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契約の成立はいつ認められる?民法上の成立要件を解説

我々の生活では、日々いろいろなところで契約が交わされています。しかし契約の成立が、具体的にいつ認められるかをしっかりと考える機会は少ないはずです。

この記事では、民法上における契約の成立要件を解説します。公務員試験でも全業種あで重要な内容になるので、受験生は目を通してみてください。

 

契約の成立について

まずは、契約が成立される際の基本的な知識を紹介します。債権を知るうえでも重要な内容なので、正確に理解できるようにしてください。

日本は契約の自由が原則

日本では、契約の自由が原則とされています。特段の事情がなければ、自由な形式で契約を結んで問題ありません。書面のみならず、口頭だけで成立するケースもあります。

契約の自由が原則であれば、当然ながら契約にルールを設けるのもまた自由です。サービスによっては、あえて厳格に書類を用意することもあるでしょう。

法定主義を採用している物権とは、考え方が大きく異なる点も押さえてください。

申込みと承諾の意味

契約のルールをとらえる際に、覚えておきたい言葉が申込みと承諾です。一般用語にも使われますが、この際に定義を理解してください。

申込みとは、契約の内容を示したうえで締結するように申し入れる行為です。「あなたが承諾したら、契約を成立させますよ」という意味が込められています。

反対に承諾は、相手からの申込みは受け入れる行為です。この申込みと承諾があって、はじめて1つの契約が成立します。

 

 

契約はいつ成立する?

続いて、契約の成立時期についても解説しましょう。契約は状況によって、いつ成立するか異なることがあります。これらの違いを区別し、ルールをイメージできるようにしてください。

原則は承諾があったとき

契約が成立するタイミングは、原則として申込みに対する承諾があったときです。

例えば、AがBに対して自転車を無償であげるとしましょう。贈与契約は諾成契約であるため、Aの申し入れにBが承諾した時点で契約が成立します。

仮にAがBにお金を貸すといった消費貸借契約になると、要物契約となり実際にお金が動いてから成立条件を満たします。

諾成契約と要物契約でタイミングは少し異なりますが、申込みと承諾が前提にあることをまずは覚えましょう。

隔地者に対しては到達主義

契約によっては、離れた住所で暮らす人と締結するケースもあります。このように離れた住所地にいる人のことは、隔地者と呼びます。

隔地者と契約を結ぶ際には、ルール上は通知を送付しなければなりません。通知で状況を教えてあげないと、相手が想定外の損害を被る恐れもあるためです。

この場合、意思表示は通知が到達してから生じると考えられています。申込みの撤回は、通知の到達前か同時であれば可能です。

一方で到達後には、撤回できる条件が限られています。

承諾期間を設けたら、その期間内は撤回できません。承諾期間を定めていなくとも、相当な期間は不可とされています。

申込者が死亡したら

申込みの通知を送ったものの、契約が成立する前に申込者が死亡するケースも考えられます。このとき、下記のいずれかの条件に該当すれば申込みは効力を失います。

  • 死亡したら申込みの効力を生じないと意思表示していた
  • 承諾の通知を発する前に当該事実を知った

一方で、意思表示の通知は相手に届いた段階で効力が生じます。上記の要件に当てはまなければ、申込みの効力は消滅しません。

 

 

契約の成立で生じる効力

最後に契約が成立したら、どのような効力が生じるかをまとめます。この辺りは同時履行の抗弁権が、特に狙われやすい範囲となります。

ただし同時履行の抗弁権は、別の記事で詳しくまとめようと考えていました。そのため公務員試験の内容からすれば、やや深入りしすぎた内容となっています。

公務員試験合格のみが目的の人は、この範囲を読み飛ばしてもらっても構いません。ここからは契約の法的効果について、より詳しく知りたい人向けの内容です。

同時履行の抗弁権が生じる

契約が成立すると、同時履行の抗弁権を主張できる場合があります。こちらは相手が債務を履行するまで、自分も履行を拒否できる権利のことです。

同時履行の抗弁権は、認められるか否かが契約の内容によっても異なります。詳しい内容は、別の記事でまとめるので少々お待ちください。

第三者にも権利が生じる

三面契約が成立する構図についてイメージしやすいように示した画像

契約では、第三者に対して給付を求めることもあります。

例えばAが甲店に対して、商品を息子であるBの家に送るよう売買契約したとしましょう。仮に甲店がなかなか商品を送らないときは、Bが自ら給付を主張できます。

このとき契約を結んだAが要約者、受諾した甲店が諾約者、商品を送られる息子のBが受益者と呼ばれます。

Aと甲店の関係が補償関係AとBの関係が対価関係です。受益者による意思表示は単に権利を得る行為と捉えられるので、未成年も単独で主張できます。

未成年と民法の関係については、下記の記事も参考にしてみてください。

契約上の地位の移転

民法の改正により、契約上の地位の移転に関するルールも設けられました。

例えばAがBに対して、お金を貸したとしましょう(消費貸借契約)。その後、事情によりAは第三者であるCに対して、立場を譲渡する契約を結びました。

この契約をBが承諾したときは、正式に譲渡が成立したとみなされます。

CはAの立場を引き継いでいるため、取り消しや解除といった権利が与えられる点も特徴のひとつです。

このようにA・B・Cがトライアングル状で契約を交わしている様子は、三面契約と呼ばれています。

 

契約の成立は民法の基礎

契約の成立の内容は、民法の債権の分野を勉強するうえで無視できません。数ある契約の柱となるので、大前提のルールには目を通しておくといいでしょう。

こうした契約の知識は、民法のさまざまな範囲で活用できます。民法は全部で1050条の条文がありますが、これらは全てが密接に関わってくるものです。

全体的に目を通せるように、早いうちからコツコツと勉強を積み重ねてください。