行政書士試験では、委任契約について出題される可能性もあります。日常生活でも比較的関わる機会の多い契約ですが、細かいルールを覚えるのが難しいと感じる人もいるでしょう。
この記事では、行政書士試験に一発合格した筆者が、委任契約の解除や終了事由の条件について解説します。行政書士試験など、民法を勉強される方はぜひ参考にしてください。
委任契約とは

委任契約とは、当事者の一方が事務処理などを別の人に委託する契約のことです。委任契約の一般例として、自動車の名義変更を相手に依頼するケースが挙げられます。
たとえば皆さんが所有している車を、遠方に住んでいる兄弟に譲渡したとします。本来であれば、旧所有者も新所有者の住所地を管轄する陸運局で手続きしなければなりませんが、遠方に住んでいたら難しいでしょう。
そこで委任状を新所有者に渡し、自分の手続きを代わりにやってもらうよう依頼できます。このように委任状を使うやり方が一般的ですが、委任契約自体は諾成契約です。つまり、必ずしも書面が必要なわけではありません。
原則として無償である
委任契約は、原則として無償契約です。請負契約とは異なり、基本的に対価は発生しません。したがって委任者が受任者へ一方的に依頼する、片務契約であることが特徴です。
しかし弁護士のように、特約があれば有償契約になる場合もあります。有償契約の場合、対価が発生するので片務契約から双務契約に変わることも押さえてください。
複委任の選任
複委任とは、受任者が引き継いだ委任事務をさらに別の誰かへ委託することです。委任者は受任者を信頼したうえで委託するため、原則として複委任は認められていません。しかし以下の条件が成立する場合には、例外的OKとされています。
- 委任者の許諾を得た
- やむを得ない事由がある
複受任者の権限は、基本的に受任者と同じです。なお履行補助者はいつでも選任できるので、複委任のケースと混同しないように注意してください(履行補助者がいても受任者が事務処理に責任を負うのは変わらない)。
委任契約で受任者が負う義務
委任契約において、受任者は大きく分けて3つの義務を負います。
- 善管注意義務
- 報告義務
- 果実を引き渡す義務
具体的にどのような義務が発生するか、細かく説明していきます。
善管注意義務
たとえ無償の委任契約でも、受任者には善管注意義務が働きます。委任者と受任者の間で信頼関係があり、はじめて成立する契約であるためです。
したがって自己と同一の注意義務では、委任契約のルールを破ったことになります。「無償」という言葉に惑わされないように注意してください。
報告義務
受任者は委任者から請求があったら、委任事務の処理の状況をいつでも報告しなければなりません。正しく委任事務がなされているか、委任者が随時確認できるようにするためです。
併せて委任事務が完了したら、遅滞なく経過や報告する必要があります。皆さんも受任者の立場になったときは、報告義務を忘れないようにしましょう。
果実を引き渡す義務
受任者が委任事務を進めるにあたり、金銭などの果実を受け取るケースもあります。委任事務で発生した果実については、委任者に引き渡さないといけません(民法第646条)。
ただし引き渡すタイミングは、基本的に委任者から請求を受けたときです。果実が発生してから、直ちに引き渡すことが義務付けられているわけではありません。なお報告義務と受取者の引き渡しは、まとめて付随的義務と呼びます。
委任契約における報酬・費用
先述のとおり、委任契約は原則として無償で成立するものです。特約がなければ有償契約にはなりません。
一方で民法では、委任契約の報酬についても規定されています。ここでは有償契約となったとき、報酬や費用がどのように取り決められているかをまとめましょう。
報酬は履行の割合に応じる
事務処理が完遂すれば問題ありませんが、委任者に帰責事由がなく中途終了する可能性もあります。たとえば自然災害が発生し、委任事務を進めることが難しくなったケースです。
この場合においては、すでに履行した割合に基づいて報酬が発生します。支払い方法については、特約がない限りは後払いが原則です。前払請求ができる場合もありますが、詳しい内容は後述します。
報酬の支払いと同時履行
報酬の支払いは、委任事務が完了したあとに発生します。基本的に委任事務と報酬の支払いは、同時履行の関係に立たないと覚えてください。そのため報酬が支払われてないからといって、委任事務を拒否することは認められません。
一方で委任事務は、相手企業の売上促進や新規顧客数獲得などの「成果」を上げるのを目標にする場合もあります(成果報酬型)。この契約においては、成果の引き渡しと報酬が同時履行の関係に立ちます。
費用の前払請求と償還
委任契約は後払いが原則ですが、特約によっては前払いでの請求もできます。民法は基本的に自由な契約ができ、後払いの原則もあくまで任意規定にすぎないためです。受任者が請求したときは、委任者は前もって費用を支払わないといけません。
受任者が先に支払いを済ませたら、後から委任者に対して費用や利息の返還請求も可能です。同様に受任者が債務や損害を負担した場合、委任者にはこれらの弁済も求められます。
委任契約の解除
委任契約は、委任者側・受任者側双方ともいつでも解除できます。ただし委任の解除において、以下の事情があるときは解除した側が損害賠償を支払わないといけません。
- 相手方にとって不利な時期にあたる
- 委任者が受任者の利益をも目的とする委任の解除
とはいえ損害賠償が発生するだけで、解除そのものを否定されるわけではありません。この辺りは行政書士試験でも狙われる可能性があります。
またやむを得ない事由があったときは、例外的に賠償の義務もなくなります。解除の規定は賃貸借契約の規定が準用されることから、将来に向かってのみ効力が生じます。
委任契約の終了事由
お互いが解除しなくとも、委任契約はとある事由が発生すると終了します。表でまとめてみたので、終了事由についてしっかりと整理してください。
| 委任者 | 受任者 | |
|---|---|---|
| 死亡 | ◯ | ◯ |
| 破産手続開始の決定 | ◯ | ◯ |
| 後見開始の審判 | ✕ | ◯ |
表でもわかるとおり、委任者が後見開始の審判を受けても委任契約は終了しません。なぜなら委任事務を引き受けるのは受任者であるため、処理には何の影響がないからです。
委任の終了事由を対抗するには、次の要件が必要とされています。
- 相手方への通知
- 相手が事情を知っている
また取り決めによっては、委任者が死亡しても終了事由にしないことも可能です。
委任契約は基礎を押さえよう
委任契約は勉強が追いつかない人もいるかもしれませんが、内容はそれほど難しくありません。基礎的な部分さえ押さえていれば、試験でも問題なく対応できるはずです。
ただし勉強が追いついていないと、いざ出題されたときに自信を持って答えられなくなります。得点源にもできる分野であるため、頻出度がそれほど高くないとはいえ、定期的に見直すとよいでしょう。