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所得税の減税にメリットはあるの?岸田首相の対策はいかに

2023年10月19日、岸田首相は物価高への対策として所得税の減税を打ち出しました。この対策に関しては、批判コメントが多数見られます。

この記事では、所得税の減税にメリットがあるか否かについてFP2級取得者の筆者が解説します。原点に立ち返り、減税の効果について見ていきましょう。

FP試験にも役立つので、受験を考えていた方はぜひ参考にしてください。

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所得税とは

まずは、簡単に所得税を解説します。所得税は、我々が収入を得た場合に発生する税金のことです。

社会人なら大半が仕組みを理解しているとは思いますが、学生だとイメージが付いている人は多くないかもしれません。

しっかりと内容を押さえてください。

所得の種類

所得には、大きく分けて10種類あります。

  • 配当所得
  • 利子所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得
  • 給与所得
  • 事業所得
  • 退職所得
  • 不動産所得
  • 山林所得
  • 雑所得

これら全ての説明は、別の記事でまとめたいと思います。

所得を求める計算方法も、種類によって大きく異なるのが特徴です。

ここでは、給料や報酬に関わる給与所得と事業所得を中心に見ていきましょう。

所得を算定するには

先程も説明したとおり、所得の種類によって所得税の計算方法が変わります。とりあえず、給与所得と事業所得の算定方法について解説します。

給与所得の計算方法

給与所得とは、サラリーマンが毎月貰う給料から算定される所得のことです。所得と収入、手取りはそれぞれ意味が異なるので注意してください。

収入は会社の額面上の給料を指します。給与明細書を見ると、収入と所得の欄が別に設けられているはずです。所得は収入から所得額控除を差し引いた金額になります。さらに手取りは、所得から税金や社会保険料を引いた額です。

給与所得については、次のように求められます。

給与所得=給与収入−給与所得額控除

給与所得額控除は、最低55万円です。あとは収入額に応じて、金額が変わります。

例えば、収入が300万円だとしましょう。この場合の計算式は以下のようになります。

収入金額×30%+8万円

計算の過程は省きますが、この場合の給与所得額控除は98万円です。

つまり300万−98万で給与所得は202万円と求められます。こちらが課税所得金額です。

事業所得の計算方法

個人事業主の場合、サラリーマンとは違って会社からの給料は発生しません。代わりに自身が稼いだ金額は事業所得として算定されます。

事業所得の求め方は以下のとおりです。

総収入額−必要経費−青色申告特別控除(青色申告者のみ)

総収入は、事業によって得られた収入の全てです。必要経費は、事業を行ううえで必要となる費用を指します。

青色申告特別控除は、青色申告者(正規の簿記で確定申告した者)のみが適用される所得控除です。控除額は基本的に55万円で、e-TAXや電子帳簿保存を行った人は65万円となります。白色申告者の控除額は10万円だけです。

例えば総収入額が300万円の人が、必要経費として50万円使ったとします。e-TAXを使わずに青色申告をした場合、次のように計算されます。

300万円−50万円−55万円

すると事業所得は195万円となるはずです。

所得控除について

所得税を算出するうえでは、課税総所得金額を求めなければなりません。

課税総所得金額を求めるには、上記で求めた所得から所得控除を差し引く必要があります。

課税総所得金額=所得−所得控除

ここでは、所得控除の代表的な種類を説明します。

例えば、納税者と生計を一つにしている配偶者以外の親族(子どもなど)がいる場合、基本的な控除額は48万円です(年齢によって額が異なる)。

配偶者がいる場合は、条件を満たす限り配偶者控除として所得から差し引かれます。その条件は次の4点です。

  • 本人の合計所得が1,000円以下
  • 配偶者の合計所得が48万円(年収103万円)以下
  • 生計を一つにしている
  • 事業専従者でないこと

他にも、数多くの所得控除があります(後日別の記事で解説する予定です)。これらを差し引いたら、いよいよ所得税を求める計算に移ります。

所得税の求め方

課税所得金額を求めたら、あとは所得税を計算するだけです。所得税を算定するうえで、税率と控除額が設けられています。これらは課税所得金額によって数値が異なるので表でまとめてみました。

課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超〜330万円 10% 97,500円
330万円超〜695万円 20% 427,500円
695万円超〜900万円 23% 636,000円
900万円超〜1,800万円 33% 1,536,000円
1,800万円超〜4,000万円 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

例えば、課税所得金額が200万円の方がいたとしましょう。この場合は195万円超〜330万円の枠に入ります。税額は10%で控除額は97,500円です。

所得税は以下の計算式で求められます。

所得税=課税所得金額×税率−控除額

式に当てはめれば、所得税額は10万2,500円です。つまり、この人は年間で10万2,500円の所得税を支払う必要があります。

ちなみに住宅借入控除のように、所得税額から差し引くタイプの控除も存在します。

日本は、所得が増えるほど支払う税額も多く支払わないといけません。こうした仕組みが累進課税制度です。

 

 

所得税減税のメリット

ここまでの説明で、ある程度は所得税の仕組みが理解できたかと思います。次に所得税を減税するメリットについて解説しましょう。

日本経済が回りやすくなる

所得税に限った話ではありませんが、所得税減税のメリットとして日本経済が回りやすくなります。単純に負担が減れば、可処分所得として使える額が増えるからです。

一般的に、経済学ではお金を多く持つほど消費に回すと考えます。教科書的な考えではありますが、この理論に基づくと市場に多くのお金が出回るでしょう。

経済が回ると、企業も積極的に投資しやすくなります。企業が儲かれば、従業員の給料も増えるのが基本です。したがって、私たちの所得も増えるループが生まれます。

社会保障費が減らない

所得税を減税することで、社会保障費に使う収益分が減らないメリットもあります。社会保障費とは、公的年金や生活保護費などの出どころです。

一般的に社会保障費は消費税と社会保険料で構成されます。仮に消費税を減税すると、当該費用が足りなくなる恐れもあります。

とはいえ、こちらはあくまで教科書的な考え方です。実際は消費税を減税しても、経済が回ることで社会保障費がプラスになるケースも考えられます。

金持ちの出費が増える

所得税の場合、多く稼げば稼ぐほど税額が高くなるように仕組まれています。したがって、多く稼いでも取られる税金も増えるので手元に残る分はならされます。

そこで、所得税を減税することで高所得者がより得した気分になるでしょう。どういった減税策を取るかは不明ですが、全ての人が対象になると効果も上がる可能性があります。

しかし、岸田首相の場合は所得額で壁を設けそうです。その場合、大して効果が見込めないと筆者は考えます。どこまでの策を講じるかが、注目すべき要素です。

 

所得税減税のデメリット

所得税を減税すると、当然ながらデメリットも生じます。メリットとデメリットを上手く見比べながら、対策を練ることが岸田首相の課題です。どのようなデメリットが考えられるかを紹介します。

物価上昇との関係

所得税の減税は、物価の上昇(インフレーション)の関連で矛盾点が挙げられます。

日本では、数十年前と比べるとエネルギー価格や食料品費を中心にコストが上がっています。その原因となっているのが、円安と世界情勢です。

アメリカやユーロ圏内との金利差の開きにより、日本では円安が発生しました。輸入価格の上昇に伴い、物価高が生じている状態です(正確にはエネルギー価格と食料価格の上昇)。

さらに世界情勢の悪化により、貿易からの供給が世界全体で抑えられているのも要因とされています。

所得税は、一般的に物価が上昇すると税収が増える税です。

税制の変更はしていないものの、物価上昇が勝手に所得増税の役目を果たします。この考え方がブラケット・クリープです。

したがって、所得税についてはわざわざ減税の措置を採る必要がないという考えもあるでしょう。

所得税はそのまま税収を確保しつつ、消費税のようなわかりやすい部分を変更するやり方が世間にも支持されている印象です。

効果がやや分かりづらい

日本では、63%の人がサラリーマンとして勤務していると労働力調査から分かっています。給与所得の場合、所得税はあらかじめ給料から差し引かれる仕組みです。

そのため、サラリーマンからすると恩恵が感じづらいデメリットもあります。事業主であれば、自ら確定申告を行うので減税の効果はイメージしやすいと思います。

この点から、たとえ減税されても半分以上の国民には効果を実感しにくいかもしれません。

非課税世帯に恩恵がない

所得税については、初めから納めていない世帯も一定数存在します。一般的に非課税世帯といわれており、高齢者が特に多いのが特徴です。

所得税を納めていない世帯からすれば、0円であることは変わりありません。したがって、この制度だけで見ればメリットが少ないといえます。

ただし、岸田首相は非課税世帯に対しては給付金を与える考えを示しています。現段階では、国民全員が恩恵を受けられるように配慮する模様です。

 

所得税減税の今後

岸田首相の提言は、まだ検討している段階での話です。今後の会議により、どう対策を講じるかが求められます。最後に所得税減税の展望を解説します。

期間限定の可能性が高い

さまざまな面において検討中の所得税減税ですが、すでに期間限定であることには触れられています。実施される際には、期限が設けられている可能性は高いでしょう。

今のところ、どの程度の期間で行うかは未定です。場合によっては、予想以上に短く設定されることもゼロではありません。

中途半端な設定だと税の計算もややこしくなるため、インボイスに引き続き税理士や経理の人は仕事に負担がかかる恐れもあります。

所得で壁を設定する場合も

所得税が減税されても、全ての人が対象になるかは分かりません。高所得者の場合、こうした減税に対しても除外される可能性があります。

まだ壁が設定されるかは分かりませんが、仮に設けるときはどこまでが対象かを入念にリサーチすることが大切です。このあたりも今後、さらなる政策が打ち出されると思うので随時確認しておきましょう。

 

まとめ

今回は、岸田首相が所得税の減税におけるメリットおよびデメリットを解説しました。一人ひとりの生活にも関わることであるため、まずは所得税の仕組みをしっかりと理解してください。

国で政策の方針が決まると、各都道府県でも方向性が定まるはずです。具体的な内容については、自治体によって少し変動する可能性もあります。

もし所得税の減税の対象になり、分からないことがあったらすぐに役場へ問い合わせしてみるといいでしょう。

子どもの進学に備えるためには、コツコツと教育費を貯蓄することが大切です。教育費を貯めるうえでは、両親に万が一のことがあった場合に子どもが保険金を受け取れる「学資保険」が役立ちます。

 

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