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高校生の扶養控除が一律縮小?児童手当とどちらが得なのか

2023年11月下旬、高校生の扶養控除を一律縮小させるといったニュースが流れてきました。このニュースを巡り、少子化が加速してしまうのではと不安の声が広がっています。

この記事では、高校生の扶養控除が一律縮小となる狙いや問題点について、FP2級の資格を持っている筆者が解説します。日本の制度についてしっかりと押さえてください。

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高校生の扶養控除とは


(※画像はイメージです)

まずは、高校生の扶養控除について説明します。従来の制度をしっかりと理解し、今後どのように変更となるかを捉えることが大切です。

扶養控除の説明

この問題を捉える前に、扶養控除を押さえなければなりません。扶養控除とは、扶養親族のいる納税者の合計所得から一定額を控除できる制度です。

例えば、配偶者を扶養に入れていると以下の表に基づいて控除がされます。

納税者本人の所得額 一般控除配偶者 老人控除配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超〜950万円以下 26万円 32万円
950万円超〜1,000万円以下 13万円 16万円

(参照:No.1191 配偶者控除|国税庁)

これらが所得から差し引かれることで、最終的な納税額を減らせます。節税をするうえでは、対象となる家族を扶養に入れるのも方法の一つです。

従来の高校生の扶養控除

高校生の子どもがいる家庭は、一般の控除対象扶養親族の対象となります。控除額は所得税が38万円、住民税が33万円です。

19〜23歳を除く、16歳以上の人を扶養すれば当該控除を受けられます。

ちなみに、2011年までは16歳未満の子どもを対象とした年少扶養控除も存在していました。当該制度は、子ども手当(現:児童手当)の創設とともに廃止されます。

2023年11月現在、政府で議論されているのが高校生の扶養控除額を一律で下げる政策です。具体的な金額は決まっていないものの、この取り組みに関してはさまざまな議論が交わされています。

 

 

一律縮小される背景


(※画像はイメージです)

少子化が問題視されているなか、なぜ高校生の扶養控除を一律縮小させる議論が生まれたのでしょうか。その背景について詳しく解説します。

児童手当の拡充

高校生の扶養控除を縮小させる意図は、児童手当の対象を広げるためです。児童手当は、15歳以下の子どもがいる家庭を対象に毎月一定額のお金が支給される制度を指します。

子どもの年齢と人数によって、支給される金額が異なります。詳しくは、以下の表をチェックしてみてください。

子どもの年齢 月額(1人あたり)
0〜2歳 一律15,000円
3歳〜小学校修了前 10,000円(第三子は15,000円)
中学生 一律10,000円
高校生 なし

(参照:児童手当制度のご案内|こども家庭庁)

ちなみに、高校生まで児童手当を拡充するとともに、従来の対象児童も支給額が変更されます。2024年改正後の金額は下記のとおりです。

子どもの年齢 月額(1人あたり)
0〜2歳 一律15,000円
3歳〜小学校修了前 10,000円(第三子は30,000円)
中学生 一律10,000円
高校生 一律10,000円

(参照:東京新聞

高校生の枠が追加されたほか、3歳〜小学校修了前の第三子が30,000円になるのが主な変更点となります。

児童手当の所得制限撤廃

児童手当が拡充されるとともに、所得制限も撤廃される予定です。所得の高い家庭からすれば、メリットの一つとなる制度改正になるでしょう。

従来までの所得制限では、以下のような決まりがありました。

扶養親族数 所得制限限度額(収入目安) 所得上限限度額(収入目安)
0人 622万円(833.3万円) 858万円(1,071万円)
1人 660万円(875.6万円) 896万円(1,124万円)
2人 698万円(917.8万円) 934万円(1,162万円)
3人 736万円(960万円) 972万円(1,200万円)
4人 774万円(1,002万円) 1,010万円(1,238万円)

(参照:児童手当制度のご案内|こども家庭庁)

所得制限限度額とは、支給金額が一律月5,000円に減額となる目安です。さらに所得が所得上限限度額を超えると、児童手当が支給されなくなります。

こうした制限が撤廃されれば、所得の高い家庭も子育てで一定の支援が得られます。不平等感はある程度拭えるかもしれません。

今回の改正については、所得の高い人に大きな変更点が生じます。制度が始まる前に、政府の動きをしっかりと確認するといいでしょう。

社会保障関係費の観点

児童手当と高校生の扶養控除は、ともに社会保障関係費から捻出される金額です。社会保障関係費は国内の歳出の中で最も割合が高く、資金繰りにも悩まされています。

こうした背景から高校生にも児童手当を適用させる反面、扶養控除の一律縮小を適用する措置が検討されています。

とはいえ、高校生の扶養控除が縮小されるのは納得のいかない方が多い印象です。世間の声に対して、岸田首相がどのように判断するかで自民党の将来も変わってくる気がします。

 

高校生の児童手当と扶養控除の比較

ここで、高校生の児童手当と扶養控除のどちらが得するかを検証します。参考として、所得税の算定における税率と控除額の表を設けました。こちらも参照してください。

課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超〜330万円 10% 97,500円
330万円超〜695万円 20% 427,500円
695万円超〜900万円 23% 636,000円
900万円超〜1,800万円 33% 1,536,000円
1,800万円超〜4,000万円 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

(参照:No.2260 所得税の税率|国税庁)

所得が600万円の家庭

所得が600万円の家庭は、表では「330万円超〜330万円」の枠になるため税率が20%かけ算されます。すると計算は以下のように求められるはずです。

600万円×20%−427,500円
=77万2,500円…①

(600万円−38万円)×20%−427,500円
=69万6,500円…②

①と②の差額は76,000円となります。

扶養控除については、具体的な案がないため「0円」と仮定します。

加えて、我々は所得税と合わせて住民税も支払わないといけません。住民税は所得割と均等割に分かれており、それぞれの税率と税額は以下のようになっています。

税の種類 所得割 均等割
区市町村民税(政令指定都市以外) 6% 3,000円
都道府県民税 4% 1,000円
10% 4,000円

(参照:均等割と所得割|総務省)

本来、均等割は2014〜2023年まで500円分の臨時増税されていますが、ここでは割愛しました。

ここで所得割10%を乗じて住民税の計算をしましょう。

600万円×10%+4,000円
=60万4,000円…①

(600万円−33万円)×10%+4,000円
=57万1,000円…②

住民税の差額分は33,000円となりました。所得税と合わせると10万9,000円です。

児童手当は月額で一律1万円なので、1年通してみると12万円支給されます。単純計算ではありますが、年間所得が600万円の場合は児童手当の方が額面上は得します

所得が900万円の家庭

次に、所得が900万円の家庭を見てみましょう。上記に示した表をもとに、所得税の計算式から紹介します。

900万円×23%−636,000円
=143万4,000円…①

(900万円−38万円)×23%−636,000円
=134万6,600円…②

①と②の差額は87,400円です。

住民税についても同じように計算してみましょう。

900万円×10%+4,000円
=90万4,000円…①

(900万円−33万円)×10%+4,000円
=87万1,000円…②

①と②の差額分は33,000円となりました。

これらを合わせた金額は12万400円です。わずかではありますが、年間所得900万円以上の家庭の場合は、児童手当への切り替えで損する可能性もあります

ただし、ここで求めた計算式は極めて単純なものです。実際はさまざまな控除が複雑に絡んでくるため、少なからず例外も存在するでしょう。

どちらが得するか

高校生の扶養控除と児童手当において、どちらが得をするかについてまとめましょう。

額面上の数字で見てみると、意外と扶養控除が縮小(あるいは廃止)されても「得する家庭」は一定数存在します。むしろ、冷静に計算してみると案外得する家庭の方が多いようにも思えます。

しかし、児童手当で支給される金額と税金として納める金額は実生活では異なるものです。税金の徴収額が増えることに、ストレスを感じる人がいてもおかしい話ではありません。

また、家庭の所得が高ければ制度の変更によって損するケースもあります。

税金のほかにも、生活するうえでは社会保険も考慮しなければなりません。今回は割愛しましたが、社会保険の金額を求める際に負担が大きくなる家庭も出てくるでしょう。

扶養控除が縮小されると、家庭にどこまで影響が出るかを自分自身で計算しておくことをおすすめします。

 

 

扶養控除と児童手当の両立

高校生への児童手当の導入により、扶養控除が縮小されても得する家庭はあります。

しかし、異次元の少子化対策を掲げるのであれば、扶養控除もそのまま適用するのがベストな政策だと考えます。無論、両立すれば予算をどのように確保するかもカギです。

ただし、そもそも日本では予算の不用額が2022年度だけで11兆円もあります

予算を多く確保すること自体は、国のみならず地方自治体でも当然のように採用される方法です。お金が足りなくなるのを防ぐべく、あらかじめ多めに持っておくようにします。

とはいえ、原則はあくまで予算を使い切ることです。なるべく予算をギリギリまで使い、足りなそうな分は国債発行も上手く活用する必要があります。

子育ては未来への投資であるため、将来的に返してもらう目的で発行するのは問題ないでしょう。

 

税のことはプロに相談

高校生の扶養控除については、政府の方でも検討段階です。2024年に向けて、方向性が徐々に固まります。

しかし、こうした税金に関する内容は初心者だけでは対策が難しいでしょう。不安な方は、お金や税金の扱いに長けている方の助言を受ける選択肢もあります。

まずは、自分自身で高校生の扶養控除に関するニュースをしっかりと追ってください。そこで疑問に感じるポイントがあったら、一度可能な範囲でリサーチしましょう。

そのうえで、今後の資金繰りに困ったことがあったらFPに相談するのをおすすめします。FPに相談できるサイトがライフプランの窓口です。

 

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