民法の代理の中でも、特にややこしい内容が表見代理です。表見代理が成立するには、大きく分けて3つのケースが存在します。
この記事では、表見代理の3つの種類や具体的な要件などを解説します。公務員試験や行政書士試験を受験される人は、記事を参考にしてください。
なお今回の内容を勉強するにあたって、購入しておくべき参考書とテキストは以下の2つです。
※アフィリエイト広告を貼っている記事
表見代理とは
表見代理とは、契約の相手方が無権代理人を「正式な代理人」と誤認している状態のことです。本来、無権代理行為については本人の追認がない限り無効になると定められています。
一方で表見代理が成立するのは、少なからず本人にも責任がある状況においてです。したがって契約の相手方を優先的に保護するのが道理であり、無権代理人の行為の効果は本人に帰属します。
表見代理の3つの種類
表見代理には大きく分けて3つの成立条件があります。
- 代理権授与表示による
- 権限外の行為
- 代理権消滅後
これらが何を意味するかも踏まえ、要件を具体的に紹介しましょう。
代理権授与表示
代理権授与表示とは、「代理権を与えた」事実が明記された通知を契約の相手方に与える行為です。代理権授与表示は意思表示ではなく、あくまで観念の通知とされています。
また「第三者に代理権を渡した」と相手方に伝えただけでは、授与表示したとみなされません。会社の名義の使用や保証人にかかる白紙委任状など、行為はある程度限定されます。
具体的な要件
代理権授与表示による表見代理が成立する要件は、代理権授与の表示に加えて行為が範囲内に留まることが必要です。一方で範囲外に値する場合でも、正当な理由があれば本人は責任を負うべきとされています。
また契約の相手方の善意無過失も要件の一つです。つまり相手方が代理人に権限がないのを知っており、もしくは過失で知らなかった場合は通常の無権代理となります(本人は責任を負わない)。
法定代理との関係
代理権授与表示による表見代理では、法定代理には適用されません。法定代理とは、後見人のように民法で規定されている代理制度のことです。したがって代理権授与表示については、任意代理にのみ適用されます。
代理権授与表示の立証責任
代理権授与表示の表見代理が成立する理由は、契約の直接の相手方が安心して取引できるようにすることです。
もし善意無過失を争うのであれば、立証責任は本人にあります。例えば上図のようにAがBに法律行為をするとき、Cが自身に権限がないのに代理権授与表示をしました。
この場合はCが善意無過失を立証するのではなく、AがCの悪意有過失を立証しなければなりません。その理由は代理権授与表示があった場合、契約の相手方は代理権があると考えるのが普通であるためです。
立証責任は難易度の高い問題であれば、問われやすい内容でもあります。自分でも問題に出てくる人物の関係を図で示し、イメージしながら解いていくようにしましょう。
権限外の行為
権限外の行為は、代理人が代理権の範疇を超えた場合を指します。代理人として選定した者が、権利を濫用して取引を進めてしまうことも考えられるでしょう。
こうした場合においても、契約の相手方を守る必要があります。権限外の行為における要件等も解説しましょう。
具体的な要件
代理人の権限外の行為により、表見代理が成立するには3つの要件が必要です。
- 基本代理権が存在している
- 権限外の行為に該当する
- 契約の相手方の善意無過失
まず成立条件として、基本代理権が存在しなければなりません。こちらは判例によって、判断が大きく分かれることもあります。
特に狙われやすいのが、夫婦の日常家事連帯責任です。最高裁判例では夫婦の内部事情ではなく、あくまで客観的に行為の種類や性質を判断すべきと論じています。
夫婦間では表見代理は成立しないものの、第三者が絡んでおり日常の家事に関する行為と信じることに正当な理由があれば同制度が類推適用されます。
加えて契約の相手方の善意無過失も、表見代理が成立する要件の一つです。直接の相手方に該当しない第三者は関係ありません。
法定代理との関係
権限外の行為の場合は、法定代理にも表見代理が適用されます。この特徴は、他の表見代理の種類と大きく異なるポイントです。自分なりに区別して覚えるようにしてください。
代理権消滅後の行為
代理権消滅後の行為は、権原が無くなったのに代理行為をした場合です。一般的に代理権が消滅する条件は次のとおりです。
- 死亡(本人または代理人)
- 破産手続開始(代理人)
- 後見開始の審判(代理人)
- 委任の終了(委任による場合)
これらの条件に該当したにもかかわらず、代理人が引き続き法律行為をしたら相手方も有効と勘違いしてしまいます。その相手方を守るべく、当該状況でも表見代理が認められます。
具体的な要件
代理権消滅後の行為において、表見代理が成立するのは以下の条件が当てはまるときです。
- 代理権が消滅した
- 範囲内であった行為である
- 契約の相手方の善意無過失
代理権の消滅以外の要件は、他の表見代理の種類とそこまで変わりありません。
法定代理との関係
代理権消滅後の行為については、法定代理には適用されません。基本的には任意代理に適用されることを覚えておきましょう。
表見代理に関するまとめ
この記事では、表見代理が成立する3つの種類について解説しました。具体的な要件と法定代理との関係を区別できるようにしてください。
表見代理の内容も、公務員試験の民法では問われることもあります。しかし成立条件が複雑であり、慣れない間は問題が解けないかもしれません。
そのため何度も過去問を繰り返し解きつつ、どこが狙われやすいかを押さえておくことが大切です。
代理に関する記事の一覧を並べておきます。これらも公務員試験の勉強に役立たせてください。