どーも、やまとのです!
前回から公務員試験対策ということで憲法の勉強に移りました。
※前回の記事はコチラから
今回は前回説明し切れなかった内容と
新たな範囲の「人権の制約」を見ていきましょう。
1.法人に関する人権の制約
人権享有主体性は
『基本的人権を保障されている主体』
という意味でした。
前回は外国人を主に見ていきましたが、果たして法人にも人権は認められているのでしょうか?
ここでまず押さえなければならないのが、
法人も人の一種ということです。
人は自然人と法人に分かれます。
我々人間は自然人に分類されますね。
法人は会社や一般社団法人などといった組織が該当します。
法人もいわば自然人の集合体なので、本質的には人に該当するんですね。
そのため、法人も基本的人権を持つ主体であるといえます。
しかし、法人の性質上通常の人権とは異なる性質を持つのです。
法人が制約されている人権の代表例として
- 社会権
- 選挙権及び被選挙権
が挙げられます。
まずは社会権ですが、会社が貧乏になっても組織に対する生活保護はないですよね?
一般的に社会保障等といった社会権は自然人にのみ与えられているものです。
これが法人に対する人権への制約の1つといえます。
続いて、法人は選挙権もないため、政治家を選ぶ権利も与えられていません。
では、法人がある政党や政治家を応援することは許されているのでしょうか?
これについては有名な事件として
八幡製鉄政治献金事件があります。
この事件の発端は、八幡製鉄株式会社が特定の政党に政治資金を寄付したことでした。
その行為に対して株主が「おかしいぞ!」と訴訟を起こします。
確かに出資したお金が政治資金に使われるのは良い気はしないかもしれません。
では、最高裁はどういう判決を下したのでしょうか?
結論からいえば、最高裁は会社の行為を適法と認め、
株主側が敗訴しました。
会社もまた
『社会的な存在』であることに変わりがないのを裁判所は注目します。
そこで、法人といえども自然人による寄付と別に扱う理由はないとしました。
今の文言は結構重要ですので、絶対に押さえてくださいね!
だから、会社の寄付行為はある種目的の範囲内の行為であると決断を下したのです。
ちなみに、法人の資質を持ちつつも『法人格』のない組織は
『権利能力なき社団』と言われます。
町内会や大学のサークルが一例ですね。
当該団体もまた人権享有主体性を持つので
頭の片隅に入れておきましょう!
2.人権の制約と私人間効力
また訳の分からない言葉がつらつらと(笑)
大丈夫です!
イメージしやすい言葉で説明していきます!
・人権の制約
我々はいくら人権があるといっても無制限に認められているわけではありません。
表現の自由は確かにありますが、
他人のプライバシーを明かしたら大問題ですよね?
このように人権には制約が存在し、
『公共の福祉』がその代表例といえます。
公共の福祉にはさまざまな考え方があります。
ありとあらゆる人権同士に矛盾を孕まないよう、
実質的に公平であるべきとするという説もそのうちの1つです。
(一元内在制約説)
一元内在制約説を前提に考えると、
『二重の基準』という具体的な基準が誕生します。
これは、人々が持つとされている
- 精神的自由(学問、信教、表現)
- 経済的自由(経済活動、移動、居住)
といった2つの自由は制約の基準も異なることを示しています。
精神的自由は『厳格な基準』
経済的自由は『合理的な基準』
がそれぞれ設けられているのでしっかりと覚えましょう。
つまり、精神的自由の場合は制約を設けるのであれば
厳しめの基準を設けなければなりません。
人々の『信念』にかかる部分なので、
制約される基準がブレると不安に駆られてしまうからです。
一方で、経済的自由はケースバイケースにより合理的な基準が採用されます。
そうなれば、経済的自由の場合は自ずと裁量が働きやすくなるのです。
・私人間適用
以上より、人権も時には制約がかかることもある旨解説していきました。
次に憲法の効果を人間に適用させるプロセスを紹介しましょう。
憲法を私人間に適用させる手段は
- 直接適用説
- 間接適用説
の2通りがあります。(ここでは無適用説を抜きに紹介します。)
直接適用説は文字通り憲法103条(改正したら102条)の条文をそのまま適用させる考え方です。
間接適用説であれば、民法等の法律に反映させて私人間へ適用させます。
現在は『間接適用説』が通説とされていますね。
憲法を直接適用すると、
- 国家権力に対抗しようとする人権の本質を変えたり、薄めてしまったりする。
- 私的自治の原則や契約の自由の否定。
という現象に繋がるからです。
間接適用説は、憲法の効力も臨機応変な対応が可能となります。
(直接適用となると、条文そのままをぶつける形になるので)
ただし、間接適用説を用いても、
憲法の直接適用が全く無くなるわけではありません。
ちなみに、直接適用説を採用すべきだとする理由として、
会社やその他の組織の権力から人々を守るためだと考えられています。
3.特別権力関係論について
最後の最後に聞き慣れない言葉の登場!
特別権力関係論までやったら今日はおしまいです(^^)
これは、簡単に言えば
- 刑務官
- 収監者
といった特別な法律関係にある人権は制限を加える考え方です。
この考え方は現代では
『否定』されています。
一体、何が問題だったのでしょうか?
特別権力関係というのは、
立場的に上の者(刑務官)が下の者(収監者)を
服従させるという理屈の下に成り立っています。
特別権力関係は、一般国民とは
全く異なる人権の制度が敷かれていたのです。
まとめると
- 人権保障の排除
- 法治主義の排除
- 司法の排除
が特徴といえます。
つまり、例を挙げれば刑務官は
- 法律の根拠なく人権を制限でき、
- 法律の根拠なく命令や懲戒処分ができ、
- 裁判所の判断に服さない
という横行が可能となってしまいます。
このような手段は
『法の支配』の観念から否定されました。
なお、公務員の人権は私人よりも制約されています。
労働三権にあたる
- 団結権(労働組合を作る権利)
- 団体交渉権(給与等の交渉をする権利)
- 団体行動権(ストライキをする権利)
は認められていない職務も多いです。
警察や自衛官、消防職員、海上保安官は
- 団結権
- 団体交渉権
- 団体行動権
の全てが認められていません。
一方で、
非現業公務員(国家・地方)は、管理や運営以外のみ
- 団結権
- 団体交渉権
が認められています。
非現業とは、直接公務に関わる職員です。
(例:一般事務職員)
ちなみに現業職員も
- 団結権
- 団体交渉権
を認められていて、団結権にも特に制約はありません。
現業職員は公務に関わらない技能労務職が該当します。
(例:給食調理師、用務員)
そして、団体行動権はどの公務員にも認められていません。
このような公務員と労働三権の内容も問われやすいので注意しましょうね!
4.まとめ
今回は公務員試験の憲法解説ということで、
『法人と私人間の人権の制約』を中心に見ていきました。
併せて特別権力関係論もここで紹介しています。
- 八幡製鉄政治献金事件
- 二重の基準論
- 憲法の適用の仕方
- 特別権力関係論
- 公務員と労働三権
今回の確実に押さえてください。
ご覧いただき、ありがとうございました!