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所得の種類の一覧を紹介!課税方法も合わせて押さえよう

私たちの生活において、欠かせない概念のひとつが所得です。ただし、所得にはさまざまな種類があるので、全てを区別させて覚えなければなりません。

この記事では、所得の10種類の一覧をFP2級保持者である筆者が解説します。計算方法にも触れるので、実生活やFP試験で生かしてください。

 

◆以下の方におすすめの記事です◆
・所得10種類の仕組みを知りたい
・総合課税や申告分離課税の違いを知りたい
・損益通算のルールを知りたい

 

 

所得10種類の一覧

所得には、大きく分けて10つの種類があります。

  • 譲渡所得
  • 配当所得
  • 利子所得
  • 給与所得
  • 事業所得
  • 退職所得
  • 不動産所得
  • 一時所得
  • 山林所得
  • 雑所得

それぞれの仕組みと計算方法について紹介しましょう。

譲渡所得

譲渡所得は、株や不動産を売却(譲渡)したときに得られる所得のことです。投資をやっている人は、身近に感じる種類だと思います。

所有期間が5年以下だと短期譲渡所得、5年超は長期譲渡所得に分類されます。計算方法も、譲渡する物によって異なるのが特徴です。

例えば、株式であれば以下のように計算されます。

総収入−(取得費+譲渡費用+利子)

土地や建物、それ以外の物であれば計算式は次のとおりです。

総収入−(取得費+譲渡費用)−特別控除額

譲渡費用は、売却する際に直接かかった費用を指します。不動産であれば、仲介手数料や立退料が該当します。

なお土地・建物・株式は申告分離課税で申告しなければなりません。それ以外のものは、総合課税の対象です(課税方法の仕組みは後述します)。

配当所得

配当所得は、株や投資信託の配当金として貰える分の所得です。株式を発行している企業は、利益の一部を配当金として還元しなければなりません。投資家は、その利益を配当金にカウントします。

配当所得の計算方法は以下のとおりです。

総収入−株式を取得するための利子

基本的に上場株式は源泉徴収されるため、確定申告する必要はありません。しかし、総合課税や申告分離課税で申告したほうが有利になる場合もあります。

総合課税の場合は、配当控除による節税が可能です(1,000万円以下)。一方で申告分離課税になると、損失分と損益通算ができます。

選ぶ際には、所得の状況をチェックしてください。

利子所得

利子所得は、預貯金や一般公社債などの利子にかかる所得を指します。

原則として20%が源泉徴収されて申告は完了します。確定申告は不要です。

ただし、特別公社債の利子であれば申告分離課税の制度も選べます。

給与所得

給与所得は、会社から得られる給料にかかる所得です。主にサラリーマンとして勤務されている方が該当します。給与所得の計算方法は次のとおりです。

給与所得=給与収入−給与所得控除額

控除額は収入によって計算方法が異なり、以下の表のように求められます。

給与等の収入金額(年収) 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%−10万円(最低55万円)
180万円超〜360万円 収入金額×30%+8万円
360万円超〜660万円 収入金額×20%+44万円
660万円超〜850万円 収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

原則として確定申告する必要はありません(収入が2,000万円超給与所得や退職所得以外の所得が20万円以上の方は必要)。

事業所得

事業所得は、個人事業主や農業を営んでいる方が得られる収入から算定します。計算方法は以下のとおりです。

総収入−必要経費−控除額(青色申告または白色申告)

必要経費は、事業を営むうえでかかった費用が該当します。

控除額は青色申告の方が55万円(e-TAXで申告した人は65万円)、白色申告が10万円です。

退職所得

退職金で得られた利益は、給与所得とは別に退職所得として換算します。退職所得の受給に関する申告書を提出すれば、確定申告する必要はありません。

計算方法は次のようになります。

(収入−控除額)×1/2

控除額は、勤続年数によって変わるのが特徴です。

  • 20年以下→40万円×勤続年数
  • 20年超→800万円+70万円×(勤続年数−20年)

なお死亡退職金で得られた収益に関しては、3年以内に確定したものは相続税にカウントされます。退職所得は、申告分離課税の対象です。

不動産所得

不動産所得は、土地や建物を貸し付けることで得られる利益から計算します。計算方法は、事業所得と同じです。

総収入−必要経費−控除額(青色申告または白色申告)

収入には家賃(地代)や礼金のほか、返還しない分の敷金および保証金も含まれます。

必要経費に該当するのは火災保険料や減価償却費、固定資産税などです。

事業として不動産の貸付を行っている場合も、不動産所得として税額が決まります。

一時所得

一時所得は、一時的に大きな収入が得られた際にカウントされる所得のことです。例えば、ギャンブルで遊んでいたら多額のお金を稼いだケースが挙げられます。

一時所得の計算方法はやや複雑で、次のように式が作られます。

総収入−収入を得るためにかかった費用−控除額(最高50万円)

確定申告をする際には、上記の式で求めた所得から1/2のみを計上します。

FP試験では、学科や実技ともに狙われやすい分野です。併せて総合課税に該当する点も押さえてください。

山林所得

山林所得は、山林の伐採や立木の譲渡で稼いだ所得を指します。計算方法は以下のとおりです。

総収入−必要経費−控除額(最高50万円)−青色(白色)申告控除

山林所得の場合は、申告分離課税として確定申告が必要となります。

雑所得

雑所得は、上記9つのいずれにも当てはまらない所得のことです。国民年金や暗号資産の売却益、素人が書いた小説の原稿料が該当します。

雑所得の計算方法は次の2点です。

  • 公的年金の収入−公的年金の控除額(公的年金)
  • 総収入−必要経費(公的年金以外)

雑所得を確定申告する場合は、総合課税となります。公的年金の控除額は65歳未満で最大60万円、65歳以上で最大110万円です。

 

課税方法について

所得税を申告する際には、大きく3つの種類に分類する必要があります。

  • 総合課税
  • 申告分離課税
  • 源泉分離課税

ただし、それぞれの意味が分からない人も数多くいるはずです。各課税方法の仕組みについて解説します。

総合課税

総合課税は、全ての種類を合算して計上する方法のことです。こちらの方法で申告する所得は以下のとおりです。

  • 譲渡所得(土地・建物や株式以外)
  • 配当所得(選択可)
  • 利子所得(一般)
  • 給与所得(該当者のみ)
  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 一時所得
  • 雑所得

例えば、事業で500万円稼いだ方が、不動産の貸付でも100万円の収益を得ていたとしましょう。

この場合は、それぞれを合算できるため600万円の所得として総合課税で申告します。

申告分離課税

申告分離課税は、他の所得とは合算できない点が大きなポイントです。主な例について同じく整理してみましょう。

  • 譲渡所得(土地・建物や株式)
  • 利子所得(特別公社債)
  • 退職所得
  • 山林所得

例えば、副業で事業にも取り組んでいたサラリーマンが200万円の事業所得を得ました。さらに会社を退職し、2,000万円の退職金を貰います。

この場合、退職金(退職所得)は申告分離課税となるため事業所得とは合算しません。確定申告書第三表で個別にまとめる必要があります。

源泉分離課税

源泉分離課税は、所得を得たタイミングに税額分が差し引かれるシステムです。総合課税や申告分離課税とは異なり、確定申告の必要はありません。

こちらは預貯金や一般公社債の利子所得のみが該当します。

 

 

損益通算とは

所得の確定申告については、損益通算も合わせて押さえておくことをおすすめします。損益通算とは、黒字と赤字が生じている場合に双方を相殺できる制度です。

節税において欠かせないシステムではあるものの、全ての所得でできるわけではありません。損益通算の対象となる所得一覧および方法について取り上げます。

他の所得と相殺できる種類

他の所得と損益通算ができる種類は次のとおりです。

  • 譲渡所得
  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 山林所得

これらの所得であれば、仮に損失が発生しても収益分とプラマイゼロにできます。

例えば事業所得で500万円の収益を出していた方が、所有しているアパートの火事によって不動産所得で−100万円の赤字を出しました。

不動産所得は、事業所得と損益通算ができるため400万円として計上できます。なお不動産所得と給与所得での損益通算も可能です(不動産所得が他の種類と相殺できるため)。

一方で、給与所得と一時所得の相殺については認められていません(どちらも本来は他の所得と損益通算できない)。

不動産所得の例外

損益通算ができる所得でも、一部相殺が認められていない種類も存在します。まずは、不動産所得から紹介しましょう。

不動産所得で損益通算ができないのは、土地の取得に必要だった借入金の利子です。必要経費に当該金額が含まれていた場合、除外して計算しなければなりません。

不動産所得が−100万円で、土地の取得に必要な借入金の利子が20万円の場合は、損益通算できる分は−80万円に限られます(-100+20)。

譲渡所得の例外

譲渡所得も、損益通算できない例がいくつか存在します。不動産所得より覚える内容が多いので、しっかりとチェックしてください。

  • 土地や建物の譲渡損失
  • 生活に必要のない資産(別荘やゴルフ会員権)
  • 株式の譲渡損失(※)

ここでは、※マークを付けた株式の譲渡損失について詳しく見ていきます。株式の譲渡損失は基本的に損益通算の対象外ですが、例外が細かく定められています。

まず上場株式と特別公社債の譲渡損失は、同一年の上場株式等であれば譲渡所得との損益通算が可能です。

他にも、申告分離課税を選んだ配当所得や利子所得(一部)の場合との損益通算も認められています。

確定申告を行えば、最大3年間で繰越控除(その年で控除し切れなかった分を翌年以降に相殺する制度)も可能です。

損益通算の順序

損益通算には、優先順位が存在します。複数の所得で利益と損失が発生した場合は、以下の順に対応しなければなりません。

  • 1.経常所得同士、一時的な所得同士
  • 2.経常所得と一時的な所得
  • 3.その他の所得

経常所得は常に発生する所得のことで、以下の内容が挙げられます。

  • 配当所得
  • 利子所得
  • 給与所得
  • 雑所得
  • 不動産所得
  • 事業所得

一時的な所得は、以下の2種類を指します。

  • 一時所得
  • 譲渡所得

太文字で書かれている所得は、他の種類と損益通算できるタイプです。まずは、経常所得のグループ、一時的な所得のグループ同士で損益通算を行います。

続いて、異なるグループ同士で所得を相殺します。例えば、事業所得(経常)と譲渡所得(一時)の場合です。

これらの相殺が完了したら、最後に余っている山林所得→退職所得の順番で損益通算をします。

 

まとめ

今回は、所得の種類を一覧形式で紹介しました。所得には10種類あることを押さえ、計算方法もFP試験前に理解してください。

また、課税方法も合わせて覚えておいた方が賢明です。特に申告分離課税や損益通算については、ややこしいルールも存在します。実生活にも活かせるので、じっくりと内容を確認するといいでしょう。