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典型契約の種類一覧!典型契約は全部で13種類

民法の債権の内容で、特に大きな比重を占めているのが典型契約です。一口に契約といっても、いくつもの種類が存在します。

ここでは、民法で覚えるべき典型契約の種類を一覧形式で紹介します。公務員試験用とそれ以外の知識に分けるので、試験を受けられる人にもおすすめです。

 

契約とは

契約とは、法的な権利・義務を発生させるために結ばれる約束のことです。我々の生活を形成する基盤でもあり、どの国や地域でも当たり前のように行われています。

契約は、見方によってさまざまな分類があります。まずは代表的な分類方法を覚えてください。

双務契約・片務契約

双務契約とは、双方の人間が債務を負うタイプの契約です。主な例として売買契約が挙げられます。

例えばAが通販でゲームを買ったとき、Aはお金を払う義務、通販サービス側はゲームを送る義務があります。双務契約には、同時履行の抗弁権危険負担のルールも絡んでくるのがポイントです。

対して片務契約は、どちらか一方が債務を負います。一般的な例が贈与契約です。

親が自身の車を子どもに贈与する際、債務を負っているのは親だけであるため片務契約に該当します。

諾成契約と要物契約

諾成契約は、双方の合意のみで成立するタイプの契約です。売買契約や贈与契約は、それぞれ「買う」「贈与する」といった合意だけで成立します。

もちろん目的物を引き渡す作業はありますが、契約を成立させる要件にはなりません。

反対に要物契約は、目的物を引き渡すことで初めて有効となる契約です。主な例として消費貸借契約が挙げられます。

とはいえ消費貸借契約も、書面を通じて契約する場合は諾成契約となります。書面ではなく、口頭で金銭を渡したときのみ要物契約になるのが特徴です。

なお債権者の目的物を無償で使わせる使用貸借契約は、諾成契約に該当します。紛らわしいポイントですが、しっかりと区別してください。

有償契約と無償契約

有償契約は、対価が発生する契約を指します。売買契約や賃貸借契約、請負契約などは債務者が対価を支払わなければならないため、有償契約に含まれます。

一方で無償契約は、契約を成立させるにあたって対価が発生しない契約です。贈与契約や使用貸借契約が、主な例として挙げられます。

ここで紛らわしいポイントが消費貸借契約です。消費貸借契約は、お金の貸し借りであるため金銭的な要素は含まれています。

しかし利子が発生しない(無利息消費貸借)場合は、単にお金が当事者間で移動しているだけです。対価を支払っているわけではないので、無利息消費貸借契約は無償契約に該当します。

 

 

典型契約とは

典型契約とは、民法で定められている契約のことです。民法典に記されている型であることから「典型」と名付けられています。別名で有名契約とも呼ばれています。

また世の中には、民法で定められていない非典型契約も存在します。フランチャイズ契約やリース契約が主な例です。

とはいえ公務員試験においては、典型契約さえ押さえておけば問題ありません。民法では大きく13個の種類がありますが、公務員試験に出てくるものはさらに限られます。

 

典型契約の種類一覧

典型契約の種類の一覧が書かれている図

ここで典型契約の種類を一覧形式で紹介します。それぞれの契約の細かいルールは、別に記事を作成する予定です。完成したらリンクを貼りますので少々お待ちください。

公務員試験用としては、以下の契約の種類を中心に勉強するといいでしょう。

  • 贈与契約
  • 売買契約
  • 消費貸借契約
  • 使用貸借契約
  • 賃貸借契約
  • 請負契約
  • 委任契約
  • 組合契約

ほかにも、典型契約には次の種類もあります。

  • 交換契約
  • 雇用契約
  • 寄託契約
  • 終身定期金契約
  • 和解契約

まずは公務員試験で問われやすい内容から説明します。そのあと、おまけという形で他の典型契約についても見ていきましょう。

贈与契約

贈与契約は、目的物を無償で譲り渡すのを取り決める契約のことです。Aが息子のBに対して、自身のカバンを渡す行為が該当します。

贈与契約は先程も述べたとおり、目的物を一方的に渡すので片務契約の一種です。また、お互いの意思表示で契約が成立するので諾成契約となります。

なお負担付贈与契約であれば、双務契約かつ有償契約に変わります。

  • 片務契約
  • 諾成契約
  • 無償契約

売買契約

売買契約は、我々も日常的に行っているスーパーでの買い物が該当します。こちらも性質上、お互いの意思表示によって成立する諾成契約です。

さらに贈与契約とは異なり、お互い金銭および目的物を引き渡す必要があるので双務契約となります。

  • 双務契約
  • 諾成契約
  • 有償契約

消費貸借契約

消費貸借契約は、どちらか一方がお金を貸すことを目的とした契約です。ジュースを買おうと思ったらお金がなかったとき、友人から借りるケースが該当します。

消費貸借契約の場合は、条件によって契約の内容も大きく異なるのが紛らわしいポイントです。

一方的にお金を貸すのを目的としているため、性質上は片務契約となります。

お金を渡して初めて効力が成立する点から、要物契約と捉えるのが一般的です。しかし上述したおとり、書面で契約を交わした場合は諾成契約に該当します。

またこちらもすでに説明していますが、利息が発生しないときは無償契約、利息が付く場合は有償契約になる点も特徴です。

  • 片務契約
  • 要物契約(書面では諾成)
  • 無償契約(利息付は有償)

使用貸借契約

使用貸借契約は、友人の自転車を無料で使わせてもらうような契約です。

こちらも消費貸借契約と同じく、一方的に自転車を貸すのを認めることで成立します。そのため片務契約に該当する点を押さえてください。

物を無料で使わせるのを約束する契約ですが、こちらは意思表示だけでも成立します。そのため、諾成契約に該当するのが消費貸借契約(書面以外)との相違点です。

  • 片務契約
  • 諾成契約
  • 無償契約

賃貸借契約

賃貸借契約の例として挙げられるのが、アパートを借りるときです。大学生以上であれば、特に馴染みのある種類だと思います。

賃貸借契約は片方が物件を使わせて、もう一方が家賃などを払うので双務契約に該当します。消費貸借契約や使用貸借契約と異なるポイントです。

さらに、こちらは不動産会社や大家さんと契約を交わしたうえで成立します。そのため諾成契約に該当する点も覚えてください。

  • 双務契約
  • 諾成契約
  • 有償契約

請負契約

請負契約は一方が仕事を完成するのを約束し、相手方が金銭を支払うことで成立する契約です。一人親方の大工に対し、建物の建設を依頼するケースが該当します。

お互いに対価的な債務を負う必要があるので、請負契約は双務契約です。さらに意思表示だけで成立することから、諾成契約に該当します。

  • 双務契約
  • 諾成契約
  • 有償契約

委任契約

委任契約とは、本当は自分でやるべき行為を第三者にお願いすることです。

例えば民事裁判を起こす場合、形式上は原告自らが裁判上の手続きをします。しかし法律は専門的な要素が多いので、大半の人は弁護士に依頼をするはずです。

このような依頼が委任契約に該当します。

委任契約は、民法の規定上では対価を目的としているわけではありません。弁護士は特約で費用が発生しますが、本来は無償でも当然のように成立しうるものです。

そのため原則として、委任契約は無償契約に該当します。加えて一方には対価的債務が発生しないので、片務契約となるのが特徴です。

一方で先程例に出した弁護士の場合だと、商売でサービスを提供しているので費用が発生します。この場合は、双務契約・有償契約になるので間違えないようにしてください。

  • 無償:片務/有償:双務
  • 諾成契約
  • 無償または有償契約

組合契約

組合契約とは、共同の関係者が出資し合って事業を営むための契約です。大学生からすれば、あまり馴染みがなくイメージもしにくいかもしれません。

組合は法人格を持たない点から、会社とは区別されます。細かいルールについても、民法で明記されています。

組合契約はお互いに出資し合うため、双務契約・有償契約になるのが特徴です。

  • 双務契約
  • 諾成契約
  • 有償契約

交換契約

ここからは、公務員試験の範囲としてはやや深堀りしすぎている内容です。公務員試験対策が目的の人は、読み飛ばしてもそこまで大きな影響はありません。

交換契約は、その名のとおりお互いの所有物を取り替える契約を指します。皆さんも子どもの頃に、遊戯王のカードなどを交換した過去があるでしょう。これを堅苦しく説明したものです。

交換契約は、お互いが自身の所有物を引き渡すので双務契約になります。

また金銭ではなくとも、双方の持つ目的物は財産権の一種です。対価として物を払っている状態になるので、交換契約は有償契約と考えられています。

加えて目的物を渡すのが狙いですが、意思表示した時点で効果が認められます。したがって諾成契約になる点もポイントのひとつです。

  • 双務契約
  • 諾成契約
  • 有償契約

雇用契約

雇用契約も読んで字のごとく、働いてもらう・働かせてもらうのを取り決める契約です。

千と千尋の神隠しでも、千尋と湯婆婆(ユバーバ)が雇用契約を結ぶシーンがありますね。千尋が契約書にサインしたことで、湯婆婆と雇用関係になりました。

このように諾成契約になるのが特徴のひとつです。

さらに従業員は労務で会社に貢献し、会社側は貢献度に対して給料を支払います。お互いに対価的債務が発生しているため、双務契約・有償契約になるのが特徴です。

  • 双務契約
  • 諾成契約
  • 有償契約

寄託契約

寄託契約は、自分の所有物を一時的に預かってもらう契約のことです。

こちらも委任契約と同様に、報酬のやり取りを目的にするわけではありません。ホテルのロビーも、基本的には追加の料金を支払わないで荷物を預けられるはずです。

したがって原則としては、無償契約に該当します。さらに預かる側のみが債務を負う点から片務契約の一種です。

一方でコインロッカーなど、有料で荷物を預けるサービスもあります。料金の支払いが発生するときは、寄託契約でも有償契約および双務契約になります。

  • 無償:片務/有償:双務
  • 諾成契約
  • 無償または有償契約

終身定期金契約

正直な話、ここから先は公務員試験では不要な知識となるでしょう。典型契約には含まれるので解説しますが、優先的に勉強する必要は全くもってありません。

終身定期金契約は、当事者の一方が自分や相手方、第三者が死亡するまで定期で金銭等を給付するのを約束したものです。

ただし日本では、公的年金を中心に社会保障が充実しています。そのため終身定期金契約が結ばれる事例はほとんどありません

こちらも委任契約や寄託契約と同様、対価の有無によって契約の分類が変わります。

  • 無償:片務/有償:双務
  • 諾成契約
  • 無償または有償契約

和解契約

和解契約とは、当事者の間で生じている争いを止めることです。お互いに不利益を我慢し、妥協するのを意思表示します。

意思表示によって成立する契約であるため、諾成契約の一種です。

またお互いに財産上の負担を強いるような格好となるので、有償契約に該当します。

  • 双務契約
  • 諾成契約
  • 有償契約

 

 

典型契約のまとめ

この記事では、典型契約の種類一覧をひと通り紹介しました。

公務員試験では、典型契約の中でも出題される範囲がある程度限られています。他の科目と同時並行で勉強しないといけないため、過去に出題された内容を中心に勉強しましょう。

「双務契約・片務契約」「諾成契約・要物契約」「有償契約・無償契約」で区別したうえで覚えるようにしてください。

  双務・片務 諾成・要物 有償・無償
贈与契約 片務
負担付:双務
諾成 無償
負担付:有償
売買契約 双務 諾成 有償
消費貸借契約 片務 要物
書面:諾成
無償
利息付:有償
使用貸借契約 片務 諾成 無償
賃貸借契約 双務 諾成 有償
請負契約 双務 諾成 有償
委任契約 原則:片務
有料:双務
諾成 原則:無償
有償の場合も
組合契約 双務 諾成 有償
交換契約 双務 諾成 有償
雇用契約 双務 諾成 有償
寄託契約 原則:片務
有料:双務
諾成 原則:無償
有償の場合も
終身定期金契約 原則:片務
有料:双務
諾成 原則:無償
有償の場合も
和解契約 双務 諾成 有償

表を見ればわかると思いますが、基本的に無償契約の場合は片務契約となります。この法則さえ理解できれば、あとは各典型契約の性質からどの分類に該当するかを押さえるだけです。

典型契約の種類によっては、状況に応じて有償と無償、諾成と要物が両立するものもあります。区別を付けやすくするためにも、具体例を交えて覚えるようにしてください。