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留置権の具体例について|民法の規定と不動産における取り扱い

担保物権の中でも、特に具体例をイメージしやすいのが留置権です。国家公務員を中心に、出題されやすいポイントになるので勉強を重ねる必要はあります。

ここでは留置権の具体例とともに、民法の規定と不動産における関係性も踏まえて解説しましょう。

 

留置権とその具体例

留置権の仕組みがイメージできるように示した図

まずは、留置権の定義とその具体例について解説します。勉強する際には、最初にイメージをしておくことが大事なので内容をチェックしてみてください。

留置権の定義

留置権とは、債権の弁済を受けるまで他人の占有物を留置できる権利のことです。担保物権のひとつとして民法に規定されています。

他人の占有物を留置することで、弁済を急がせる効果があります。ただし手元に置ける権利しか認められておらず、他の債権者に優先するわけではないのも特徴です。

留置権は付従性を持つため、債権が発生しないと効力を発揮しません。また債権が第三者に譲渡されると、権利も移動する随伴性も有しています。

さらに不可分性もあるものの、他の担保物権とは異なり物上代位性を持ちません。物の価値に担保をかけるわけではなく、あくまで留置することで弁済を促す権利にすぎないからです。

なお留置権の性質や法律上の効力については、以下の記事でもまとめているので参照してみてください。

留置権の具体例

ここで、留置権の具体例を2つほど紹介しましょう。主にどのようなケースが考えられるかを押さえてください。

契約によって生じる

まずは、契約によって留置権が生じたときです。例えば、時計屋に修理してもらうために所有者Aが腕時計を預けたとします。

時計屋の修理も無事に完了し、後はAから代金を払ってもらうだけです。しかしAがなかなか代金を振り込んでくれなかったとしましょう。

この場合は、支払いが完了するまで時計屋が腕時計を自分の元に置くことができます。留置権を説明する際に、よく使われる具体例のひとつです。

契約以外の行為で生じる

留置権は債権が前提にあることが条件ですが、契約に限定して生じるわけではありません。契約以外の行為によっても、効力を発揮できるケースもあります。

その具体例として挙げられるのが、2人の人物がお互いの所有物を間違えて持って行ったときです。

例えばAとBが、走って移動していたところお互いにぶつかったとします。2人ともその場で倒れたあと、起き上がって地面に落ちているカバンを拾いました。

しかし、それぞれが相手のカバンを持って帰宅したとします。お互いの勘違いで生まれたケースですが、この場合も留置権が生じます。

つまり相手がカバンを返すまで、それぞれが自分の元で管理することが可能です。このように契約以外のケースでも、留置権を行使できるのを忘れないでください。

 

 

留置権の重要なルール

次に留置権を行使する際に、基本となるルールを解説します。この内容も問われるケースは多いので、公務員試験の受験者は目を通しておく必要があります。

目的物の占有と善管注意義務

留置権の効力を発揮できるのは、目的物を占有している間だけです。目的物を誰かに譲渡したり、盗まれたりしたら消滅すると考えられています。

また目的物に関しては、必ずしも相手方の所有物である必要はありません。第三者の物でも、留置権を行使できるとするのが民法上のルールです。

加えて、物を占有する際には善管注意義務が働きます。債務者の了承がない場合は、目的物を勝手に使用することも許されません(保存に必要な範囲の場合は除く)。

こうしたルールに留置権者が背いた場合は、権利が消滅すると民法に定められています。

不法行為による占有はNG

他人の物を占有しても、それが不法行為である場合は留置権の成立は認められません。具体例を挙げるならば、以前相手方から盗んだ目的物であるときです。

留置権を認めてしまうと、かえって当事者間で不公平な状況を生んでしまいます。公序良俗上よろしくない点も踏まえれば、理解はしやすいかと思います。

弁済期の到来と関連性

留置権は、債権の弁済期が到来してはじめて成立する権利です。弁済期前の状態であれば、権利を行使できないことも覚えてください。

こちらは民法295条1項のただし書きにも明記されています。

加えて、債権と留置権はお互いに関連性のあるものでなくてはなりません。相互に関連のあることを、「債権と物の牽連性」とも呼びます。

そのため腕時計の修理に関して、相手方の持っている宝石を留置する行為はNGです。

消滅時効との関連性

たとえ相手の目的物を留置していても、その行為を理由に債権の消滅時効の進行を妨げられない点もルールのひとつです。

基本的に民法の契約では、時効が定められています。消滅時効の一般的な期間は知ったときから5年、債権が生じたときから10年です。

仮に留置を続けていても、消滅時効が経過したら債権は消滅します。留置権には付従性があるため、債権が消えたら留置権も権利を行使できなくなります

本当は留置権の抗弁などと細かいケースもあるのですが、公務員試験ではとりあえずこの規定だけを覚えておくといいでしょう。

果実と不当利得の規定

公務員試験の内容としては少し深堀りした内容かもしれませんが、果実と不当利得の規定も紹介します。

果実とは、物を占有している場合に得られる収益のことです。果実の種類には、大きく分けて天然果実と法定果実があります。

苗木を留置していたら、その木に果物がなったときが主な例です。

基本的に果実は、少額の利益しか得られません。したがって、果実の分もあわせて債権に充当できると規定されています(民法297条)。

ただし果実には該当しない利益を得られた場合は、不当利得として相手方に返還しなければなりません。

留置権は原則物を手元に置けるだけの権利であり、利益を得るのを目的にはしていないためです。果実の定義については、以下の記事でもまとめているので参考にしてください。

 

 

留置権にかかる有名な判例

留置権が成立するか否かは、これまでも数々の裁判で争われてきました。ここでは、公務員試験でも扱われるほどの有名な判例を紹介します。

必要費を賃借人が支出

アパートなどの賃貸借契約の場合、必要費や有益費については賃貸人側が払うのがルールです。

もし事情があって賃借人側が支出した場合、その分の支払いを家主側からされない場合はアパートを留置できます。

この場合は建物のみに留置権の効力が及ぶとされ、敷地については認められていません。必要費や有益費は、あくまで建物のみに生じた債権であるためです。

なお、賃貸借契約が解除されたあとの分については留置権の効力は及びません。

建物の買取りを請求した

アパートなどの賃貸借契約を結び、そのまま借地人の建物買取請求権が有効に成立したときも留置権の効果が及びます。

賃借人がお金を払わない間は、賃貸人はアパートを明け渡す必要がありません。

このケースでは、必要費と有益費の支払いと異なり建物と敷地の双方に権力を行使できるのが判例の見解です。

建物は、土地があってはじめて使用できます。敷地に留置権を認めなければ、土地だけ買収されて結果的に建物も収去されてしまいます。

このような理由にも目を通しつつ、判例の見解を覚えておくといいでしょう。

造作買取請求権

造作買取請求権とは、賃借人が借りているアパートに取り付けた畳や電気などの造作を、賃貸人に時価で買い取らせる権利のことです。

この権利が認められれば、原状回復における費用の足しになります。

しかし造作買取請求権を盾に、アパートを留置する行為は認められません。建物にかかる債権とは、また別の話であるからです。

敷金返還請求権

今では敷金が0円の物件も結構見られますが、基本的にアパートの契約をするときは管理人へ敷金を預かってもらいます。

こちらのお金は、退去時に修繕が必要な箇所が見つかった場合、直すための費用として使ってもらう分です。

アパートをキレイに使い、敷金に手を付ける必要がなかったらその分は返還してもらえます。

しかし仮に敷金が返還されなくとも、アパートを留置する行為は許されません

不動産の二重売買

例えば、Aが甲から持ち家を購入したとします。一方で手続きの途中で、甲はBに対しても同様に不動産の売買契約を結びました。

このような二重売買の被害を負った買主は、売主に対して損害賠償ができるケースもあります。

しかしこの損害賠償においても、建物に対する留置権が認められないとするのが最高裁判所の見解です。

 

留置権は公務員試験対策でも重要な分野

今回の記事では、担保物権のひとつである留置権を具体例もあわせて解説しました。

留置権の内容はそこまで複雑でもありませんが、覚えなくてはならない知識が数多くあります。

これらの知識を確実に覚えるためにも、具体例を自分なりに工夫してイメージすることが重要です。

民法上の規定のみならず、最高裁判所の判例も出題されます。ただし公務員試験は科目数があまりにも多いので、必要最低限の部分を優先して覚えるようにしてください。