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弁済とは?第三者の関係と場所や時間に関するルールを解説

民法上で発生した債務を消滅させるために、採られる一般的な方法として弁済が挙げられます。弁済の勉強をするには、第三者の関係および場所・時間のルールを把握しなければなりません。

ここでは、公務員試験の勉強で特に押さえたいポイントを紹介しましょう。

 

弁済とは

弁済とは、債権者に対する給付を実現させる方法のことです。

例えばAが友人から10万円を借りたとしましょう。この場合、Aは10万円を返済すれば弁済がなされたとみなされます。

弁済の法的性質は、準法律行為です。つまり「意思」が法律上の効果を発生させないものであるため、返済の意思がなく偶然お金を返せた場合でもOKとされています。

無事に弁済がなされたら、当然ながら債権および債務は消滅します。

 

 

第三者が弁済できるのか

状況によっては、債務者本人が弁済できないケースもあるかもしれません。このとき、第三者が本人の代わりに弁済できるのかを解説しましょう。

第三者の弁済は原則OK

民法上では、第三者でも債務者本人に代わって弁済できると定められています。

ただし弁済する際には、本人の意思に反することはできません。要するに債務者本人が自分で返すと言っているにもかかわらず、第三者が返済に当たるのは禁じられています。

第三者の弁済は、あくまで第三者が自分の名前で債務者の返済に応じる行為です。債務者本人の名前で対応した場合、無権代理という扱いになります。

無権代理の内容は、以下の記事でも解説しているので忘れた人は復習用にアクセスしてみてください。

第三者の弁済ができない例

債務の内容によっては、第三者の弁済が認められないケースもあります。

まずは上述のとおり、債務者本人が第三者の弁済に反対しているときです。もう一つの要因として、債務の性質が許さないケースも挙げられます。

主な具体例が、芸術家に対して作品を依頼している場合です。債権者はその芸術家の作品が欲しいために、わざわざ契約を結んでいます。

それを本人以外の人間が作成してしまったら、もはや贋作を渡しているのと変わりありません。

このように債務の種類によっては、第三者の弁済がふさわしくないこともあります。

債務者の意思に反して弁済できるケース

何度も書いていますが、第三者は基本的に債務者の意思に反して弁済できません。一方で、例外的にこのような弁済が認められる立場の人もいます。

主な例として挙げられるのが以下のとおりです。

被担保債権 ・物上保証人
・抵当不動産の第三取得者
・後順位抵当権者
借地人の地代 借地上の建物賃借人

 

これらの人々は自身の生活にも多大な影響が出る恐れがあるため、債務者の意思に反して弁済しても問題ないとされています。

ただし連帯債務者は、このような利益を得られる第三者には含まれません。

 

弁済の場所・時間・費用

一般的に弁済の場所や時間は、当事者同士が自由に決められます。民法は契約自由の原則を柱としているためです。

一方で特段の契約がなかった場合は、民法の規定を守らないといけません。ここでは、規定をベースに弁済の場所と時間に関するルールを紹介しましょう。

弁済すべき場所

特定物債権を弁済する際には、特に理由がない限りは債権発生時に目的物が存在した場所とされています。店舗で債務が発生したのであれば、お店に赴いて弁済するのが基本的なルールです。

目的物が特定されていない場合は、債権者の現在の住所で弁済を行います。

とはいえ、契約の自由の原則により場所は当事者の間で自由に変えられます。

弁済すべき時間

弁済は、法令や慣習によって自由に時間を決められます。取引時間の定めがるのであれば、その期間を守るべきとするのが民法上の考え方です。

なお、特定物を債権者に渡す行為を「引渡し」と呼びます。基本的に引渡し時には、現状でその物を渡してしまえば問題はありません。

弁済にかかる費用

弁済の方法によっては、郵送代や荷造費などと費用がかかるケースもあるでしょう。この弁済以外の費用を、債権者と債務者のどちらが払うかも民法で定められています。

原則は、債務者側がこれらの費用も負担するのが民法上のルールです。

しかし債権者が引っ越したために、費用がさらに高くなるケースもあります。この増加分については、債権者側が負担してあげるのが基本です。

このルールも契約の内容で自由に変えられますが、法律上の決まりも覚えておきましょう。

 

 

受取証書と債権証書

弁済の内容を勉強するうえで、受取証書と債権証書の違いも押さえておいた方がいいでしょう。これらの取り扱いについても、民法でしっかりと明記されています。

受取証書と債権証書の定義

受取証書とは、弁済と引き換えに渡される証明書のことです。債権者側が作成し、書類には受け取りを完了した旨が記載されています。二重弁済を防止するのが、受取証書の主な目的です。

一方で受取証書に似ている言葉として、債権証書もあります。こちらは債権が成立している旨を記載している書類です。

債務者側が書類を作成し、債権者に渡すことで債権は成立します。弁済が全て完了すれば、弁済者は債権証書の返還請求が可能です。

同時履行の関係の扱い

受取証書と債権証書の大きな違いは、同時履行の関係の扱いです。同時履行とは債権者がある行為をしない限り、債務者も弁済をしないとできる関係性を指します。

受取証書の場合は、同時履行の関係に立ちます。受取証書は弁済したのを証明する書類であり、同じタイミングで渡さないと二重弁済されるリスクがあるためです。

一方で、債権証書の返還については同時履行の関係に立たないと考えられています。受取証書さえ渡してしまえば、とりあえず二重弁済は防止できるのが主な理由です。

したがって債権証書の返還は、後日行う形でも特に問題はありません。

 

弁済のルールおさらい

この記事では、弁済の基本的なルールについて解説しました。

弁済は本人だけではなく、第三者によって行うことも可能です。ただし債務の性質や債務者の意思によってできない場合もあるので注意してください。

また弁済の場所や時間についても、民法で基準が定められています。とはいえ、あくまで基準であるため、当事者間で自由にルールを定めても問題ありません。

受取証書や債権証書については、同時履行の関係に立つか否かを中心に覚えてください。

弁済は公務員試験のみならず、皆さんの生活にも生きるので勉強しておいて損はありません。