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王権神授説と社会契約説の違い|国王と国民の関係が変化した背景

高校の政治経済で必ず習う範囲として、王権神授説や社会契約説があります。これらの考え方が変わったことで、今の平等な社会が成り立っています。

ここでは、王権神授説と社会契約説がどのように異なるのかを解説しましょう。

 

王権神授説とは

王権神授説の仕組みをイメージできるように示したイラスト

王権神授説のイメージ

王権神授説とは、国王の権利が神から与えられたと捉える考え方です。イギリスの思想家フィルマーやフランスの聖職者ボシュエによって唱えられました。

要するに神様と同等の権力が与えられているため、どのような独裁政治を敷いたところで全く問題ありません。事実、近世ヨーロッパでは国王らによる圧政で国民が苦しめられていました。

このように国王の独裁政治を基本とする社会の在り方は、絶対王政と呼ばれます。

 

社会契約説とは

社会契約説の仕組みをイメージできるように示した図

社会契約説のイメージ

社会契約説とは、国家は国民との約束を土台に成立しているという考え方です。思想家の中には、国王の専制政治にメスを入れたいと考える人も現れました。

約束をもとに成立している社会では、国王も決められた範囲でしか権力を行使できません。また政治そのものも、国民の約束を守るために行うべきだと主張します。

社会契約説と国民の権利

国家と契約を交わしている国民には、以下の権力が与えられています。

  • 国民主権
  • 基本的人権

これらは、現在の日本国憲法でも主軸となっている3本柱のひとつです(もうひとつは平和主義)。

社会契約説が登場したことでイギリスの名誉革命やフランス革命、アメリカ独立戦争と「自由」を勝ち取る戦いが次々と勃発しました。こうした歴史を経て、多くの国々で国民の在り方が見直されたのです。

自然権と自然状態

社会契約説を勉強するうえでは、自然権と自然状態の意味を理解する必要があります。

自然権とは、人間が生まれながらに持っている権利のことです。さらに社会契約説において、国家と契約を結んでいない(国家が成立していない状態)を自然状態と呼びます。

また自然権の存在を認め、理性に基づいて成立する法が自然法です。このように社会契約説では「自然」という言葉が多く出てくるので、しっかりと意味を押さえてください。

 

 

代表的な社会契約説

イメージ画像

社会契約説を唱えた人物として有名なのが以下の3人です。

  • ホッブズ
  • ロック
  • ルソー

高校の政治経済を勉強されている方も、必ず上記3人の名前と著書は覚えるようにしましょう。ここでは、背景も踏まえて解説します。

ホッブズの社会契約説

ホッブズは、自身の著書リヴァイアサンにて社会契約説を唱えました。

彼の言葉で特に有名なのが「万人の万人に対する闘争」です。ホッブズは人々が自分の命を守る(自己保存の権利)ため、争い合う社会が自然状態だと考えました。

しかし国民の殺し合いを放置しては、国家が成り立つわけありません。そこで争いを止めさせるには、強大な統治者による支配が必要だと考えたのです。

そのためホッブズの考え方では、争いが収まるのであれば統治者は専制政治を敷いても問題ないとしました。社会契約説といえども、結局は絶対王政を認めてしまっているのが矛盾点です。

ロックの社会契約説

ロックは市民政府二論にて、独自の社会契約説を展開しました。彼は人々の自然権は「生命・自由・財産権」にあると捉えます(財産権を最重視)。

国民は基本的に平和を望むものの、これらの自然権が侵害される状態を自然状態と考えました。ロックがいう政府・議会の役割は、人々の自然権をしっかりと守ることです。

仮に議会や政府がその約束を守れない場合は、国民が代表を変更するという強硬手段が採れるとします。ロックはこれを抵抗権と名付けました。

なおロックは自身の考え方を実現できる社会として、間接民主制が望ましいとします。今の日本の政治も間接民主制を採用していますが、この仕組みはアメリカ独立戦争にも大きな影響を与えました。

ルソーの社会契約説

ルソーも自身の著書社会契約論で、社会契約説を唱えた人物のひとりです。彼の考えでは、人々は自然状態においても自由と平等を重んじると考えました。

しかし自由や平等も、やがて私有財産制度の施行により崩壊してしまいます。つまり人々が土地を所有することで、持つ者と持たざる者が明確に分かれると考えたのです。

社会は貧富の差が拡大してしまい、富裕層が貧困層を搾取するようになります。こうして自由や平等といった自然状態も、少しずつ崩れ去っていまいます。

ルソーは失われた自然状態を取り戻すべく、人々の共同体として政府が作られると考えました。

共同体で共有している「幸福を願う思い」を、彼は一般意志と名付けます。そして一般意志に従えば、自由と平等を取り戻すことができると主張します。

共同体を作るという観点から、ルソーが理想としたのは直接民主制です。つまり代表者を経由せず、国民一人ひとりが直接意思決定に参加すべきとしました。

日本は基本的に間接民主制ですが、憲法の国民投票や自治体の住民投票など一部で直接民主制も採用されています。

 

王権神授説と社会契約説の違いを比較

今回の記事では、王権神授説と社会契約説の違いを重点的に解説しました。思想の分野は、専門用語が多く出てきて堅苦しいイメージを覚えるかもしれません。

しかし各々の考え方を現代風に捉えれば、意外と内容は単純であるのがポイントです。ここでは、最後に王権神授説と社会契約説の比較を表でまとめましょう。

  王権神授説 社会契約説
定義 国王の権利は
神から与えられたもの
国民との契約をもとに
国家は成立する
提唱者 ボシュエ(英)
フィルマー(仏)
ホッブズ
ロック
ルソー
スタイル 絶対王政 国民主権
基本的人権

また王権神授説と社会契約説については、私のYouTubeチャンネルのほうでも紹介しています。

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ぜひ併せてチェックしてみてください。