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賃貸借契約と修繕義務|必要費と有益費の違いを押さえよう

賃貸借契約の修繕義務は、公務員試験や法律系の試験でも問題にしやすい範囲のひとつです。必要費と有益費の内容が問われやすいので、しっかりと勉強する必要があります。

この記事では、賃貸借契約と修繕義務の関係に焦点を当てて解説します。公務員試験や行政書士、宅建試験を受験される予定の人はぜひ参考にしてください。

 

賃貸借契約とは

賃貸借契約とは、貸主側が目的物に使用させることを約束し、借主側がそれに対して賃料を払う契約です。

法律的に書くと分かりづらいのですが、要するにアパートの契約が該当します。アパートの借主は室内を契約の範囲内で自由に使えますが、所有権があるのはオーナーです。

そして借主は、毎月の家賃を支払うことで室内を使用する権利が得られます。

賃貸借契約の法的性質は、以下のとおりです。

  • 双務契約
  • 有償契約
  • 諾成契約
  • 不要式契約

こちらも併せて覚えておくとよいでしょう。

 

賃貸借契約と修繕義務

画像はイメージです

アパートの屋根が剥がれたり、ベランダが壊れたりしたら修繕が必要です。しかし工事をするとなれば、一定額の費用を支払わないといけません。

こうした費用について、貸主と借主のどちらが修繕義務を負うかを解説します。

修繕義務を負うのは貸主

一般的に修繕義務を負うのは、賃主のほうです。仮にアパートの壁が寿命により壊れたとしても、原則として借りている側は代金を負担する必要がありません。

私もアパートで暮らしていた頃、エアコンが寿命で壊れてしまったことがありました。このエアコンはアパート取り付けのものだったため、不動産会社に連絡して直してもらいました。

試験対策だけではなく、一人暮らしでも使える知識なので覚えておきましょう。

借主が修繕するケース

原則として修繕義務を負うのは貸主ですが、例外的に賃借人が修繕しないといけないケースもあります。

その要件となるのが賃借人の責めに帰すべき事由(帰責事由)があるときです。要するに借主が意図的に窓ガラスを割ったなどの行為が見られたら、壊した側がしっかりと修繕しなければなりません。

当たり前の話ではありますが、皆さんも借りているアパートにパンチして壁を壊すのはNGですよ。

借主が損害賠償できる場合

借主に帰責事由がないにもかかわらず、貸主が修繕しない場合は損害賠償請求ができます。修繕義務を果たさないことは、債務不履行に相当するためです。

また貸主が修繕しないために、アパートに住めない状態が続いたら、借主は家賃の支払いを拒否できます。

ただし生活に少し支障が出ているものの、ひとまずアパートで過ごせているのであれば、家賃全額の拒否はできないという判例も存在します。

借主が修繕してもよい場合

ほかにも次の条件を満たしていれば、借主自身での修繕可能です。

  • 賃貸人に知らせたにもかかわらず修繕してくれない
  • 急迫の事情がある

まず条件として挙げられるのが、貸主が修繕義務を果たさないときです。その際には貸主へ通知をするか、相手が事実を知っているなどの要件が必要になります。

加えて急迫の事情がある場合にも、借主の修繕が認められます。外壁が今にも崩れそうで、周囲の人々にも被害が及びかねない状況などが当てはまるでしょう。

 

 

目的物の一部が使えない

賃貸借契約で目的物が一部滅失したときの減額請求をイメージした図

自然災害等の理由により、アパート等の設備の一部が使えなくなることもあります。この場合において、生活に支障が出る借主に認められる権利を紹介しましょう。

原則は賃料の減額

目的物の一部が使用できなくなり、借主に帰責事由がなければ、賃料は当然に減額されます。民法は2020年に大改正前されましたが、従来は「借主は減額を請求できる」と定められていました。

しかし大体の人は法律に詳しくないため、後から請求できたことを知って損するケースも一定数ありました。こうした事情を考慮してか改正後は減額されると定め、貸主に義務を課すような表記に変更されます。

目的を達成できないときは契約解除も可能

賃借物の一部滅失により、残存部分だけでは目的を達成できないときは借主から契約を解除できます。こちらはあくまで「請求」という形なので、借主側から申し出る必要があります。

また「目的を達成できないとき」の条件があるのも忘れずに覚えておいてください。

 

目的物の全部が使えない

目的物の全部消滅をイメージしやすいように示した図

地震や火事の影響により、アパートの全てが使えなくなる場合もあります。このときも何が原因かで、契約の扱い方も異なるので注意しましょう。

両者に帰責事由がない

自然災害でアパートが使えなくなった場合、貸主も借主も責任はありません。さらにアパートがなくなってしまったら、契約の意味もなくなります。

したがって民法616条の2の規定に基づき、契約は当然に終了すると解釈されます。

賃貸人に帰責事由がある

貸主のせいでアパートを相手に貸せなくなったとき、民法上は債務不履行に該当します。そのため借主側は、貸主に対して損害賠償を求めることも可能です。

またアパートは一切使えなくなるので、賃貸借契約は当然に終了すると考えられています。債務不履行の詳しいルールを知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。

賃借人に帰責事由がある

借主が火遊びをしたために、アパートが全焼した事例についても考えてみましょう。

こちらも現実的にはアパートが使えなくなるので、賃貸借契約の終了に持っていくのが普通です。契約を終了したあと、貸主による損害賠償請求で処理する形となります。

 

 

必要費と有益費の違い

借主がアパート等を利用するにあたり、現状を維持するために支払った費用は貸主に対して返還請求できます。この費用には2種類存在するので区別して押さえてください。

必要費:修繕費用等

例えば台風の影響で屋根が壊れてしまい、雨漏りの危険性がある状況を想定しましょう。借主に帰責事由がないため、修繕費用は貸主が払うのが普通です。

しかし現在もなお雨が降り続いており、雨漏りを防ぐべく借主が自ら修繕したとします。この修繕にかかった費用は「直ちに」貸主に対して請求可能です。

なお目的物の維持または保管において必要となる費用は、そのまま必要費と呼ばれます。

有益費:機能性向上

借主がアパート等を改良し、機能性が向上すると有益費として貸主に費用を請求できるケースもあります。

ただし全ての改良行為に認められるわけではなく、その判断は裁判所も悩まされるほどです。この費用償還を巡り、揉めてしまうリスクも決して少なくありません。

有益費と認められた事例として、賃貸物件で飲食店を営んでいた人がカウンターを改良したものがあります。有益費が認められると、貸主は借主が負担した費用・増加した価値分のいずれかを支払わないといけません。

ただし貸主が裁判所に請求すれば、費用償還において相当の期限を設定してもらうことも可能です。

 

修繕義務の問題はシンプル

修繕義務の内容に関しては、正直なところ公務員試験・行政書士で問われる内容も難しくありません。必要費や有益費の扱い、危険負担の関係を知っていれば基本は正答できます。

そのため勉強する際には、賃貸借契約のルールをしっかりと押さえてください。アパート契約など日常生活にも直結する内容なので、上手くイメージしながら勉強するのをおすすめします。