

これらの例については、下記の記事にまとめています。

ぜひ、併せてご覧ください。

後述しますが、便宜裁量には要件裁量と効果裁量の2種類が存在します。

法規裁量(覊束裁量)

法規裁量とは、どの法律に当てはめ、解釈するかを指す裁量のことです。

例を挙げれば、公安委員会の自動車免許の取消処分が該当します。

当該裁量については当然のように、裁判所(司法)の審査が及びます。

しかし、先述したとおり現代の司法審査の対象においては法規裁量と便宜裁量を明確には区別しません。

ちなみに、覊束の読み方は「きそく」です。難しい漢字は、スラスラと読めるようにした方が勉強も捗りやすいでしょう。

行政裁量とは?

最後に、裁量の意味を簡単に紹介します。裁量とは、その人自身の判断で処理をすることです。

行政裁量に当てはめて考えれば、行政の判断で処理をする状態を指します。

前回のブログでも、裁量については簡単に触れているため確認してください。

行政は基本的に法律のルールに沿って活動します。しかし、行政の仕事は多種多様かつ大量の処理が必要です。

いちいち何かの判断材料に則して考えていたら、業務が進まなくなるでしょう。

そのトラブルを防いで円滑な業務を進めるため、行政にはある程度の裁量が認められています。

  • 便宜裁量と法規裁量は伝統的な解釈
  • 昔は法規裁量のみ司法審査の対象だった
  • 現代は便宜裁量も審査対象になる

 

便宜裁量の内容

便宜裁量はさらに細かく分類していくことが可能です。ここも公務員試験で問われやすいため、しっかりとマスターしましょう。

主に便宜裁量は次の2通りに分けられます。

  • 要件裁量
  • 効果裁量

具体的な違いをしっかりと勉強してください。

要件裁量

要件裁量とは、法律の要件の当てはめ段階における裁量と定義されます。

「裁量権の範囲を超えるか、濫用がなければ司法の審査の対象にはならない」ところが法規裁量との違いです。

要件裁量は、法律が細かく確定できていない場合に行政の裁量が用いられます。

有名なマクリーン事件がその一例ですね。

マクリーン事件は、在留外国人の政治活動と在留期間に関する法務大臣の処分が問題視されました。

詳しい内容は、下記の記事を参考にしてください。

在留外国人の在留期間に関しては『出入国管理令の規定』に沿うものの、判断は法務大臣の裁量に任せられています。

その裁量が常識的に考えて妥当性を欠いていなければ、違法にはならないと最高裁は最終的に判断しました。

マクリーン事件も法務大臣が更新の延長を拒否した判断を下したのは、違法ではないと示しています。

このように法律が抽象的でありながら、具体的な中身を決めないといけない場合に採られる裁量が要件裁量です。

法規裁量は「適用させる法律」を決める裁量であるため、内容も全然違うことが分かるでしょう。

効果裁量

効果裁量は『行政がどのような処分を用いるか』といった手段や方法に関する裁量です。

国家公務員の懲戒処分の例が最も分かりやすいと思います!

国家公務員が失態を起こして問題となったとします。

この時、国家公務員法の規定に従って次の処分が可能です。

  • 戒告処分(口頭注意)
  • 減給処分(給料を下げる)
  • 懲戒解雇(クビ)

効果裁量により、どの処分を選ぶかという決定権は行政に与えられます。

効果裁量も要件裁量と同じく、裁量の範囲を逸脱または濫用が見られたときに司法の判断も適用されます。

ちなみに、行政裁量には時の裁量という概念も欠かせません。

行政が裁量権を発揮するタイミングもまた独自で判断できるといった裁量です。

過去にも出題されているため、タイミングにも裁量権が与えられることは覚えた方がいいでしょう。

  • 要件裁量は法律への当てはめの裁量
  • 効果裁量は手段や方法に関する裁量
  • 時の裁量の概念もある

 

まとめ

今回も公務員試験の行政法をテーマにしました。

行政裁量には2つの考え方があります。

  • 便宜裁量(裁量の範囲逸脱・濫用があったときだけ司法判断可能)
  • 法規裁量(原則全て司法判断適用可能)

便宜裁量は以下のように分かれます。

  • 要件裁量(法律の要件判断にかかる裁量)
  • 効果裁量(手段や方法にかかる裁量)

『行政裁量』もどちらかといえば点数の取りどころです。

行政法は全体的に取っ付きにくいため、難易度が高いと感じるかもしれません。

それを何とか分かりやすくイメージできるよう理解することが大切です。

  • 各裁量の違いを押さえる
  • 司法審査となった判例を把握
  • 昔と今の認識の違いを押さえる