行政書士試験の民法では、不法原因給付も範囲に入っています。しかし民法の後半に規定されているため、勉強が追いついていない方も一定数いるでしょう。
この記事では、不法原因給付について具体例も併せてわかりやすく解説します。行政書士試験を受験される方は、ぜひ記事を参考にしてください。
不法原因給付とは
不法原因給付とは、不法行為により給付をした者に対し、返還の請求を禁止することです。定義だけだとわかりにくいので、具体例も交えて解説します。
たとえばAが売人から麻薬を購入し、多額のお金を支払っていました。この場合、Aは麻薬の売買が違法であることを理由に、返金を求めることはできません。
そもそも法律の観点でいえば、麻薬を購入しているAも大麻取締法違反にあたります。民法においても、不法行為している人間をわざわざ守る義務はないわけです。
不法原因給付の要件

不法原因給付といえるには、次の要件を満たしている必要があります。
- 不法な原因が存在している
- 給付した事実が存在している
- 受益者と給付者双方に不法な原因がある
各要件の内容がわかるように、詳しい意味をまとめていきましょう。
不法な原因が存在している
不法原因給付と認められるには、不法な原因が存在していないといけません。不法な原因には、刑法上で違法とされているものだけではなく、倫理的にNGとされる行為も含まれます。つまり不倫相手に財産を渡す行為も、不法原因給付として挙げられます。
しかし単に給付が強行法規に反していただけでは、不法原因給付にはあたりません。判例では、その給付が社会に要求される倫理・道徳を無視していることも要件とされています。
給付した事実が存在している
不法原因給付が成立するには、給付した事実が存在していなければなりません。ここでいう給付とは、基本的に引き渡しで成立すると考えられています。例外的に登記のある建物については、所有権移転登記が必要です。
一方で実際に給付した事実がなければ、不法原因給付は成立しません。そもそも不法行為を前提とする以上、不法原因給付は避けないといけません。こうした行為を防ぐべく、自発的に不法な給付を止めるように促しているわけです。
受益者と給付者双方に不法な原因がある
不法原因給付は、受益者と給付者の双方に不法な原因があって成立します。受益者のみに不法な原因が存在している場合、給付した物を取り返すことが可能です。
たとえばAがお金を出し、Bの密売している麻薬を購入していました。このケースでは、AもBも麻薬の売買という悪事に手を染めています。そのため不法原因給付が成立し、Bの支払ったお金はAから取り返せません。
一方でAがBから頼まれてお金を渡し、Bは違法ギャンブルに使いました。AがBに協力し、間接的に違法ギャンブルで遊んでいたという事実がなければ、基本的にAはお金を取り返せます。
たとえBが違法ギャンブルに使うといった事実をAが知っていても、Bの行為と比べて悪質でないときは、不法原因給付を認めないのが判例の見解です(最判昭29.8.31)。民法第708条は、あくまで公序良俗を守るべく、不法なお金を取り返すのを重視しています。
不法原因給付とパパ活
不法原因給付の問題になりやすい事件の一つに、パパ活が挙げられます。パパ活は、若い女性が年上の男性と知り合い、デートの見返りとして金銭をもらう行為のことです。
事件に発展するケースが多く、メディアも警鐘を鳴らしているものの、パパ活自体は犯罪ではありません。そのため男性が女性に金銭を渡した際、あとから返金を求めるといった事案がトラブルに発展しやすくなります。
不法原因給付が成立するケース
パパ活で不法原因給付が成立するのは、一般的に性行為などが見られたときです。性行為をし、その単価として金銭を受け取る行為は「売春行為」に該当します。
確かに売春そのものは売春防止法にも罰則規定がないため、逮捕はされません。しかし民法では、公序良俗に反する行為とみなされます。
したがって性行為の単価として金銭を受け取ったときは、双方に不法な原因があるため不法原因給付が成立します。以上から、受け取った金銭の返還義務が生じない可能性も高いでしょう。
不法原因給付が成立しないケース
単に男性から金銭を渡された、女性側が金銭をだまし取ったケースでは不法原因給付は成立しません。しかし返還義務が生じるかは、状況によって異なります。
男性が贈与目的で金銭を渡したとき、民法上は贈与契約が成立します。民法第550条によると、履行の終わった贈与については一方的に解除できません。したがって贈与目的で金銭等が引き渡されたのであれば、返還義務は生じないと考えるのが一般的です。
一方で女性側が金銭をだまし取ったときは、男性にきちんと返さないといけません。「お金を渡したら一緒に寝泊まりする」と嘘をつき、金銭を受け取ったあとにその場からいなくなるケースが該当します。
男性にも落ち度はあるものの、単に騙されただけでは不法な原因が存在していません。だまし取ったお金である以上、きちんと返済に応じる必要があります。
不法原因給付のまとめ
行政書士試験のテキストでは、不法原因給付についてあまり詳しく掲載されていません。ややマイナーな分野ではあるものの、狙われる可能性はあるので押さえたほうが賢明です。
ただし法律の書き方が複雑で、制度の内容をうまく理解できない方もいるでしょう。そのため勉強するときは、パパ活などの具体例をイメージできるようにしてください。
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