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相殺とは?自働債権と受働債権の定義と不法行為の場合の取り扱い

公務員試験の民法において、よく見られる言葉が相殺(そうさい)です。初めて勉強した際に、言葉の意味のみならず読み方もわからなかった人が一定数いるかと思います。

ここでは、相殺の内容と自働債権および受働債権の定義を解説します。特に不法行為の場合の取り扱いが問われやすいので、区別をつけるようにしてください。

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◆この記事でわかること◆
・相殺の仕組みと簡単なルール
・自働債権と受働債権の区別の付け方
・不法行為が絡む相殺の関係
・差し押さえと相殺の関係

 

相殺とは

相殺の具体例を示している図

相殺とは、お互いが対等の債務を抱えていたとき、意思表示によって消滅させる行為のことです。

例えばAがBに対して5万円を貸していました。本来、Bは借りた5万円を期日までに返還しなければなりません。

しかしAは誤って、5万円相当のBの高級皿を割ってしまいました。Bに対して、金銭として5万円を弁済するように要求されたとします。

このときBも同意していたら、Aはお金を返してもらう権利を捨て、それぞれの債務が消滅します。

なお相殺する側の債権を自働債権、される側の債権が受働債権です。こちらも重要な用語になるので

 

 

相殺のルール

相殺が発動されるには、相殺適状にあるのが前提です。相殺適状とは、相殺が可能な状態を差します。公務員試験の範囲で押さえておきたい、相殺のルールを説明しましょう。

お互いの債権が同種

相殺は、基本的に双方の持つ債権が同じ種類であることが条件です。

相手が金銭債権を有していた場合は、こちらも金銭債権を持つことで初めて相殺が成立します。

とはいえ、債権が生じた原因まで同じである必要はありません。種類さえ合っていれば、別の原因によって生じた債権でも相殺は認められます。

自働債権が弁済期にある

相殺が成立するには、お互いの債務が弁済期に達する必要があると民法に定められています。ただしこの規定は、正直に言うと建前みたいなものです。

実際には自働債権が弁済期に達していれば、相殺ができると最高裁で判断されています(昭和8年5月30日大判)。受働債権の期限の利益は、放棄できるからです。

ただし自働債権と受働債権が相殺適状にあるというためには、受働債権につき期限の利益を放棄できるだけではなく、期限の利益の放棄または喪失などにより弁済期が現実に到来しなければなりません(平成25年2月28日最判)。

なお期限の利益とは、債務の履行を猶予されている期間のことです。その利益を自らなくすか、事情によって失われると債権者は債務者に弁済を促せます。

そのため、一般的には期限の利益を放棄または喪失した日に弁済期が到来するのです。

この判例が出たことで、受働債権にもある程度の制約が生まれています。これまで建前に過ぎなかった規定が、実務上でも少しずつ条文に合わせているような気がします。

したがって受働債権が弁済期に達していなくとも、自働債権さえ到達していれば事実上は相殺が可能です。

消滅時効と相殺

債権は一定期間が経過すると、時効によって消滅します。

一方で時効で消滅する前に、相殺できる状態になっていれば、自働債権として相殺の主張が可能です。

債権者が保証人に対して債務を負担していた場合、主たる債務者に対する債権が時効で消滅しても相殺できると判断されています。

時効で消滅した債権を他人から譲り受けたときは、すでに消えてしまったものになるので相殺の主張はできません。

異なる履行地でも可

お互いの債務の履行地が異なっていても、相殺の主張が可能です。

AとBがそれぞれ北海道と沖縄に住んでおり、お互いが債権を有していたとしましょう。この状態で相殺を認めないと、双方が時間を合わせて互いに弁済しないといけません。

こうした手続き上の負担を軽減するうえでも、別の履行地においても相殺を認めています。しかし別の住所地で相殺をしたために損害賠償が生じたときは、それに応じる必要もあります

 

相殺と不法行為時の扱い

相殺の範囲でよく狙われやすい分野が不法行為時の扱いです。条件や立場によって、相殺できるか否かが変わります。ここでは、具体的に3つのケースを取り上げましょう。

自働債権であれば相殺可能

例えばAがBからお金を貸していたところ、後日Bを車で跳ねてしまったとします。心身を傷つけたとして、AはBに対して不法行為の責任を負っている状態です。

反対に考えれば、BはAに対して不法行為にかかる債権を有しているともいえます。

この関係性を押さえる際には、以下のように図でイラストを作るようにしましょう。

相殺と不法行為の関係性を示している図

実際に公務員試験の問題を解くうえでも、自分で簡潔にイラストを書いておくことは大切です。

仮に一方が不法行為債権を有しているとき、自働債権であれば問題なく相殺できると考えられています。要するに交通事故の被害に遭った、Bの立場からは可能です。

受働債権では相殺できない

先程の例を使うと、交通事故の加害者であるA、すなわち受働債権の立場からは相殺ができません

Bからお金を返してもらえないとき、車で轢いて損害賠償分と相殺にかけようという行為を防ぐためです。

より相殺と不法行為の内容がわかるように、もう一つ例を出してみましょう。

もしAとBの双方が不法行為による債権を有していた場合は、お互いが相殺できません。なぜなら双方とも、不法行為の債務を負っていることになるからです。

こちらは公務員試験でも、具体例と合わせて長めの文章で出題されるケースがあります。

しっかりとイラストを書きつつ、落ち着いて問題を解くようにしてください。特に自働債権と受働債権は、それぞれの立場が混同しやすいので注意が必要です。

 

 

相殺と差し押さえ

あまり実感が湧きにくいかと思いますが、債権は差し押さえられることもあります。差し押さえについても、相殺の是非が問われる場合もあるので注意が必要です。

ただし、差し押さえとの関係については国家総合職レベルの試験を受けない人は、後回しにしてもいいかなと思います。

相互の順番が重要

相殺と差し押さえについては、どちらが先に行われるかがカギを握ります。

債権を有したタイミングと差し押さえられたタイミングのどちらが早いかで、相殺の可否が決まります。

債権が差し押さえられる前に、第三債務者が自働債権を取得していたときは相殺が可能です。反対に差し押さえの方が先の場合は、自働債権をもって相殺できません。

なお、これらはあくまで差し押さえと自働債権の取得において、どちらのタイミングが早かったかで変わる部分です。

弁済期の前後については、特に関係ありません。差し押さえ前に取得した自働債権であれば、弁済期が差押債権より後でも問題なく相殺できるとされています。

差押債権の具体例

内容をもう少しイメージできるように、差押債権のケースについても具体例を用いましょう。以下の画像もチェックしながら、理解を深めてください。

相殺と差し押さえの関係を示している図

例えばAがBに対して50万円分の商品を売りました。しかしBはお金がなく、一向に支払いを済ませる気配がありません。

一方で、過去にBはAに対して50万円を貸していたことがありました。ここで問題なく相殺できるかと思いきや、Cという人物も絡んできます

CはBに100万円を貸していましたが全然戻ってこないので、BのAに対する債権を差し押さえようとしました。要は、Aの返済をCに直接振り込ませるようにしたわけです。

このとき差押債権の第三債務者は、Bにお金を返す予定だった「A」となります。

仮にCの差し押さえが完了する前に、Aが自働債権を取得して相殺適状の条件を満たしていたら問題なく相殺ができます。

実際に差し押さえの手続きを踏むには、裁判所が絡むため時間を要します。その分、差し押さえが完了したら、一切の処分が許されなくなります。

処分には相殺も含まれることから、差し押さえと相殺適状のどちらが早いかが重視されるのです。

 

相殺は公務員試験においても重要な分野

相殺は、公務員試験でも比較的問われやすい内容となっています。

イメージ自体はつかみやすい分野ですが、自働債権と受働債権を中心に紛らわしいのが難しいポイントです。

問題の難易度が高くなると、具体例を持ち出してどのルールに当てはまるかが問われます。基本的なルールを押さえつつ、自分でも具体例を挙げてイメージを深めることが相殺の分野を物にするコツです。

また問題を解くときは、簡単でいいので自分でイラストを書いてください

以下のテキストを購入すれば、公務員試験の民法の難易度がわかります。結構難しい問題も収録されているので、ぜひ勉強に役立たせてみてください。