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請負契約とは?所有権の帰属と下請契約の関係について解説

公務員試験や宅建試験、行政書士試験などさまざまな試験で民法の典型契約が出題されます。売買契約や貸借契約が中心に出題されますが、ほかにも請負契約が存在します。

請負契約も重要な契約のひとつですが、後半に規定されているので勉強が間に合わない人も少なくないでしょう。しかしこれらのルールは簡単であるので、基本的な内容は押さえたほうが賢明です。

この記事では、請負契約の基本的なルールと所有権の帰属や下請契約の仕組みを解説します。試験勉強の参考にしてください。

 

請負契約とは

請負契約の仕組みについて簡潔に説明している図

請負契約とは、当事者の一方が仕事の完成を約束し、相手がその仕事に対して報酬を支払う契約です。

例えばAさんが建物の工事をBさんに依頼し、Bさんが約束通りに工事を完了したあとにAさんが報酬を支払うような契約が該当します。ここでは請負契約の基礎的な内容について解説しましょう。

法的性質

請負契約の法的性質は次のとおりです。

  • 双務契約
  • 諾成契約
  • 不要式契約
  • 有償契約

まず請負契約は、請負人と注文者の双方の契約において成り立ちます。お互いの意思表示で成立する諾成契約であり、必ずしも書面で契約を結ぶ必要はありません。

また報酬を支払うのが要件であるため、有償契約に分類されます。

報酬の支払い

報酬の支払いは、目的物の引き渡しと同時履行です。ただし仕事の完成については、同時履行の関係が成立するわけではありません。

例えば先程の建物工事の契約においても、請負人側は先に工事に着手しなければなりません。建物の工事が完了し、引き渡しの段階になってから初めて同時履行が成立します。

また工事が完了する前に、請負契約が解除されることもあるでしょう。当該ケースにおいても仕事の一部に利益が生じるのであれば、その割合に応じて支払いの請求が可能です。

契約の解除

請負人が仕事を完了するまで、注文者は損害賠償すればいつでも契約の解除が可能です

ただし仕事がすでに完了し、目的物の引き渡しの段階に移ったら、仮に目的物を渡されていなくとも契約の解除はできません。

一部が完成したときは、その残額分についての契約解除が認められます。損害賠償のタイミングは事前である必要はなく、判例上はお互いの意思表示で解除が成立すると考えられています。

ほかにも注文者の破産手続きが開始した場合、請負人側からの解除が可能です。もし仕事が完成していたら、その分の報酬は破産財団の配当に加入できます。

完成後の目的物の不備

請負人が仕事を完了したと思っても、いざ目的物を見てみたら工事が中途半端になっているケースもあるでしょう。原則であれば、債務不履行として次の請求ができます。

  • 履行の追完の請求
  • 報酬減額の請求
  • 損害賠償の請求
  • 契約の解除

ただし注文者は、契約内容に適合しないと知ったときから1年間以内に請負人へ通知しないといけません。

これらの請求をするには、通知におけるタイムリミットがあることを押さえましょう。なお請負人が不適合について悪意・重過失があれば、このルールは適用されません。

同じく不適合の理由が、注文者の提供した材料にあるときも当該ルールが適用されない条件のひとつです。しかし請負人が材料または指図の不適法を知っていたのに注文者へ告げなかったら、注文者は上記の請求ができます。

 

 

所有権の帰属

建物を工事するには、材料を用意しなければなりません。この材料を注文者と請負人のどちらが用意するかで、所有権の帰属の扱い方も異なります。

注文者が材料を提供

注文者が材料を提供した場合、完成後の建物の所有者は注文者側です。最高裁判例に基づいて明確になりましたが、現在でも変わらず当該考えが適用されています。

請負人が材料を提供

請負人が材料を提供したとき、誰が所有権を取得するかは争いがあります。

最高裁判例では「請負人帰属」の立場を採っており、仕事完成時点では請負人が所有権を持つのが基本です。両者の間で引き渡しがなされてから、初めて注文者に所有権が帰属されると考えられています。

ただし契約は当事者間で自由に変更できるので、特約があればこの限りではありません。

 

請負契約と下請契約

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条件に支障が出なければ、請負人はその仕事をさらに別の業者へ請け負わすことができます。下請けに関するルールも、公務員試験で問われやすいのでしっかりと整理してください。

元請負人・下請負人の関係

仕事を別の業者等に請け負わせた場合、請け負わせた側は元請負人、請け負った側は下請負人と呼びます。

元請負人にとって、下請負人はあくまで履行補助者です。そのため下請負人に故意や過失が見られたら、元請負人側が注文者に対して責任を負わないといけません。

契約の内容によっては、下請け自体を禁止する特約が結ばれることもあります。下請禁止特約は絶対的な効力を持つわけではないので、元請負人が意図的に破っても無効にはなりませんが、注文者に損害賠償責任を負うと判旨されています。

注文者・下請負人の関係

請負契約は、元々注文者と元請負人の間で結ばれるものです。そのため注文者と下請負人の間では、直接的な権利義務関係は発生しません

下請負人側も当該請負契約では、特段の事情がなければ元請負人と異なる権利関係を主張できないとされています。原則として注文者と元請負人の取り決めは、下請負人にも適用されるためです。

下請負人と所有権の帰属

A(注文者)とB(元請負人)の間で、工事が中途で終了したときはAに所有権が帰属すると契約を結んだとしましょう。

仮にBがC(下請負人)に仕事の全部を請け負わせ、Cが材料を提供しても所有権は当初の契約どおりAに帰属します。

上記でも説明したとおり、請負契約は注文者と元請負人での取り決めに基づいて進められます。Cに所有権を帰属させたいのであれば、AとCの間で別途特約を結ばないといけません。

 

 

目的物消滅時の帰責事由

請負人の仕事中、あるいは仕事の終了後に目的物が何らかの事情で消滅する恐れもあります。仮に目的物が消滅したとしても、履行期に間に合うのであれば請負人は変わらず仕事を完成させる必要があります。

ただし履行期までに完成が間に合わない、あるいは仕事完成後に目的物が消滅したら債務の履行が果たされなくなります。この状況をどう対処すればよいかについて、ケースごとに説明しましょう。

注文者に帰責事由があるとき

まずは注文者側の故意・過失により、目的物を失ったケースについて見ていきます。

一方で履行期までの完了が難しい場合、請負人は注文者に対して報酬を請求できます。仕事完成後、目的物を引き渡せなくなったときも同様です。ただし請負人の仕事が終了したことで、何か利益を得た場合は注文者に償還しなければなりません。

請負人に帰責事由があるとき

請負人側の故意・過失で目的物が消滅し、履行期までに完成が間に合わなかったら債務不履行責任を負います。こちらも仕事完成前と完成後での扱いは同じです。

両者に帰責事由がないとき

一番ややこしいのが、目的物が自然災害などの理由により消滅した場合です。注文者にも請負人にも責任はないので、どのように対処すればよいかは少し混乱してしまうでしょう。

仕事完成前・完成後いずれにおいても、危険を負担するのは請負人側です。したがって必死に働いて目的物を完成させても、請負人は注文者に対して報酬を請求できません。

ただし請負人に帰責事由があるわけではないので、注文者からの損害賠償もできないと考えられています。危険負担については、以下の記事でも簡潔に説明しているのでチェックしてみてください。

 

請負契約の基礎を押さえよう

今回の記事では、典型契約のひとつである請負契約について紹介しました。そこまで難しい内容が問われるわけではありませんが、勉強が追いつかないと困っている人もいるでしょう。

公務員試験では、全科目の全ての範囲をじっくりと勉強することはできません。基礎的な内容をざっと確認し、広く浅く捉える必要があります。

請負契約も、とりあえず基礎的な内容を中心に勉強すればOKです。問われるかどうか分からない分野に絞るよりも、総則や物権など頻出度の高い分野に力を入れてください。