行政書士試験や公務員試験の民法で、不当利得返還請求が問題に絡むケースはよく見られます。しかし民法の後半部分に規定されている内容であるため、なかなか勉強が追いつかない方もいるでしょう。
この記事では、行政書士試験に一発合格した筆者が、不当利得返還請求の要件や返還義務についてわかりやすく紹介します。行政書士試験にチャレンジする方は、ぜひ最後まで記事を読んでみてください。
不当利得返還請求とは

不当利得返還請求とは、法律上権利がないにもかかわらず金銭等を取得した相手に対し、返還するように求める権利です。民法では第703条以降に定められています*1。
たとえばAが商品の代金である1万円を要求したところ、Bは間違えて2万円を渡しました。1万円分を多く受け取っている状態であるため、本来はきちんと返さないといけません。
もしAが「1万円分儲けた」とポケットに隠した場合は、Bから不当利得返還請求を行使される可能性があります。もちろんこうしたお金を着服する行為は、犯罪であるので絶対にしないでください。
不当利得返還請求の要件
不当利得返還請求が認められるには、次の要件を満たす必要があります。
- 受益者が財産上の利益を受けた
- 他方に財産上の損失を与えた
- 利益と損失に因果関係がある
- 法律上の原因がない
すべての要件が成立しないと、たとえ訴えを起こしても不当利得は認められません。それぞれの意味について詳しく解説します。
受益者が財産上の利益を受けた
不当利得返還請求の要件の一つは、受益者が財産上の利益を受けていることです。先程の例をもう一度挙げると、AがBに1万円を要求したのに2万円渡されたら、Aは1万円分の利益を得たといえます。
一方で「利益」には、本来生じる予定だった金銭等の支払いから免れたケースも該当します。相続において、相続人の一人が遺産を使い込んだとき、本来ほかの相続人に分配する分が不当利得となる可能性があります。
とはいえ「利益を受ける」はあくまで条件の一つであるため、ほかの要件を満たしていないと不当利得返還請求は認められません。
他方に財産上の損失を与えた
不当利得返還請求は、他方に財産上の損失を与えたことも、要件の一つとされています。
AがBから1万円をもらうはずが2万円を渡された場合、Bは1万円を多く支払っている状態です。つまり1万円分の損失が生じているといえます。

どちらか一方にのみ利益が出ていても、損失がなければ不当利得返還請求はできないよ!
利益と損失に因果関係がある
不当利得返還請求が認められるには、利益と損失に因果関係が必要です。とはいえ直接的な因果関係しか認められないわけではなく、社会通念上の因果関係があればよいと考えられています(最判昭和49年9月26日)。
たとえばAがBに詐欺を持ちかけ、10万円を騙し取りました。そのお金で借金の返済を充てたとき、不当利得返還請求が認められる可能性も高まります。
法律上の原因がない
当事者間で財産が動くとき、正当な理由がない状態のことを「法律上の原因がない」といいます。たとえばAがBのお金を騙し取り、甲への借金返済に充てました。
一方で甲はAから返されたお金が、Bを騙して集めたお金だと知っていました(悪意または重過失)。この場合はAから甲への返済は「法律上の原因がない」といえ、不当利得が成立します。
不当利得返還請求と返還義務
不法利得返還請求が認められたとき、受益者は利益を返還しなければなりません。しかし受益者が不当利得につき、善意か悪意かで返還する範囲が異なります。
善意の受益者のケース
善意の受益者の場合、利益の存する限度において返還する必要があります。利益の存する限度は、別名で「現存利益」とも呼びます。
たとえばAはBから1万円の利益を受けていたものの、不当利得であることに気づいていませんでした。加えてAは利益を得た1万円につき、ギャンブルで溶かしてしまいました。この部分は現存利益がないため、受益者に返還義務はありません。
悪意の受益者のケース
悪意の受益者であれば、受けた利益全額だけではなく利息も返還しないといけません。不当利得によって損害が発生したときは、賠償責任も負う必要があります。
たとえばAがBから1万円の利益を受けており、不当利得であることを知っていたときは「1万円+利息」を返還します。悪意の人間を庇う必要はないためです。
不当利得返還請求のまとめ
不当利得返還請求も、行政書士試験では狙われやすいテーマの一つです。そこまで難しい内容ではありませんが、勉強が追いつかずに苦戦するケースは考えられます。
不当利得返還請求権を勉強する際には、まず以下の要件について自分なりに整理しておきましょう。
- 受益者が財産上の利益を受けた
- 他方に財産上の損失を与えた
- 利益と損失に因果関係がある
- 法律上の原因がない
具体例を自分なりに考えておき、イメージしながら勉強すると理解しやすくなります。民法は覚える内容が多くて大変ですが、しっかりと全体に目を通してください。
*1:民法第703条:e-Gov 法令検索