どーも、やまとのです。
今回から公務員試験の民法解説は「物権」の分野に入ります。
ここで紹介する内容は、物権の基本的な部分です。
聞き馴染みがないであろう「物権的請求権」をわかりやすくまとめていきます!
要件を押さえ、一物一権主義とは何かも見ていきましょう。
物権的請求権とは?
「物権的請求権って何だろう?」と思った方はこちらの記事を確認しましょう!
我々の生活では、「所有権」が基本となります。
皆さんも車を所有している方や奮発してマイホームを購入した方もいるでしょう。
しかし、所有権が誰かに奪われる危険もあります。
それを守るために、物権的請求権を行使できるのです。
当該権利の種類は大きく分けて3つ存在します。
それぞれの種類を解説していきましょう。
返還請求権と要件
3つある物権的請求権の中でも、最も基本的な種類として挙げられます。
名前から想像できるかもしれませんが、返還請求権は所有物を奪われた際に「返してくれ」と要求する権利です。
請求者は限られる
この権利を行使できる人は以下の通りとなります。
- 所有権者
- 地上権者
- 不動産の質権者及び賃借人
公務員試験レベルでは、所有権者と地上権者をとりあえず押さえましょう。
所有権を持っている方は当然のこと、所有物を使用できる方も認められています。
例えば、「他人の土地で農作物を育てている人」ですね。
育った野菜が奪われた場合は、土地の所有権者に加え、利用者も併せて当該物権的請求権を行使できます。
しかし、返還請求権は誰でも認められているわけではありません。
行使できない人はこちらです。
- 留置権者
- 先取特権者
- 抵当権者
細かい内容は後々別の記事に書いていきますが、1つだけ例を示しますね。
抵当権の例ですが、「Aさん所有の車に自動車会社がローンを設定した場合、車が誰かに盗まれても自動車会社は返還請求はできない」ので注意しましょう。
要件は勝手に占領されたとき
返還請求権ができる要件は、「権利がないのに土地や建物などを占領している人がいる」場合です。
直接占有している人のみならず、間接的に占有する人物にも請求できます。
例えば、勝手に家族や知人を住ませている場合です。
こうした事実があり、初めて返還請求権が使えます。
妨害排除請求権
3つある物権的請求権の2つ目が、妨害排除請求権です。
端的に言えば、物権全般を妨害している者を排除できる権利となります。
留置権者らも請求可能
例えば、「所有している土地で誰かが勝手に建物を建てようとしていた」場合、所有者らはこれを止めることができます。
返還請求権とは異なり、次の方々も行使できる物権的請求権です。
- 留置権者
- 先取特権者
- 抵当権者
つまり、土地にローンを設定した抵当権者でも、見知らぬ人が建物を建てようとしていたら権利を使って止められます。
要件は妨害されそうなとき
妨害排除請求権の要件は、現に妨害されそうな状態で支配されているときです。
例えば、所有している土地を貸したところ、勝手に建物を建てられたとしましょう。
このときは、現に建物を所有している人に対して建物を撤去するよう請求しなければなりません。
例えば、登記もせずに第三者へ売り渡し、今は管理すらもしていない人に請求しても無効です。このあたりの要件を押さえておくと、いざトラブルが生じたときにも役立つかもしれません。
妨害予防請求権
物権的請求権の種類の3つ目は、妨害予防請求権です。
これは、妨害される危険が生じた場合にあらかじめ対策が打てる権利を指します。
例えば、隣の家の屋根がボロボロで自分の土地に崩れ落ちてきそうな場合は、事前に修繕して被害を防ぐよう請求できるのです。
請求者は妨害排除請求権と同じ
妨害予防請求権も請求権者は変わりありません。
以下の人たちも問題なく請求可能です。
- 留置権者
- 先取特権者
- 抵当権者
このような特徴はしっかりと押さえましょう。
要件は妨害のおそれがあるとき
妨害予防請求権の要件は、妨害のおそれがあるときです。
明らかに自分の土地に被害がありそうな場合は、危険を取り除くよう請求できます。
相手は、直接または間接的に原因となりそうな事情を支配している人です。
妨害排除請求権と内容的にはほとんど変わらないと覚えてください。
主観的要件
3つの種類とともに紹介した要件は、あくまで客観的な事実に基づいたものです。
その事実以外にも、当事者(相手方)の主観によって請求を起こせるか否かの考え方があります。
こうした考え方が主観的要件です。
物権的請求権の場合は、以下の要件を考慮しません。
- 相手方の故意や過失
- 責任能力の有無
つまり、相手が事情を知っていてわざと土地を妨害していても排除請求ができます。
責任能力がなくとも、返還請求も可能です。
物権は、あくまで動産や不動産のような「モノ」を円滑に支配する権利を指します。
そのため、客観的に妨害排除・返還すべき状況があれば所有者を守らなければなりません。
一物一権主義
ここで、物権の基本的な内容をまとめましょう。
まず、物権は「法定主義」を採用しているため、法律によらなければ権利を主張できません。
ある程度は自由な行為が認められている、債権との大きな相違点です。
さらに、原則的には1個のモノに対して、1つの物権しか適用できないとされています。
これが、一物一権主義です。
一物一権主義の具体例
例を挙げれば、運転している車の所有者は2人や3人になることはありません。
必ず名義人を定め、いわゆる代表者が所有者に認定されます。
しかし、一物一権主義といっても、1つの家を3人で住んでいるパターンもあるでしょう。
共有といわれるスタイルですが、当該方法は一物一権主義に反していません。
なぜなら、1つの物に対する権利も各共有者で山分けされる状態だからです。
全員が物の全てにかかる権利を使えない共有は、所有者が何人もいる状態には当てはまりません。
他にも、抵当権では以下の区分があります。
- 第一順位抵当権者
- 第二順位抵当権者
こちらも、一物一権主義に反するとはいえないため注意しましょう。
当該ルールは、第一順位抵当権者が何らかの形で抵当権を失った場合に、第二順位抵当権者が繰り上がりで権利者となる制度です。
つまり、抵当権の設定自体は何個もできるものの、同時期に2人の抵当権者は現れないように作られています。
一物一権主義が生まれた理由
では、なぜ一物一権主義という考え方が中心にあるのでしょうか。
その理由は、物権の排他主義にあります。
1つの物に何人も権利を持っていると、客観的に誰を優先すべきか分からなくなってしまいます。
物権にかかる手続きを単純化するためにも、一物一権主義が採用されているのです。
物権的請求権のおさらい
今回は、下記の物権の基本的な考え方をまとめていきました。
- 物権的請求権の種類
- 一物一権主義
物権的請求権は大きく分けて3つの種類があります。
- 返還請求権
- 妨害排除請求権
- 妨害予防請求権
それぞれの制度と要件をしっかりとおさらいしましょう。
加えて、一物一権主義もこれから物権を学ぶ上で重要な部分です。
物権の内容は非常に難しいため、このような基本的な部分からマスターしてください。