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行政指導の判例|病院開設中止勧告と品川マンション事件を解説

公務員試験や行政書士試験では、行政手続法に定められている行政指導も狙われやすい範囲のひとつといえます。行政指導の仕組みもそうですが、病院開設中止勧告や品川マンション事件も押さえないといけません。

ここでは病院開設中止勧告や品川マンション事件などの有名判例を詳しく解説します。テキストでは内容が理解できない人は、当記事を参考にしてください。

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病院開設中止勧告

病院開設中止勧告の内容をイメージできるように示した図

病院開設中止勧告(最判平成17年7月15日)は、行政指導の内容でもかなり問われやすい判例です。その理由は、行政指導の基本的な枠組みから外れた判決を出したからだといえます。判例の内容を詳しく解説しましょう。

行政指導の基本原則

行政指導は基本的に「処分」には該当しないため、処分性も存在しません。したがって仮に指導内容が違法として取消訴訟を提起しても、処分性が認められないことから訴えは却下されるのが原則です。

行政指導や行政事件訴訟法の基本的な内容については、以下の記事でも詳しくまとめています。まだ基礎の部分から分からない人は、併せて読んでみてください。

病院開設中止勧告では処分性を認めた

しかし病院開設中止勧告に関しては、行政指導だとしても例外的に処分性を認めました。その意味についても詳しく紹介しましょう。

事件の内容

まずは当該事件が発生した経緯についてまとめます。

ある人物(X)は病院を開設しようと計画を立て、県知事に対して医療法に基づく許可申請を提出します。しかし県知事から病院開設の中止勧告がなされ、Xはそれを拒否しました。

県知事は拒否に対し、「開設してもいいけど勧告を無視したら保険医療機関の指定を拒否する」と文書で伝えます。病院開設中止勧告の事件は、その勧告の取消しを求めたものです。

なぜ処分性を認めたのか

病院開設中止勧告は、規制的行政指導にあたります。しかし判例で処分性を認めたのは、保険医療機関の指定が拒否されたら、病院を開設しても全ての治療に保険が適用されないためです。

私たちが病気をしても、保険のおかげで窓口に支払う自己負担額が1〜3割で済んでいます。この制度が適用されるのは、一般的に保険医療機関の指定を受けた病院です。

もし保険が適用されなかったら、普通の人はその病院に行こうとは思わないでしょう。病院を開設したところで、患者の通院は臨めず経営不振に陥る可能性が高まります。

医療は治療ごとに点数が付けられ、それに基づいて金額も決められるので医者側で自由に調整できません。要するに現実的には開設を諦めざるを得ないわけです。

中止勧告への処分性が認められたのは、裁判所がその辺りも考慮したからです。

 

品川マンション事件

品川マンション事件の概要について分かりやすく示した図

行政法の判例では、マンションにかかる事件がいくつか登場します。これらは内容が紛らわしく、区別が付きにくいと感じている人もいるでしょう。まずは有名な判例のひとつである品川マンション事件を解説します。

品川マンション事件の内容

品川マンション事件の発端となったのは、マンションの建築に関して東京都の住民が反対運動を起こしたためです。建築業者であるZさんは、東京都に対してマンション建築の許可申請を出しました。

しかし住民たちは日照権や景観を理由に、マンションが建てられることに反対します。市役所も反対運動を考慮し、Yに対して「住民たちと話し合いしてくれ」と指示しました。

Yは10回にわたって話し合いをしたものの、全くもって話が前に進みませんでした。その最中、東京都は住民との間で解決しない間は申請を確認しないと言い放ちます。

Yは「そのような指導には従えない」と審査請求したものの、建築審査会(審査庁)も「話し合い」を命じて取り下げてしまいました。

こうして申請をろくに確認してもらえず、審査請求をしてもなお強制的に話し合いを押し付けるため、Zはそれを不服に東京都を被告に訴訟を提起しました。

最高裁の判例

結論から述べると、最高裁は品川マンション事件における確認の留保処分は違法と判旨しました。

とはいえ留保することが、必ずしも違法になるとは述べていません。原則は速やかに確認処分を下すのが賢明ですが、社会通念上合理的と認められるときは例外に留保してもよいと考えています。

しかし建築主が行政指導に従わない旨を表明しているときは、「建築主の受ける不利益」と「行政指導の目的」の2つを比較検討すべきとします。

さらに建築主の協力しない姿勢が、正義に反しない限りは確認処分を留保する行政側の行為が違法になるとまとめました。

品川マンション事件では、これらの条件に当てはまっているので確認処分の留保が違法にあたると判旨されたのです。

 

武蔵野市マンション事件

武蔵野市マンション事件の内容を分かりやすく解説した図

次に公務員試験でも定番である、武蔵野市マンション事件(最判平成5年2月18日)について紹介します。こちらは行政指導に国家賠償請求を認めたきっかけとなる判例です。事件の内容と最高裁の判例を併せて覚えるようにしてください。

武蔵野市マンション事件の内容

武蔵野市では『武蔵野市宅地開発等に関する指導要綱』の中に、「建設を行う事業主は教育施設負担金を支払う」と明記されていました。

事業主であったZさん(仮)は3階建てマンションの建設にあたり、負担金の減免を願い出ましたが断られてしまいます。嫌々納付したものの、寄付を要請されたのが強迫にあたるのではと武蔵野市相手に取消訴訟と国家賠償請求を提起しました

最高裁の判例

こちらも先に結論から述べると、武蔵野市マンション事件では行政指導の限度を超えており違法な権力行使であると判旨しました。

ただし「行政指導として教育施設寄付金の納付を求めること」自体がすぐに違法としたわけではありません。強制にわたるなど事業主の任意性を損なう限り違法になると考えました。

武蔵野市マンション事件においては、武蔵野市の行政指導が強制にあたると判断します。「教育施設負担金の納付自体が違法である」という選択肢は不正解なので気をつけましょう。

このように行政法の判例は、問題集を使って解くのをおすすめします。特に以下が分かりやすいので、試験を受験される人はぜひチェックしてみてください。

 

 

まとめ

本日は、行政指導より3つの有名な判例を勉強しました。

  • 病院開設中止勧告
  • 武蔵野マンション事件
  • 品川マンション事件

公務員試験や行政書士試験でも出題される可能性は高いので、各自しっかりと見直してください。結論部分だけを覚えるのではなく、違法になる条件を把握しておくのが問題を解くコツです。