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乗数理論を徹底解説!政府支出の変化と減税の計算問題を解いてみよう

国全体の経済を整えるために、政府支出や減税などの政策も欠かせません。

このような政策が、GDPにも大きな影響を与えるからです。

基本的に景気が落ち込んでいるときは減税と政府支出増、景気が加熱し過ぎたら増税と政府支出減が求められます。

今回まとめる内容は、公務員試験のマクロ経済学で非常に重要な乗数理論です。計算問題がやたら出てきますが、確実に得点源としておくことが大切です。

前回は『均衡国民所得』について解説していきました。こちらの考え方も、マクロ経済学の基本となるのでタブを分けて見直してみるといいでしょう。

上記の記事もあわせてご覧ください。

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◆この記事でわかること◆
・乗数理論の計算問題の解き方
・政府支出を考慮したときの計算方法
・税額控除を考慮したときの計算方法

 

乗数理論とは?

まずは、乗数理論の仕組みについて解説していきます。ただ、公務員試験を解く上では必要のない知識かもしれません。不要だなと感じたら、理論の説明は読み飛ばしてもらってOKです。

乗数理論の大まかな内容

乗数理論とは有効需要(民間投資・政府の支出・減税・増税等)の変化により、国民所得がどこまで変化するかを示す値です。

民間企業が投資できないくらい金銭的余裕がなければ、その影響で国民も貧乏になってしまいます。

こういった不況を防ぐため、政府は公共事業の増加や減税を試みます。

国の経済状況は、民間企業や政府等によってアップダウンを繰り返しているのです。乗数理論は、上記の仕組みを具体的な数値を用いて分かりやすく表しています。

乗数理論の公式の仕組み

均衡国民所得を求める計算でも使われていましたが、乗数理論の計算式にも下記の公式が用いられています。

Y=C+I+G

上記の式は、外国との貿易が行われない「閉鎖経済(封鎖経済)」と言われる状態です。(鎖国をイメージすると分かりやすいでしょう。)

外国との貿易を考慮した場合は「開放経済」と言われ、式は下記のように変化します。

Y=C+I+G+X-M

Xは輸出、Mは輸入を指しています。日本は海外とも広く貿易をしているため、開放経済の公式で考えます。

公務員試験の乗数理論は、公式に数字を代入して求める問題が基本です。国家公務員から地方公務員まで幅広く問われるため、確実に得点できるよう押さえていきましょう。

  • 乗数理論はGDPの変化を知るための計算方法
  • 主に政府支出や税金の変化から読み解く
  • 閉鎖経済か開放経済かで式も変わる

 

 

乗数理論の計算問題

では、ここから問題を出します。以下の2パターンをしっかりと押さえてください。

  • 政府支出
  • 減税

政府支出や減税のパターンも、計算方法は大きく変わりません。

政府支出の変化の問題

閉鎖経済の基で政府支出が3兆円増加しました。投資も2000億円増加して限界消費性向が0.6だった場合、国民所得の増加額はいくらになるでしょうか。
なお、乗数理論で使われる公式は以下のとおりです。
Y=C+I+G

選択肢
(1).4兆円
(2).6兆円
(3).8兆円

 

ちなみに限界消費性向とは、所得が1単位変化したときの消費の変化分を指します。限界消費性向が高いほど、消費の変化量も大きくなるのが特徴です。

CをYに置き換える

上記の問題では、限界消費性向が「0.6」と定められています。つまり、所得が1億円増加すれば消費は6,000万円増加する状態です(1億円×0.6)。

このように、消費は「所得×限界消費性向」の式に直せます。

問題のC(消費)をYに置き換えた形は0.6Yです。スムーズに式を直せるよう、何度も練習してください。

乗数理論の考えに当てはめて計算

ここまで押さえたら、後は乗数理論の公式を整理していくだけです。先程も説明したとおり「C=0.6Y」で表せることを押さえてください。

あとは単位を「兆」と考え、投資額(I)と政府支出(G)を式にそれぞれ当てはめましょう。

投資は2000億円なので「I=0.2」、政府支出は3兆円なので「G=3」と置きます。

これまでの内容をまとめると、解は以下の通りとなります。

Y'=C'+I'+G'
Y'=0.6Y+0.2+3
0.4Y=3.2
4Y=32
Y=8

正解は3番の8兆円です。

減税

続いての問題は、税が取り扱われています。

Y=C+I+G
C=0.5(Y-T)+2
T=0.2Y-a
Yは所得、Cは消費、Iは投資、Gは政府支出、Tは税、aは税額控除
以上の条件のとき、税額控除を1だけ増加すると、国民所得はいくらになるか。

選択肢
(1) 2
(2) 2.5
(3) 3
(4) 3.5
(5) 4

 

少し難しそうに思えますが、乗数理論のルールを押さえておけば大したことはありません。大切なのは、文章で判明している数値を公式に当てはめていくことです。

税金のルール

まずは、税金のルールを説明します。

減税はご存知の通り、課せられている税の金額を低くする政策です。消費税は基本的に10%が課せられますが、それを5%まで抑えれば減税に該当します。

税額控除(a)は、税金として納めなくてもいいと対象から外す仕組みです。主な税額控除の例には、投資先の配当から生じる配当控除があります。

税額控除が1増加すれば、その分納める税金が少なくなるので「T」の値は減少します。

これらの仕組みを理解したうえで、問題を解いていきましょう。

乗数理論は変化しない値を無視する

問題文では親切に公式が書かれていますが、少しだけ罠が仕掛けられています。あくまで「減税」による変化しか記載されていません。

乗数理論は、変化した要素さえを計算に取り入れる方法です。

そのため、解く際には「I」と「G」は無視します。「T」と関わりのある「C」のみを考慮する必要があります。

計算の当てはめ

順番的に、「T」から整理しましょう。

T=0.2Y-a

税額控除が1増加するため
T=0.2Y-1

次にCの式に当てはめます。

C=0.5(Y-0.2Y-1)+2
C=0.5(0.8Y-1)+2
C=0.4Y-0.5+2
C=0.4Y+1.5

最後にYの式に代入しましょう。
Y=0.4Y+1.5
0.6Y=1.5
6Y=15
Y=2.5

正解は(2)になります。

  • 乗数理論は変化した値のみを計算する
  • 限界消費性向×所得=消費(C)
  • 税額控除は減税にあたる

 

 

乗数理論のまとめ

今回は「乗数理論」について紹介しました。乗数理論の問題を解く際には、以下の公式は必ず押さえるようにしてください。

Y=C+I+G+(X−M)

ここでは、政府支出の変化と減税による国民所得の変動を見ていきました。

さまざまなパターンで出題される分野であるため、自身でも参考書を購入して過去問に取り組んでいきましょう。

参考書としてはスー過去がおすすめです。

問題数も適切であり、難問に対してもしっかりと解説がなされています。

まずは、こちらのテキストをスラスラと解けるように何度も復習してください。

試験に出された場合は、変化した値に着目することがコツです。変化した値を中心に活用すれば、計算もそこまで複雑にはなりません。

そして、計算するうえではケアレスミスを絶対にしないように心がけましょう。