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同時履行の抗弁権とは?条文や要件についてわかりやすく説明

民法の勉強を進めるにあたり、無視できない用語のひとつが同時履行の抗弁権です。こちらのルールについては、民法第533条にしっかりと明記されています。

この記事では、同時履行の抗弁権の条文や要件を解説します。記事の内容を読みつつ、公務員試験対策の参考にしてください。

 

 

同時履行の抗弁権とは

同時履行の抗弁権をイメージしやすいように示した図

同時履行の抗弁権とは、相手が債務を履行するまでこちら側も弁済を留保できる権利のことです。具体例としてコンビニでの買い物を挙げてみましょう。

もし皆さんが、コンビニのレジの横にあるホットスナックから肉まんを注文したとします。しかし店員がいつまで経っても、肉まんを取り出そうとしません。

売買契約は、金銭と商品がお互いに交換されてはじめて成立します。そのため店員が肉まんを取り出さないのであれば、客側もお金を払う必要はありません。

こうした契約時の関係性を同時履行の抗弁権と呼びます。具体例も身近であるため、イメージは比較的しやすいでしょう。

 

同時履行の抗弁権の要件

同時履行の抗弁権を主張するには、いくつかの要件を満たす必要があります。まずは条文について見ていきながら、具体的な要件を説明します。試験対策の重要な部分になるので、しっかりと内容を理解してください。

同時履行の抗弁権の条文

先程も触れたとおり、同時履行の抗弁権は民法第533条に記されています。要件の説明をする前に、条文を以下に示しましょう。

第533条

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

引用:法令検索e-Gov

この条文を読むだけでも、ある程度は同時履行の抗弁権の要件を把握できます。

要件①:双務契約である

同時履行の抗弁権の要件は、双務契約で対立する債務が存在することです。コンビニの例でも、売買契約という双務契約で同時履行の抗弁権が発生しています。

基本的に債務と債権の関係が成り立っているのが条件です。どちらか一方の債権か債務が第三者に譲渡されたとしても、同時履行の抗弁権は効果が持続します。

要件②:相手の債務が弁済期に到達している

同時履行の抗弁権を主張するには、相手方の債務が弁済期に到達していなければなりません。お互いが債務を履行する状態になり、はじめて対立しているといえるからです。

仮に相手方の債務が弁済期になければ、自らの債務は履行する必要があります。このルールについては、条文のただし書きにも明記されています。

要件③:債務が履行されない

同時履行の抗弁権は、相手方が債務を履行しない状態において成立するものです。相手が問題なく弁済したら、こちら側も債務の履行に応じなければなりません。

では、当事者のどちらかが契約を解除した場合はどうなるでしょうか。

民法の考え方では、その相手方は同時履行の抗弁権を主張できないと判断します。なぜなら契約が解除されたら、対立関係も解消されるからです。

一方で双方が契約を解除し、相互に原状回復義務を負うときは同時履行の関係に立ちます。あくまでお互いの債務に、対立関係の繋がりがあるか否かで捉えましょう。

 

同時履行の関係にある例

同時履行の抗弁権が主張できる例は、以下のとおりです。

  • 1.相互に原状回復義務を負う
  • 2.負担付贈与の贈与と金銭支払
  • 3.弁済と受取証書
  • 4.建物買取請求権による土地の明渡しと金銭支払
  • 5.請負契約の物の引渡しと金銭支払
  • 6.双方の不当利得の返還義務
  • 7.所有者移転登記と金銭支払

この辺りの具体例は、過去問を解きながら種類を覚えていった方が早いでしょう。もちろん理屈を覚える手もありますが、紛らわしい部分なのでキーワードごと暗記するのをおすすめします。

上記では、上から順番に重要な例を表記するように並べてみました。特に1〜4の例は、狙われやすいポイントになるので必ず覚えてください。

5番の請負契約も、この分野の問題が出題された際に問われる可能性があります。一緒にチェックしておきましょう。

 

同時履行の関係にない例

続いて、同時履行の関係にない例も一緒にまとめてみましょう。

  • 1.敷金返還義務と建物明渡義務
  • 2.債務の弁済と抵当権設定登記の抹消
  • 3.債務の弁済と譲渡担保の目的物返還
  • 4.弁済と債権証書
  • 5.造作買取請求権による建物明渡しと金銭支払

こちらも同時履行の関係にある例と同様に、重要な例が上に来るように記載しました。

特に、造作買取請求権のケース敷金返還義務のケースが出題されやすい印象です。同時履行の関係にない例は、少しだけ理屈を解説してみましょう。

敷金と賃貸借の関係

敷金返還請求と建物明渡しに同時履行の抗弁権を認めなかったのは、賃貸借契約と敷金の関係によるものです。

敷金は賃貸借契約の終了後、修繕が必要な箇所に充当されるお金となります。すなわち敷金は建物を引渡し、清算を済ませたうえで元住人に返還されます。

そのため順序関係を見ていくと、

  • 1.建物の引渡し
  • 2.敷金の返還

になる点を押さえてください。

実務上は退去時に返還されるケースも少なくありませんが、実生活と法律ならではの関係性は別です。

債務の弁済と担保物権

債務の弁済と担保物権の関係も、同時履行の抗弁権で狙われやすい内容の一種です。基本的に担保は、弁済されなかったときの代償として設定されます。

この関係性を見るときは、担保をドラクエの「呪い」と考えてみてください。ドラクエで呪いを解除するには、教会へ行って神父にお布施を渡さないといけません。

つまりお布施を渡すことで、はじめて呪いが解けるようになります。

弁済と担保物権も、考え方は同じです。弁済をすることにより、はじめて担保物権という名の呪いが解消されます

 

 

同時履行の抗弁権の効果

同時履行の抗弁権が主張された場合、各当事者にはどのような効果が生じるかを解説します。ボリューミーな内容ではありませんが、重要な部分にはなるので何度も目を通してみてください。

履行遅滞に陥らない

同時履行の抗弁権を有効に主張できれば、弁済期が過ぎても履行遅滞には陥りません。相手による債務の履行を待ってから応対できるようになります。

仮に裁判上で争うとなると、同時履行の抗弁権が認められたら引換給付判決が下されます。引換給付判決とは、裁判所が原告の債務の履行と引き換えに被告も給付するように命じる行為です。

決して請求が棄却されるわけではないので、言葉の違いを確実に押さえましょう。

自働債権としての相殺は不可

同時履行の抗弁権が成立している債権を、自働債権として相殺することはできません

例えばAがBに対して、自社の商品を売却したとします。Bは付き合いで商品の購入に応じ、現在はまだ代金を支払っていない状態です(同一に履行する点も合意)。

しばらく経って履行期が到来したものの、Aはいまだに商品をBに送付していません。加えてBは、Aに対して別途お金を貸していました。

この状態において、AはBに対して商品の代金と貸金債権の相殺ができないということです。

その理由は、自働債権には性質上強制力が働くためです。この権利を行使するのは、見方を変えれば債権を強制することに繋がります。

ただし同時履行の抗弁権が付いているとき、あくまで対立関係にあるので相殺を使って強制的に弁済させるのはふさわしくありません。したがって同時履行の抗弁権が付着した債権については、自働債権の相殺ができないと考えられています。

一方で受働債権であれば相殺が認められています。自働債権とは異なり、性質上強制力が働かないためです。結果としてBからAに対しては、相殺の主張が可能です。

 

同時履行の抗弁権のまとめ

今回の記事では、同時履行の抗弁権の条文や要件をひと通り説明しました。

公務員試験で同時履行の抗弁権の内容を解くときは、要件を押さえておくことが大切です。過去問で出題された内容を優先的に勉強するといいでしょう。

特に同時履行の抗弁権の関係があるか否かを判断した判例が、狙われやすい傾向にあります。暗記でもいいので、区別を付けられるようにしてください。