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原告適格とは?行政法の各判例も確認しながら定義を押さえよう

公務員試験の行政法において、行政事件訴訟法の原告適格の内容が難しいかなと筆者は感じています。判例を中心に、覚える量が極めて多いからです。

この記事では、行政法の原告適格の内容について紹介します。有名な判例も紹介するので、原告適格の定義をしっかりと押さえてください。

◆この記事でわかること◆
・原告適格の意味について
・原告適格を持つことができる人の条件
・原告適格を認めた判例

 

 

原告適格とは

原告適格とは、行政事件において取消訴訟を提起できる資格のことです。主に法律上の利益を持つ人が、取消訴訟を起こせると考えられています。

行政事件訴訟法第9条では、法律上の利益は条文の文言のみならず、趣旨や目的についても考慮しなければならないとされています。

取消訴訟は、行政庁の処分やその他公権力の行使にあたる行為のみ提起できる訴えでした。個人の権利を守るべく、主観訴訟に該当するのが特徴です。

取消訴訟の定義が曖昧だと、原告適格の内容も理解しにくくなります。以下の記事に詳しい解説を記載しているので、こちらも参考にしてください。

 

法律上の利益と原告適格

法律上の利益といわれても、具体的にはどのようなものがあるか疑問に感じるでしょう。ここでは、実際の判例も紹介しながら原告適格の有無について説明します。

とはいえ、ただ判例だけ調べようとしても整理するのが難しいかもしれません。そのため、利益の以下のような種類でまとめた方が得策です。

  • 営業上の利益
  • 生命と身体の安全の利益
  • 健康・生活上の利益
  • 文化的な利益
  • 消費者の利益
  • 善良な風俗の利益

それぞれに合う判例を紹介するので、原告適格が認められるか否かを押さえてください。

営業上の利益

日本では、原則として営業の自由が認められています。しかし、手放しに全てを認めてしまうと、デスマフィンのようなケースが起こるかもしれません。

そこで、行政は一定の営業について免許を設定するなどの制限も可能です。この営業上の利益については、意外と押さえておきたい有名な判例が多くあります。

それぞれの判例と原告適格の有無について表で簡単にまとめましょう。

判例 原告 原告適格の有無
公衆浴場業者の営業 公衆浴場業者
東京12チャンネル事件 競願者
病院開設許可 病院を開設する予定の者
一般廃棄物処理業者の許可処分 第三者

なお、病院開設許可については以下の記事で詳しく紹介しています。こちらの記事も参考にして、事件の具体的な内容を押さえてください。

生命と身体の安全の利益

生命および身体の安全の利益については、基本的に原告適格を認めています。行政処分により自分の身に危険が生じる場合は、周辺の住民も訴訟の提起が可能です。

このケースについては、2つの判例をとりあえずは押さえてください。

判例 原告 原告適格の有無
都市計画法の開設(がけ崩れ) 被害が出そうな地域の住民
林地開設許可 被害が出そうな地域の住民

健康・生活上の利益

健康や生活上の利益とは、騒音トラブルや地域の環境から守ることです。こちらも、公務員試験で問われやすい判例がいくつかあります。

代表的な種類について、同じく表でまとめたので参考にしてみるといいでしょう。

判例 原告 原告適格の有無
伊達火力発電所訴訟 公衆浴場業者
小田急鉄道事業取消訴訟 競願者
産業廃棄物処理業 病院を開設する予定の者

文化的な利益

文化的な利益については、伊場遺跡事件さえ押さえていれば問題ないでしょう。こちらは静岡県の教育委員会が伊場遺跡を史跡に登録したものの、後に解除された事例です。

学術研究者が解除処分の取り消しを求めたものの、法律上の利益を持たないと原告適格が認められませんでした

消費者の利益

一般消費者としての利益を守るべく、行政訴訟が起こされるケースもあります。しかし、判例は否定的な立場にケースがほとんどです。

具体例として、主婦連ジュース事件が挙げられます。こちらも一般消費者は、直接法律の保護を受けられる立場ではないとして、原告適格認めないという結論に至りました。

善良な風俗の利益

単なる住民の環境のみならず、善良な風俗に関する訴えも原告適格が認められる可能性もあります。公務員試験では、とりあえずパチンコ屋の営業許可について押さえておくといいでしょう。

こちらは行政がパチンコ屋に営業許可を認めたのに対し、住民が取消訴訟を提起しました。しかし、裁判所は当該住民に原告適格を認めませんでした

風俗営業に関する法の規定が、個々の住民の利益まで保護すると考えるのは妥当ではないためです。

 

原告適格を整理しよう

今回は、行政事件訴訟法で定められている原告適格について紹介しました。取消訴訟を提起するには、まずは原告適格を認めてもらえなければなりません。

当該権利が認められるのは、法律上の利益を有する者です。法律上の利益も、大きく分けて以下の種類があります。

  • 営業上の利益
  • 生命と身体の安全の利益
  • 健康・生活上の利益
  • 文化的な利益
  • 消費者の利益
  • 善良な風俗の利益

それぞれの種類に分類された判例ごとに、原告適格の有無を覚えることが大切です。覚える量も極めて多いので、1つずつじっくりと学習してください。