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総裁選に国民投票はない?フルスペックの仕組みもわかりやすく解説

2025年9月、石破首相が内閣総理大臣を辞任するとニュースになりました。このニュースを受けて、総裁選(自由民主党総裁選挙)が開かれる予定です。

しかし総裁選では、衆議院選挙や参議院選挙のように国民全員が投票できる機会はありません。なぜ国民投票がないのか、疑問に感じる人もいるでしょう。

この記事では、総裁選と国民投票の関係についてわかりやすく解説します。首班指名選挙との違い、内閣総理大臣の決め方も一緒に押さえましょう。

 

総裁選には国民投票がない?

結論から述べると、総裁選は国民全員には投票の機会が与えられません。そもそも総裁選は、自民党のリーダーを決めるための選挙です。したがって自民党員でない一般国民が、この選挙に参加することは望ましくないでしょう。

しかし総裁選では、国民の投票の機会が完全に閉ざされているわけではありません。次の条件をクリアすれば、一般国民にも投票への参加が認められます。

  • 直近2年の党費を納めている党員
  • 直近2年の会費を納めている自由国民会議会員

党費(年間)は1人4,000円、その家族であれば2,000円です(特別党員は2万円以上)*1。一方で自由国民会議会員の場合は、会費(年間)が1口1万円となっています*2

どうしても総裁選に参加したい方は、自民党員や自由国民会議会員への加入を検討するとよいでしょう。

 

総裁選と首班指名選挙の違い

ここで誤解を生みやすい要素である、総裁選と首班指名選挙の違いを見ていきましょう。総裁選は、直接内閣総理大臣を決める選挙ではありません。先程も述べたとおり、決めているのはあくまで自民党のリーダーです。

一方で首班指名選挙は、内閣総理大臣を指名するための選挙となります。国会議員が主に投票するため、首班指名選挙も国民は投票できません。つまり総裁選で勝てたとしても、直接内閣総理大臣となる権利が与えられるわけではないのです。

しかしこれまでの自民党は、基本的に過半数以上の議席を勝ち取っていました。加えて総裁選で選ばれた人物に、自民党議員は全員が投票すると決めています。そのため結果的に総裁選で当選した人物が、内閣総理大臣になるケースがほとんどだったわけです。

 

総裁になる人の要件

自民党の総裁選で候補者となるには、さまざまな条件を満たす必要があります。ここでは、自民党のリーダーとなるための条件について見ていきましょう。

総裁の任期

自民党総裁の任期は、3年と定められています*3。ただし3期までであれば、同じ人が総裁になることは可能です。

石破茂氏の場合、2024年9月に第28代総裁として選ばれました。したがって本来であれば、3年後の2027年9月までが任期となるはずでした。しかし2025年9月に総裁を突然辞任することが決まり、今後臨時総裁選が実施される見込みです。

候補者となる条件

自民党総裁は、誰もが候補者になれるわけではありません。まずは前提として、国会議員に選ばれている必要があります。総裁になった人物は、基本的に内閣総理大臣を兼ねるケースが多いためです。

また候補者となるには、自民党に所属している国会議員20名から推薦されなければなりません。もし候補者が1人しかいない場合は、その方が自動的に総裁となります。

総総分離はできるのか

今回、石破茂氏は自民党総裁を辞任するだけで、総理大臣は辞任しないのではという声も少なからずあります。総裁総理分離(総総分離)とも呼ばれていますが、現代の政治でこういった方法は認められているのでしょうか。

日本の法律では、特に総総分離を否定する条文は存在しません。したがって法律の観点で見れば、自民党総裁以外の方が総理大臣になることも認められています。とはいえ自民党総裁に関するルールは、法律の範囲を超えない限りは自民党が決めるものです。

これまでの歴史を見てみると、自民党総裁以外の方が総理大臣になったケースは数えるくらいしかありません。実務的に見ると、総総分離はほぼ実現しないといえます。

あくまで私見ですが、自民党が前例を壊してまで、石破茂氏に総総分離を認めることは極めて考えにくいでしょう。以上から石破茂氏が自民党総裁を辞任すれば、そのまま総理大臣を辞めるという流れに行き着くと考えられます。

 

総裁選の種類

総裁選の種類について簡潔にまとめている図

総裁選には、大きく分けて「フルスペック」「簡略型」の2種類が存在します。2025年9月9日現在では、フルスペックで進めていくことが報じられました。これらの特徴に加え、どのような場合に選択されるかを詳しく見ていきましょう。

フルスペック=党員投票をする

フルスペックとは、国会議員票と党員票の合計で総裁を決める方法です。国会議員票は、文字通り自民党の国会議員が投票します。

一方で党員票は、国会議員以外の党員が投じた票のことです。したがって党費を払って党員となった一般人の票は、党員投票に分類されます。

フルスペックのメリットは、比較的国民人気の高い人物が選ばれやすい点です。一般国民に近い党員票が採用される点から、国民全体の意思が反映される傾向にあります。なお2024年の総裁選においても、フルスペックが採用されています。

簡略型=地方票を採用する

簡略型とは、国会議員票と地方票の合計で総裁を決める方法です。地方票は、全国の都道府県支部連合会が投じた票を指します。

一般的に都道府県支部連合会には、それぞれ3票ずつ投票権が与えられます。つまり47都道府県×3票で、141票が地方票となるわけです。

簡略型のメリットとして、スピード感をもって総裁選に臨める点が挙げられます。今回のように突然総裁が辞任したケースでは、簡略型が選ばれる例もあります。ただし2025年の総裁選に関しては、フルスペックの方向で話が進みました。

 

 

総裁選の流れ

総裁選は、以下の流れで総裁を決めます。

  1. 候補者を固める
  2. 国会議員・党員が投票する
  3. 決選投票に進む(条件つき)

なおここでは、フルスペックの流れについて説明しています。それぞれのプロセスを簡潔にまとめていきましょう。

候補者を固める

まずは誰が候補者になるか、20人以上の推薦人によって決めなければなりません。2024年の総裁選では、石破氏や高市氏をはじめ9人が候補者となりました。

候補者が決まったら、街頭演説や政策討論会が実施されます。テレビやインターネットでも、候補者たちによって討論する番組を2024年に見た方もいるでしょう。具体的なスケジュールは未定であるものの、約2週間はアピールできる機会があります。

国会議員・党員が投票する

国会議員の投票と党員の投票では、スケジュールが少し異なります。国会議員の投票は、開票と同日に1日で済ませるのが一般的です。

一方で党員投票の場合は、総裁選が告示されたあとに投票期限が設けられています。2024年の総裁選では、開票日の前日が投票期限となっていました。

なお党員投票では、「ドント式」が採用されています。ドント式とは、各候補者の得票数を「1→2→3…」と順番に割り算し、数の大きいほうから票を分配する方式です。

  候補者A 候補者B 候補者C
÷1 1,500(1) 1200(2) 900(3)
÷2 750(4) 600(5) 450(7)
÷3 500(6) 400(8) 300
÷4 375(9) 300 225
÷5 300 240 180
÷6 250 200 150

ドント式は、国政選挙でも使われています。衆議院選挙や参議院選挙の仕組みについても、深く知りたい方は以下の記事を参照してください。

決選投票に進む(条件つき)

候補者の数が多ければ、全員が過半数の票を得られないといったケースもあります。この場合は、上位2人まで絞ったうえで決選投票が実施されます。

2024年の総裁選でも、国会議員と党員の投票では決まらず、石破茂氏と高市早苗氏の決戦投票となりました。したがって決選投票は、必ずしも実施されるわけではありません。

決選投票では、国会議員と都道府県連の投票で決まります。ただし都道府県連の票は、各都道府県の党員投票で自動的にどちらかへ割り振られるのが特徴です。

2024年は、国会議員と党員投票の段階では高市早苗氏がリードしていました。しかし決選投票では、石破茂氏が逆転して勝利する展開となりました。

 

内閣総理大臣を直接選べない理由

日本は議院内閣制を採用しているため、国民が内閣総理大臣を直接選ぶことはできません。ここでは議院内閣制と大統領制の違いを押さえつつ、なぜ直接選べないのかを解説していきます。

議院内閣制の特徴

議院内閣制とは国会が内閣を信任し、内閣が国会に対して責任を負う制度です。皆さんも中学や高校の公民を勉強する中で、国会と内閣の違いがわからずに悩んだことがあるでしょう。

国会と内閣が完全に分離されておらず、密接な関係となっている点が原因として考えられます。特に密接な関係にあることを示しているのが、内閣総理大臣です。

内閣総理大臣は内閣のトップでありながらも、国会議員から選ばないといけません。このように役職によっては、国会と内閣が重複するケースもあるわけです。

三権分立は、3つの権力が独立していると考えられがちですが、お互いが干渉できるよう密接な関係にあると押さえてください。

議院内閣制と首班指名選挙

続いて、議院内閣制と首班指名選挙の関係について解説します。首班指名選挙の目的は、文字通り次の内閣総理大臣を決めることです。

日本国憲法では、内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名すると規定されています。以上から首班指名選挙も、国会と内閣が密接につながっているのを示しています。

国民全員が関与する選挙は、あくまで国会議員を決める制度です。一方で選挙によって選ばれた人物は国会議員となり、国民の代表者として内閣総理大臣を選びます。つまり内閣総理大臣は、国民の間接選挙によって選ばれているわけです。

大統領制との違い

アメリカでは、国民の投票によって直接大統領を選んでいます。大統領と内閣総理大臣の違いとして、まず選出方法が大きく異なる点が挙げられるでしょう。

大統領は内閣総理大臣と同じく国のリーダーとなるケースが多いものの、そもそもの立ち位置は「国家の元首」です。つまり大統領は、国民に対して直接責任を負わないといけません(国ごとに考え方の違いはある)。

一方で議院内閣制の下で選ばれる内閣総理大臣は、内閣と併せて国会に対して責任を負います。したがって国会議員によって選ばれるほうが、国の構造的にも筋が通っているわけです。

 

総裁選と国民投票のまとめ

総裁選は国民全員が投票できるわけではないものの、自民党員になればチャンスが与えられます。自民党のリーダーを決めてみたいのであれば、党費や会費を払ったうえで党員になることも検討してみるとよいでしょう。

一方で総裁選において、直接的に内閣総理大臣を決めるわけではありません。内閣総理大臣を決める選挙は、首班指名選挙という方法が採られます。総裁選と首班指名選挙を混同しないように注意してください。

日本では、国民が直接内閣総理大臣を選ぶことはできません。とはいえ内閣総理大臣は、国会議員から選ぶ仕組みとなっています。

したがって国会議員を決める選挙は、内閣総理大臣を決めるうえでも重要な要素となります。より良い日本を作るためにも、今のうちから選挙に興味を持ってみましょう。

*1:自民党公式HP:入党 | 参加しよう | 自由民主党

*2:自由国民会議公式HP:自由国民会議

*3:総裁公選の仕組み 2024年版https://storage2.jimin.jp/sousai24/pdf/election-method.pdf