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債権とは?目的や種類とともに債務者の注意義務も押さえよう

民法の第3章に規定されている内容が債権です。債権は私たちの生活でも身近に存在します。

この記事では、債権の目的や種類について元公務員である筆者が解説します。公務員試験でも重要なポイントになるので、債権者と債務者の関係もしっかりと押さえてください。

◆記事を読むと分かること◆
・「債権の目的」の意味
・善管注意義務の内容
・債権にはどのような種類があるか

 

 

債権とは

債権とは、債権者が債務者に対して特定の行為を要求できる権利を指します。債権者は要求する権利を持っている者、債務者は要求に従う義務を負う者です。

ここでは、具体例も用いながら仕組みをわかりやすく説明しましょう。

債権の具体例

例えば、ある会社が個人事業主に対してポスター用のイラスト作成を依頼します。お金が仮払いで振り込まれ、契約が成立したとしましょう。

個人事業主側は、期日までにイラストを作成しなければなりません。このときのイラスト作成を要求する会社が債権者、作成する側の個人事業主が債務者です。

ここでは分かりやすく振込がすでに完了している状態を例に出しましたが、基本的には作品の提供と支払いは同時に行われます。

イラストを描いたにもかかわらず向こうがお金を払わない場合は、提供しなくても問題ありません同時履行の抗弁権

このように債権ではさまざまな権利も存在します。

債権の目的

債権が目的とするのは、財産関係のみではありません。金銭に見積もることができないタイプも、債権の目的となります。

第399条

債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。

民法 | e-Gov法令検索

しかし、旧民法では金銭のみが対象となっていました。しかし、金銭に限定すると今の社会には合わないことから、対象が広げられています。

学問的には「債権の目的」と名付けられていますが、目標や動機の意味を指すわけではありません。

この場合の目的は、あくまで「債務者の給付や行為」を指します。法律は海外の言葉を直訳したものも多く、日常生活での使い方とは意味が異なる場合が結構見られるので注意しましょう。

債権の成立要件

債権には、大きく分けて3つの成立要件が存在します。

  • 適法性
  • 可能性
  • 確定性

適法性とは、給付の内容が法律や公序良俗に反しないことです。仮に麻薬を売買契約を破っても、債権が成立しないので債務不履行にはなりません。

可能性は、給付が実現可能であることです。「空に浮かんでいる雲を取ってほしい」という契約は実現できないため、債権は成立しないと考えてください。

確定性は、給付の内容がしっかりと確定している状態を指します。うやむやな状態だとトラブルに繋がるため、費用を物を決めるように定められています。

 

債権の注意義務

債務の給付を行ううえでは、注意義務を果たさなければなりません。ここでは、債権の注意義務について解説します。重要な内容になるので、しっかりと押さえてください。

善管注意義務

仮に債権の内容が、車の引渡しとしましょう。ある人が車屋から車を購入する場合、ディーラーは当然ながら目的物を慎重に管理する必要があります。

傷を付けたり、必要な機能を付け忘れたりすると価値が低い状態で手渡すようになるでしょう。この状態では、債務を正しく履行したとはいえません。

そのため、一般的に債務者は善良な管理者の注意を持って管理しなければなりません。この義務が善管注意義務です。

善良な管理者の注意とは、常識に照らし合わせて一般的かつ平均人として要求される注意を指します。

仮に履行期を経過し、履行遅滞に陥っても善管注意義務は守る必要があります。しかし債権者が受け取らない場合(受領遅滞)、善管注意義務はある程度軽減されます。

この場合に責任が生じるのは、故意または重過失がある場合のみです。

自己の財産と同一の注意義務

契約の内容によっては、善管注意義務が軽減されるケースもあります。主な例が以下のとおりです。

  • 無償の受寄者
  • 親権者との契約
  • 相続放棄者
  • 限定承認者

上記の例に該当すれば自己の財産と同一の注意義務さえ持てばいいとされています。

仮に不注意で物を破損させても、余程の過失(重過失)がない限り損害賠償は負いません。

 

 

債権の種類

債権にはさまざまな種類が存在します。民法でも種類ごとに規定があり、独自の扱い方があるのが特徴です。ここでは、特に重要な債権について紹介しましょう。

金銭債権

債権の一般的な例が金銭債権です。読んで字のごとく、お金関係に関する債権を指します。

お金の特徴は、物と比べてやや抽象的な概念であることです。そのため、特定のルールがない限りは外国の通貨でも債務を履行したとみなされます。

ただし、自身の使っている通貨が何の効力を持たない場合は対象外です(ほぼ認知されていない仮想通貨など)。

種類債権

種類債権とは、同じ物がいくつかある中から一定の量を引き渡す債権のことです。目的物となった(引き渡される)物は種類物と呼ばれています。例えば、10個ある缶づめの中から1個を渡すような行為が該当します。

種類債権で重要なポイントが特定です。債務を履行するには、複数ある物から一定量を選ばなければ引き渡せません。しかし、特定がどの段階で生じるかがポイントとなります。

持参債務と特定

持参債務は、債務者自らが債権者のもとへ種類物を引き渡す行為です。出前で弁当を注文して、家まで持ってきてもらう行為が該当します。

持参債務で種類債権が特定されるタイミングは、実際に債権者の住所で物を提供したときです。債務者は、家に届けるまで善管注意義務を負います。

取立債務と特定

取立債務は、債権者が目的物を取りに行く債務です。単純にコンビニで買い物する行為が、主な例として挙げられます。

こちらの債務であれば、種類債権が特定されるのは債務者が目的物を分離した段階です。渡す準備を整えて、債権者に通知したら種類物が特定されます

送付債務と特定

送付債務は、債権者の住所地以外に物を届ける債務を指します。

債務が特定されるタイミングは、通常であれば履行地に目的物を送り、履行の提供が完了したときです。

しかし、送付債務が債務者の意向で行われた場合は「発送した時点で特定される」と考えます。

このタイミングの違いにより、権利や義務の適用時期が変わるのが特徴です。

選択債権

選択債権とは、複数の給付の中から特定の種類を選ぶ方法です。選択権を持つのは、特に合意がないのであれば債務者です。ただし、基本的には話し合いで行われます。

状況によっては、第三者が選択権を持つケースもあります。このケースにおいて選ぶ際には、債権者や債務者に対して意思表示しなければなりません。第三者が選択できず、または意思を持たない場合は債務者に権利が移転します。

また選ぼうとしたものの、複数の中の一つが給付できない状態になる場合もあるでしょう(ビール瓶が割れたなど)。

この原因が選択権を持つ者の過失であれば、現在残っている物の中から選びます。

一方で、選択権を持つ者以外の過失の場合は当然には特定されません。要するに、不能の状態となった債権を選択することも可能です(相手は修繕するか、同一の物を持ってくる)

利息債権

利息債権は、利息の支払いを求める債権のことです。まずは、利息の内容を説明しつつ利息債権の種類も取り上げましょう。

利息=存続期間分の対価

利息とは、元本が存続する期間に付随する対価を指します。私たちは、普段の生活で銀行を利用しているはずです。銀行で預金をしていると、利息が振り込まれるでしょう。

このときの利息は「いつも当行を利用してくれてありがとう」という銀行からの対価です。金額については、主に利率から算定します。

利率の計算方法は大きく分けて2種類あります。

  • 法定利率
  • 約定利率

法定利率は、民法第404条に定められる利率のことです。原則として年3%に設定されます。年3回の頻度で細かく見直されている点に注意が必要です。

しかし、民法は原則契約の自由を採用しています。そのため法定利率も、必ずしも守らないといけないルールではありません。

契約の内容によっては、年3%より高い利率を設定することも可能です。こうした契約により、決まる利率は約定利率と呼ばれています。

基本権たる利息債権

利息債権には大きく2種類があり、そのうちの一つが基本権たる利息債権です。こちらは一定期間ごとに一定の利息を発生させる債権を指します。

この種類の特徴は、元本に対して付従性と随伴性を有している点です。付従性と随伴性は、以下のように言い換えられます。

  • 付従性…元本発生・消滅とともに現れたり消えたりする
  • 随伴性…第三者に渡ると一緒に付いてくる

これらの内容は、担保物権や保証債務にも出てくるのでしっかりと押さえましょう。

支分権たる利息債権

支分権たる利息債権は、基本権たる利息債権に基づいて生じる利息債権です。元本ではなく、あくまで基本権たる利息債権が存在することで発生します。

定義の説明だけだと分かりづらいので、具体例を用いて説明しましょう。

例えば、Aさんが元本10万円を保有していたとします。計算しやすいように利率を10%と捉えてください。

しかし、1年後に10万円をBさんへ譲渡しました。このときの利息の関係を説明します。

元本に付随する基本権たる利息債権は、Bさんの元へ譲渡されます。したがって、2年後や3年後といった将来の利息を貰う人はBさんです。

一方で、1年分の利息はすでに発生しています。元々10万円を保有していたのはAさんなので、この部分の利息債権は有してなければ辻褄(つじつま)が合いません。

そこで生まれた概念が支分権たる利息債権です。支分権たる利息債権の観点でみれば、基本権たる利息債権の効果を得られるAさんに1年分の利息が支給されます

Bさんに権利が移転していないことから、支分権たる利息債権は随伴性を持っていない種類だとわかります。

 

まとめ

今回は、民法第3章の基本である債権の仕組みについて紹介しました。まずは、債権の目的と種類をしっかりと押さえてください。さらに善管注意義務も、今後の内容で出題されやすいテーマの一つです。

民法はボリューミーな内容ですが、覚えておくと実生活にも役立ちます。第1章〜第5章の全てがリンクしているので、重要な内容からはじめに勉強しましょう。