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委任契約とは?解除や終了事由の条件について詳しく解説

公務員試験の民法における典型契約の中でも、委任契約は意外と無視できない分野です。売買契約や貸借契約と比べると頻出度は少し下がりますが、基礎的な内容はしっかりと押さえたほうがよいでしょう。

この記事では委任契約の解除や終了事由の条件について解説します。公務員試験や宅建試験を受験される人は、勉強の参考にしてください。

 

委任契約とは

委任契約の仕組みについて簡潔に説明している図

委任契約とは、当事者の一方が事務処理を別の人に委託する契約のことです。主な例として弁護士が挙げられます。

例えば知人からお金を返してもらえない人が、損害賠償請求の訴訟を提起するとします。しかし民事訴訟は複雑な点も多く、一人で手続きを進められない人も少なくありません。

そこで弁護士に依頼すれば、複雑な手続きを代わりにしてもらえます。

原則として無償である

委任契約で押さえたいポイントは、原則として無償契約である点です。先程「弁護士」の例を出してしまったため、混乱してしまう人もいるでしょう。

しかし委任契約は請負契約とは異なり、あくまで事務処理を誰かに委託する契約です。そのため対価は基本的に発生せず、委任者(委託する側)が受任者(委託される側)へ一方的に行う片務契約となります。

一方で弁護士業のように、特約があれば有償で委託することも可能です。有償契約であれば、お互いの意思表示で契約が結ばれるので双務契約に該当します。

現実的な話をすれば、日本において無償で委任契約が結ばれるケースはあまり多くありません。大体の委任契約が、弁護士との契約のように報酬が発生しています。

受任者に働く義務

受任者は無償といえども、事務処理にあたっては善管注意義務が働きます。委任者との信頼関係に基づいて契約が成立するため、自己と同一の注意義務では足りません。

また受任者が委任事務をするにあたり、金銭や果実を受け取ったら委任者へ引き渡さないといけません。これを付随義務と呼び、有償契約においても報酬の支払いとは同時履行の関係に立たないとされています。

ほかにも委任者から請求があったときは、いつでも処理の状況を報告する必要があります。委任事務の完了後では、遅滞なく結果の報告をするのも義務のひとつです。

複委任の条件

複委任とは、受任者が引き継いだ委任事務をさらに別の誰かへ委託することです。委任者は受任者を信頼したうえで委託するため、原則として複委任は認められていません。

しかし以下の条件が成立する場合には、例外的OKとされています。

  • 委任者の許諾を得た
  • やむを得ない事由がある

複受任者の権限は、基本的に受任者と同じです。なお履行補助者はいつでも選任できるので、複委任のケースと混同しないように注意してください(履行補助者がいても受任者が事務処理に責任を負うのは変わらない)。

 

 

委任契約の報酬と費用

画像はイメージです

先述のとおり、委任契約は原則として無償で成立するものです。特約がなければ有償契約にはなりません。一方で民法では、委任契約の報酬についても規定されています。

報酬は履行の割合に応じる

事務処理が完遂すれば問題ありませんが、委任者に帰責事由がなく中途終了する可能性もあります。こうしたケースでは、すでに履行した割合に基づいて報酬が発生するのが基本です。

また支払いについては、特約がない限りは後払いとされています。

報酬の支払いと同時履行

報酬の支払いと事務処理に関しては、同時履行の関係には立ちません。なぜなら事務処理が完遂(あるいは中途終了)したのを見て、その割合に応じた報酬が発生するためです。受任者は支払いがないからといって、同時履行の抗弁権は主張できません。

一方で委任事務は、相手企業の売上促進や新規顧客数獲得などの「成果」を上げるのを目標にする種類(成果報酬型)もあります。こうした契約においては、成果の引き渡しと報酬は同時履行の関係に立ちます

同時履行の抗弁権については、以下の記事でも詳しくまとめているので参考にしてください。

費用の前払請求と償還

委任事務をするにあたり、消耗費等の費用が発生することもあります。受任者が請求したときは、委任者は前もって費用を支払わないといけません

受任者が先に支払いを済ませたら、後から委任者に対して費用や利息の返還請求も可能です。同様に受任者が債務や損害を負担した場合、委任者にはこれらの弁済も求められます。

 

委任契約の解除

委任契約は、委任者側・受任者側双方ともいつでも解除できます。ただし委任の解除において、以下の事情があるときは解除した側が損害賠償を支払わないといけません。

  • 相手方にとって不利な時期にあたる
  • 委任者が受任者の利益をも目的とする委任の解除

とはいえ損害賠償が発生するだけで、解除そのものを否定されるわけではありません。この辺りは問題でも狙われるかもしれないので注意してください。

またやむを得ない事由があったときは、例外的に賠償の義務もなくなります。解除の規定は賃貸借契約の規定が準用されることから、将来に向かってのみ効力が生じます。

 

委任契約の終了事由

お互いが解除しなくとも、委任契約はとある事由が発生すると終了します。表でまとめてみたので、終了事由についてしっかりと整理してください。

  委任者 受任者
死亡
破産手続開始の決定
後見開始の審判

表でもわかるとおり、委任者が後見開始の審判を受けても委任契約は終了しません。なぜなら委任事務を引き受けるのは受任者であるため、処理の内容には何の影響がないからです。

委任の終了事由を対抗するには、次の要件が必要とされています。

  • 相手方への通知
  • 相手が事情を知っている

また取り決めによっては、委任者が死亡しても終了事由にしないことも可能です。

 

委任契約は基礎を押さえよう

委任契約は勉強が追いつかない人もいるかもしれませんが、内容はそれほど難しくありません。基礎的な部分さえ押さえていれば、試験でも問題なく対応できるはずです。

ただし勉強が追いついていないと、いざ出題されたときに自信を持って答えられなくなります。得点源にもできる分野であるため、頻出度がそれほど高くないとはいえ、定期的に見直すとよいでしょう。