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無効等確認訴訟と第三者効|なぜ取消訴訟の規定が準用されない?

公務員試験や行政書士試験の「行政法」で、ややこしいテーマとして挙げられるのが無効等確認訴訟などが該当する「その他の抗告訴訟」です。こちらの訴訟は、第三者効が認められないといった特徴があります。

この記事で説明するのは、無効等確認訴訟の仕組みについてです。第三者効の規定が準用されない理由、原告適格などを詳しく解説します。

公務員試験や行政書士試験を受験される方は、ぜひ記事を参考にしてください。

 

無効等確認訴訟とは

無効等確認訴訟とは、行政の違法な処分や裁決によって損害を受ける者が、当該行為が無効であるのを確認するための訴訟です。

例えば土地改良事業により、行政が土地の区画を整理したとしましょう。

区画整理事業を実施した際に、行政は土地の所有者に対して整理後の土地を割り当てないといけません(換地処分)。ただし中には、換地(施工後の土地)が従前地(施行前の土地)よりも面積が小さくなることもあります。

土地区画整理事業について簡潔に説明した図

こうした不利益があまりにも酷ければ、所有者は無効等確認訴訟の訴えを提起できます。原告が勝訴すると、行政の処分や裁決に明確な瑕疵があるとして効果は無効化されます。

 

第三者効とは

ここで今回のテーマのひとつでもある、第三者効について解説しましょう。第三者効とは「対世効」とも呼ばれており、判決の効力が第三者にも及ぶ状態のことです。

行政事件訴訟法では、取消訴訟のみに第三者効が与えられています。そのため判決が確定すると、訴訟に参加していない人もその内容に矛盾するような訴えは認められません。

行政事件訴訟法では、第三者効の有無も問われやすい部分のひとつです。ここでは「取消訴訟」のみに適用されると覚えてくださいね。

 

 

無効等確認訴訟の基本

無効等確認訴訟は、取消訴訟と比べると少し影の薄い分野といえます。そのため勉強が疎かになりやすく、意外と試験で稼ぎにくくなる範囲です。

無論、出題される確率も物凄く高いわけではないので、あえてスルーしている人もいるでしょう。しかし公務員試験や行政書士では、1点によって合否を分けることもあります。

ここでは基本的な内容を簡潔に説明するので、最低限覚えてほしいところだと認識してください。

原告適格

原告適格とは、訴訟を提起できる(原告になれる)資格のことです。無効等確認訴訟も、全くもって無関係の人が訴えを起こせるわけではありません。

当該訴訟について定めた第36条では法律上の利益を有する者と規定されています。しかし原告適格の判断は、司法のプロでも見解が分かれている状態です。

原告適格を得るには、大きく分けて3つの要件があると考えられています。

  • ①処分・裁決により損害を受ける恐れがある
  • ②無効等確認を求めるうえで法律上の利益を有する
  • ③現在の法律では解決できない

判例では全ての要素を満たしていなくとも、①の要件さえあれば訴えを提起できるとしました。これを二元説とも呼びますが、説の名称まで覚える必要はありません。

ちなみに「法律上の利益を有する者」の捉え方は、基本的に取消訴訟と同じです。取消訴訟の原告適格に関しては、以下の記事でまとめているので併せて読んでみてください。

 

取消訴訟の規定が準用される例

無効等確認訴訟では、取消訴訟の規定が準用されるパターンがいくつかあります。主な例として挙げられるのがこちらです。

  • 被告適格
  • 裁判所の管轄
  • 訴訟の移送
  • 請求の客観的併合・追加的併合
  • 職権証拠調べ
  • 執行停止

ほかにもありますが、代表的な例だけ並べてみました。特に青文字で書いた「職権証拠調べ」「執行停止」は問われる可能性が高いので必ず覚えてください。

簡潔ではあるものの、取消訴訟については以下の記事でも解説しています。

出訴期間に制限なし

無効等確認訴訟に関しては、出訴期間に制限がありません。つまりいつでも訴訟の提起が可能です。

ちなみに取消訴訟では、処分があったのを知った日から6カ月、処分があった日から1年間という制限があります。この規定は無効等確認訴訟では準用されていません。

第三者効の規定は準用されない

無効等確認訴訟においては、第三者効の規定も準用されていません。要するに行政事件訴訟法のルール上では、無効等確認訴訟に第三者効は認めていないと解釈できます。

ただしここで注意したいのは、最高裁判例で無効等確認訴訟にも第三者効を認めたケースがあることです(昭和42年3月14日最判)。

この判例は、現在の行政事件訴訟法が実施される以前のものです。したがって現在の行政事件訴訟法においても、判例を適用できるかは今でも議論されています。

事情判決が準用されない

無効等確認訴訟は、事情判決の規定が準用されないことも覚えてください。事情判決とは行政の処分・裁決が違法と認められても、公に著しい不利益が生じる場合には裁判所が請求を棄却できる制度のことです。

したがって無効等確認訴訟においては、公に著しい不利益がある場合でも請求の棄却はできません。

 

無効等確認訴訟のまとめ

無効等確認訴訟は、取消訴訟と比べて対策が疎かになりやすい分野のひとつです。その割にはルールが少し複雑であり、対策が難しいと感じる人もいるでしょう。

行政事件訴訟法は、判例を中心に制度の仕組みも幅広く問われる可能性があります。重点的に対策し、なるべく一問でも多く正答できるようにしましょう。