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代理とは?法定代理と任意代理の違い|公務員試験

公務員試験の民法では、代理も頻繁に出題されやすい分野のひとつです。こちらは債権の内容にも深く関わってくるので、勉強しておいて損がない範囲ともいえます。

今回は、代理の基本的な内容である法定代理と任意代理の違いを説明します。公務員試験に加えて、宅建試験や行政書士試験を受験される予定の方も参考にしてください。

 

代理とは

代理の仕組み(本人・相手方・代理人)の関係をわかりやすく説明した図

代理とは、本人の行為を代理人が代わりに行うことです。日常生活でも、代理で何か手続きをするケースがあるでしょう。民法では、この場合のルールを定めています。

代理の効果

代理人が「本人のためにする」ことを示した意思表示は、原則として本人に効果が帰属します。この「本人のためにする」という意思表示を顕名(けんめい)と呼ぶので押さえてください。

ただし代理行為に瑕疵があったときは、代理人の行為を基準に判断されます。このあたりの細かいルールもしっかりと覚えておくとよいでしょう。

顕名をしなかった場合

代理人が「自分の利益にしよう」と顕名をしなかった場合、意思表示は代理人自身のために行ったと判断されます。相手方の取引の安全を優先的に守るためです。しかし相手方が代理人の意思を知っていた、もしくは知ることができた場合は本人に効果が帰属します。

代理人の行為能力

本人は、代理人が制限行為能力者であるのを理由に、法律行為の取り消しはできません。結局効果は本人に帰属し、代理行為をした制限行為能力者に不利益はないからです。そのため未成年も代理人になれます。

しかし制限行為能力者が、別の制限行為能力者の代理人となったときは取り消しが可能です。

権限の定めのない代理

代理人の中には、権限の定めがないケースもあります。権限の定めがないとは、代理権の範囲が不明確であるときです。権限をしっかりと決めていなければ、本人に不都合が生じる場合もあるので民法で未然に内容を決めているわけです。

権限の定めがないときは、以下の行為のみ権限を有すると定められています。

権限を持つ行為 具体例
保存行為 建物の修繕
利用行為 債務の弁済(弁済期到来した)
改良行為 家に設備を新たに設置

 

 

法定代理と任意代理の違い

代理には大きく分けて2種類あります。

  • 法定代理
  • 任意代理

では、法定代理と任意代理はそれぞれどのように違うのか解説していきましょう!

代理人の決め方に違いがある

ここで法定代理と任意代理の決め方の違いについて解説します。

それぞれの法律上の定義をしっかりと押さえなければなりません。具体例も覚えておくと、理解が深まりやすくなるためおすすめです。

法定代理は「法律」に基づいて決まる

法定代理とは、その名の通り法律で既に代理人を定める制度です。

制限行為能力者の保護者は、法定代理人の代表的な例のひとつです。つまり、次にあてはまる人物は法定代理人と位置づけられます。

  • 未成年者の両親
  • 後見人や保佐人、補助人

法律に沿って定められる仕組みであり、ルールは比較的厳格です。

後見人を辞める場合には、家庭裁判所の許可をもらわなければなりません。このときは、正当な理由が必要とされています。

制限行為能力者の内容については、こちらの記事でも触れているので参考にしてください。

任意代理は比較的自由に決められる

任意代理は、本人が代理人を自分で決められる制度です。自動的に決まる仕組みではなく、状況に応じて関係性が解消されるケースもあります。

具体例を挙げれば、以下の職業の方々が該当します。

  • 弁護士
  • 司法書士

任意代理の基本となるものは「契約」です。民法では「契約自由の原則」があるため、法定代理人よりも厳格ではありません。

しかし、一度代理人の立場になった以上は責任も発生します。勝手に職務を放棄すれば、賠償問題にもつながるため注意しましょう。

制度の目的の違い

法定代理と任意代理には、制度の目的に大きな違いが見られます。この内容を押さえておくだけでも、具体的な仕組みを明確に把握できるはずです。同じく、法定代理と任意代理に分けて制度の目的を解説します。

法定代理は制限行為能力者の補助

法定代理の目的は「制限行為能力者の補助」にあります。

上記でも簡単に触れたとおり、制限行為能力者とは精神的な障害により行為が制限されている方を指します。

特に民法上で懸念しているポイントは経済面です。お金を浪費しないよう、補助する人物がサポートしなければなりません。

制限行為能力者が法律行為を進められるよう、法定代理が設けられました。具体例などは上述しているため、振り返ってみてください。

任意代理は活動範囲を広げる

任意代理の目的は、活動範囲を広げることです。言葉の意味がわかりづらいため、具体例を挙げて説明しましょう。

民法の法律行為は、基本的に難しいものばかりです。

  • 登記(家の購入時)
  • 会社の決算書

書類も非常に多く、素人が簡単に着手できるものではありません。しかし、こうした手続も私生活で求められるケースがあります。

そこで、全員がこれらの行為をできるよう定められた制度が任意代理です。司法書士や会計士などのプロが代理人となり、代わりに書類を作成します。

このように法定代理と任意代理の違いは目的にも見られます。それぞれを押さえておけば、代理の制度を知るうえでも役立つはずです。

復代理人の選び方の違い

ほかにも法定代理と任意代理で、復代理人の選び方が異なります。

復代理人とは、代理人を代理する人です。代理人が病気になった場合、復代理人を任命することで生活に支障をきたさないように選ばれます。

仕組みは代理人の代理ですが、目的はあくまで本人のためです。

ちなみに代理人は復代理人を選んでも、代理人としてのポジションを失うわけではありません。それぞれで本人を代理する関係となります。

復代理人の権限は、代理人が元々担っていた範囲内のみです。代理人の代理権が消滅すると、復代理人の権限も失います。

ここまで内容を説明したうえで、選び方がどのように異なるかを解説しましょう。

法定代理は自由に選べる

法定代理の場合は、自由に復代理人を選ぶことができます。

なぜなら、法定代理人は自分の意思に関わらず選任される可能性があるからです。代理人が復代理人を選んだら、復代理人の行為すべてにおいて責任を持ちます。

だから、復代理人がやらかした場合は法定代理人もともに責任を負わなければなりません。

しかし、状況によってはやむを得ない事情で復代理人を選任することもあるでしょう。その際には、復代理人における選任監督にのみ責任を持ちます。

任意代理は条件がある

任意代理は、次の条件において復代理人を選任できます。

  • 本人の許諾を得た
  • やむを得ない事由

任意代理の場合は、本人との信頼関係を基に代理が成立します。そのため、簡単に復代理を選べる環境は避けなければなりません。

代理人が負う責任は復代理人の行為すべてです。

ここで「あれ?」と疑問に感じた方もいるでしょう。なぜなら2020年の民法大改正前は『復代理人の選任・監督のみ』とされていたからです。

復代理人を選ぶ際の条件が限定的であるため、任意代理人の負担を軽減するという目的があったからでした。

ただし、復代理人の行為は本人と代理人の間の債務不履行問題で処理すれば問題ないと考え直し、すべての行為に責任を持つように改正されたのです。

 

 

代理は基本を重点的に勉強

代理の範囲は、基本的な内容でも覚える内容が多いです。応用問題が気になる気持ちもわかりますが、まずは条文の内容をしっかりと理解できるようにしましょう

特に法定代理人と任意代理人の違いは、公務員試験でも問われやすい内容のひとつです。法改正も絡んでいるので、公務員試験用のテキストは最新のものにしてください。

最後に法定代理と任意代理の内容を整理しましょう。

◆法定代理と任意代理の目的の違い◆
・法定代理→制限行為能力者の保護
・任意代理→本人の行為を拡張させる

 

◆法定代理・任意代理と復代理◆
・法定代理→自由に復代理人を選べる。
責任は原則すべての行為、やむを得ない事由であれば選任と監督のみ

・任意代理→本人の許諾・やむを得ない事由があるときに選べる
責任はすべての行為