2024年10月27日、衆議院の解散総選挙が実施されます。すでに期日前投票に行ってきた人も少なからずいるでしょう。
この記事では、選挙を経験したことがない人に向けて具体的な流れを紹介します。18歳になった、あるいは行くのが怖いと思う人は記事を参考にしながら投票に生かしてください。
解散総選挙とは
解散総選挙とは衆議院を解散し、新たに衆議院議員を選ぶための選挙です。日本は二院制を採用しており、衆議院と参議院に分かれています。
どちらも国会議員であることに変わりませんが、任期や権限などに違いがあります。なお日本において、衆議院と参議院の双方の議員を兼ねるのは認められていません。
ここでは衆議院解散選挙がなされる理由や狙いについて紹介しましょう。衆議院と参議院の違いについて知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
解散総選挙のタイミング
衆議院が解散できるタイミングは、一般的に内閣不信任案の可決、信任案の否決がなされたときです。衆議院の51名以上が「今の内閣では職務を任せられないことに」賛成した場合、内閣は次の2つを選択できます。
- 衆議院を解散させる
- 内閣を総辞職する
解散は国民からの信任にも関わるため、正当な理由がなく好き勝手にできるものではありません。しかし実態は、内閣総理大臣により乱用されつつあるのが実態です。
その原因は衆議院の解散を、「天皇の国事行為」に求める説にあります。天皇が国事行為を行うには、内閣の助言と承認が必要です。
したがって実務を見てみると、内閣総理大臣が自分たちに有利なタイミングで解散できる状態となっています。この実態に関しては同じ政党が政権を握りやすく、民主主義が崩壊(独裁化しやすい)と危惧する声もあります。
解散総選挙のメリット
解散総選挙のメリットは、勝利すれば再び最長4年間実権を握れるようになることです。
支持率が高いときに解散総選挙を実施すれば、多くの国民から票が入る確率も高まり、政権の長期安定化も目指しやすくなります。また多くの議席数が得られれば、新たに国会議員が増えるのもメリットのひとつです。
もちろん逆に総選挙で負けてしまうと、他の政党が政権を握ってしまいます。このことから、衆議院の解散はリスクも高いといえるでしょう。
解散総選挙で採られる方法
参議院には解散権がないため、解散総選挙は必然的に衆議院議員総選挙を指します。衆議院議員総選挙で採られるのは、小選挙区比例代表並立制です。
小選挙区で代表者1人を選びつつ、比例代表によって配分された議席数のうち復活枠を設けます。ただし比例代表で復活する人は国民が選ぶことはできず、政党が作成した名簿に従います。
投票の流れ
次に選挙へ行く人のために、衆議院議員の解散総選挙の流れを説明します。また流れだけではなく、小選挙区・比例代表・国民審査の意味も解説しましょう。
実際の流れは、各投票所によって少々異なる場合もあります。わかりやすく案内が掲示されているので、それに従うようにしてください。
ハガキの確認・窓口に見せる
まず皆さんのもとには、すでに衆議院議員総選挙の案内がハガキで来ているはずです。ハガキには投票所が記載されているので、必ず指定された場所に行ってください。
投票所に行ったら、受付窓口の職員さんにハガキを見せましょう。確認として名前を聞かれるので、誤りがなければ返事をします。
問題なければ小選挙区用の投票用紙が渡されるので、記入ブースに向かってください。
小選挙区|立候補者名を記載
小選挙区の投票用紙には、該当の選挙区に立候補している人物の名前を書きます。誰が立候補しているか分からなくても、ブースに候補者の名前があるので適宜参考にしてください。
投票用紙に記入したら、必ず「小選挙区用」の投票箱に投函しましょう。
小選挙区の意図
小選挙区では、選ばれた人がそのまま衆議院議員になるといった効果があります。選ばれなかったら無職同然の扱いとなるため、政治家たちも必死で活動しています。
衆議院において小選挙区の議席数はわずか289名です。それぞれの選挙区に分類すると、1人ずつしか当選できません。
したがって自分の選んだ人が当選する確率も低くなり、死票が増えるといったデメリットもあります。要するに小選挙区は、国民の意見が反映されにくい制度です。
比例代表|政党名を記載
小選挙区の投函が終わったら、次に比例代表の投票用紙を貰います。比例代表は個人名ではなく、自分の支持している政党名を記載する制度です。こちらもブースに候補が記載されているので、落ち着いて確認してください。
政党名はフルネームではなく、略称での記載も可能です。しかし立憲民主党と国民民主党は、いずれも略称名を「民主党」として提出しています。
この場合は、なるべく正式名称を記載したほうが望ましいでしょう(略称で書くと両方に票が分かれるという形になる)。記入が終わったら「比例代表用」の投票箱に入れます。
比例代表の意図
比例代表の意図は、小選挙区で敗れた議員を復活させるための枠を設けることです。選挙区を全国11区に分け、合計で176人の議員を選びます。
上述したとおり小選挙区の場合、1人しか選ばれないので死票が増えてしまいます。復活枠を設けることで、より多くの国民の意思を反映させるのが狙いです。
ドント式(方式)の仕組み
衆議院総選挙の比例代表制においては、ドント式が採用されています。例えば合計300票の得票数が、以下のように分類されていたとしましょう。
- A党:150票
- B党:120票
- C党:30票
さらに比例代表での当選者は、10人とここでは仮定します。
A党が一番多くの票を獲得していますが、B党やC党にも得票数に応じて議席が設けられます。
その方法は、「÷1→÷2→÷3……」と「1」ずつ数を増やし、得票数に割り算をすることです。実際に表を用いて解説しましょう。
得票数 | A党(150票) | B党(120票) | C党(30票) |
---|---|---|---|
÷1 | 150 | 120 | 30 |
÷2 | 75 | 60 | 15 |
÷3 | 50 | 40 | 10 |
÷4 | 37.5 | 30 | 7.5 |
÷5 | 30 | 24 | 6 |
次に表全体から数字の大きいものを復活者数分マークします。
すると以下のようにA党は5つ、B党は4つ、C党は1つマークが付くはずです。
得票数 | A党(150票) | B党(120票) | C党(30票) |
---|---|---|---|
÷1 | 150 | 120 | 30 |
÷2 | 75 | 60 | 15 |
÷3 | 50 | 40 | 10 |
÷4 | 37.5 | 30 | 7.5 |
÷5 | 30 | 24 | 6 |
復活者数 (計10人) |
5人 | 4人 | 1人 |
以上から復活できる人数はA党(5人)、B党(4人)、C党(1人)となります。
国民審査|✕を書く
比例代表の記入も終わったら、最後に国民審査の投票用紙を記載しましょう。国民審査とは、最高裁判官の罷免(クビに)するかどうかを私たちの手で決めることです。
その特性上、投票用紙にはすでに最高裁判官の名称が記載されており、クビにしたい人物の欄に「✕」を記入する形となります。
ここで記入すべきものは「✕」です。「◯」や「✓」は原則として無効となるので注意してください。
とはいえ最高裁判官がこれまでどのような働きをしたか、あまり分からない人のほうが多いでしょう。NHKのサイトにアクセスすれば、一人ひとりの関わってきた裁判をチェックできるので、投票前にある程度目を通してみるのをおすすめします。
国民審査の意図
最高裁判官の国民審査は、憲法79条にも規定されている事項です。法律で定めたうえで制度を実施し、日本では「最高裁判所裁判官国民審査法」に基づいて行われます。
対象となる最高裁判官は、以下の2通りに分けられます。
- 最高裁判官に就任後、国民審査を受けていない
- 国民審査から10年以上経過した
要するに国民審査をクリアした場合、10年間はクビになる心配がありません。2024年10月総選挙では、6人が対象になります。
今まで罷免されたケースはありませんが、「✕」が過半数集まると効果を発動します。司法の秩序を守るために、国民審査もよく考えて投票してください。
解散総選挙のまとめ
この記事では、解散総選挙のやり方について意図とともに詳しく解説しました。
特に2024年10月総選挙は、内閣総理大臣が交代してすぐ開催された珍しい例です。どの政党が望ましいと思うか、自分なりによく考えて投票しましょう。
たとえ小選挙区で支持する人物が選ばれなくとも、比例代表の復活枠でも自身の意思が反映されます。決して自分の一票が無駄になることはありません。
どうしても投票日に予定がある場合は、期日前投票をするとよいでしょう。選挙に行かないという選択肢は、できる限り避けるようにしてください。