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占有権と所有権の違い!盗まれた物を取り返したら犯罪?




占有と所有ってあるけど、これって同じ意味なの?

 




いや、意味は全くもって異なるよ!
占有と所有の違いを見ていこう!

 

どーも、ヤマトノです。

今回は、公務員試験や日常生活でも使える民法の話について紹介します。

皆さんも普段の生活で、占有権や所有権という言葉を聞いたことがあるかと思います。

両者の意味は似ているものの、違いを押さえないとトラブルになる可能性もあるため注意が必要です。

この記事では、占有権と所有権の違いを解説します。

日常的に起こるトラブルを例にした問題も出すため、ぜひ最後まで読んでみてください。

 

占有権と所有権の違い

占有権と所有権の違いは、端的にいえば物を支配する範囲です。

占有権は、あくまで「いま現在、物を持っている」といった事実的な支配でしかありません。

太郎くんが花子さんの傘を借り、家に置いていたら占有者は太郎くんです。

一方で、所有権は物の全面的に支配する権利を持つ人を指します。上述の傘の例では、本当の持ち主である花子さんが所有者です。

実際に具体例を当てはめていけば、両者の違いは簡単に理解できるでしょう。

 

 

占有権の種類

占有権には、大きく分けて自主占有と他主占有があります。それぞれの意味を押さえてください。

自主占有

自主占有とは、所有の意思に基づいて物を占有することです。

皆さんが普段携帯しているスマホは、基本的に自分の物だと認識しているでしょう。

自主占有に該当するケースのひとつです。

他主占有

他主占有は、所有の意思に基づかない占有を指します。

先程の傘の例では、太郎くんは花子さんの傘と認識しているため、他主占有にあたります。

では、仮に太郎くんが花子さんの傘を借りパクしようとしたら、どのように判断されるでしょうか。

あくまで自主占有か他主占有かは、占有者の意思に基づきます。

たとえ窃盗でも、自分の物にしようとしているため分類上は自主占有です。

代理占有

他にも、本人が代理人を介して間接的に物を占有するケースもあります。

先程、太郎くんと花子さんで傘の貸し借りを例に出しました。

この例では、実際に傘を持つ太郎くんが自主占有している状態です。

一方で、花子さんが太郎くんに「傘を持っていてほしい」と依頼したとしましょう。

つまり、花子さんは太郎くんを通して代理占有しているといえます。

 

盗まれた物は取り返せる?




なぜかあの家に盗まれた自転車が…!
取り返すぞ!

 




待って!
「自力救済禁止」で取り返せないよ!

 




え?取り返したらダメなの?

 

皆さんも、コンビニに傘を置いていたら、知らない人に盗まれた経験があると思います。

傘なら新しい物を買えばいいですが、自転車になると話は変わってくるはずです。

もし、盗まれた自転車が見知らぬ人の家に置いてあったら、コッソリと取り返しても問題ないのでしょうか。

ここでは、その答えを紹介します。

取り返したら「窃盗罪」

盗まれた自転車をコッソリと取り返した場合、残念ながら「窃盗罪」の対象です。

刑法の話になりますが、窃盗罪は所有権ではなく「占有権」をベースに考えます。

そのため、たとえ盗まれた物であったとしても、占有権が他人にあれば奪い返してはいけません。自力救済禁止の原則です。

ただし、自転車を盗まれそうになって取り返す分には問題ありません。

なぜなら、この場合は完全に占有権が自分から離れたとはいえないからです。

占有権を失った状態で、たとえ盗まれた自転車を発見しても、警察に通報するなどの手段を講じましょう。

占有権と盗品の関係

次に、盗まれた物が誰かの手に渡っていた場合を想定します。

このとき、所有権者は自分に返すよう請求できるでしょうか

ケースバイケースで対応が変わるため、しっかりと区別して覚えてください。

原則2年以内ならOK

自らに所有権のある物であれば、原則2年以内なら返すよう請求できます。

民法第193条の規定ですね。

民法193条

前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

条文引用:e-Gov法令検索

請求できる人物は所有権者にかかわらず、賃借人(物を借りている人)や受寄者(物を預かる人)も含まれます。

なお、物が盗まれてから2年間は、元々の所有者が変わらず所有権を持ちます。

賃借人や受寄者が被害者の場合、本来の所有者が返還請求できないのは不合理であるためです。

公の市場や競売等の例外

状況によっては、2年間以内に請求しても費用を払わないと物が戻ってこないケースもあります。

主なケースは次のとおりです。

  • 公の市場で入手した物
  • 競売
  • 商人から買い受けた物

例えば、Aさんが「カメラ」を誰かに盗まれたとします。

泥棒は、盗んだカメラをメルカリで転売し、盗品とは知らないBさんが購入しました。

この場合、AさんはBさんに代金を弁償しなければ返還してもらえません。民法第194条に示されています。

民法194条

占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。

条文引用:e-Gov法令検索

代金の支払いがない場合は、引き続きBさんがカメラを使用できます

たとえ盗まれた物といえども、民法のルールは想像以上に複雑なのです。

 

まとめ

今回は、民法より占有権と所有権の違いについて解説しました。

基本的に物を手元に持っている方は、占有者と呼ばれます。

しかし、必ずしも「占有者=所有者」となるわけではありません

物が全く別の人に渡っても、すぐさま所有権が奪われるわけではない点を押さえましょう。

占有権と所有権の違いを明確にしないと、物権の内容を勉強するときに整理できなくなります。

公務員試験や宅建試験では、民法は鬼門といわれるほど難しい科目です。

複雑な内容に対応するためにも、今回の内容はすぐにイメージできるよう反復を重ねてください。