我々の国では、三権分立の制度が採られています。
本来、法律をつくるのは国会の仕事です。
しかし、法律だけでは行政が仕事をする際に指針が曖昧になってしまいます。
そこで作られた行政のルールが、法規命令です。
ここでは、法規命令の種類である執行命令と委任命令の違いを解説します。
法律の根拠の部分についても詳しく取り上げましょう。
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執行命令と委任命令の違い
法規命令とは、行政が定める国民の権利・義務に関するルールです。
上述したとおり、法律をつくる本来の機関は国会が該当します。
法規命令には、以下の4種類があります。
- 政令
- 内閣府令
- 省令
- 規則
ちなみに、この中で内閣総理大臣が独自で決められる法規命令は「内閣府令のみ」です。
他の命令は全て「閣議」によって定めないといけません。
法規命令は、さらに次の2パターンに分けられます。
- 執行命令
- 委任命令
(独立命令という概念もあるが、日本の場合は禁止されている)
それぞれを併せて勉強していきましょう。
執行命令=法律を具体化する
執行命令とは、法律を実施するために内容を具体化する命令です。具体例として、宅建業法が挙げられます。
宅建業法では、宅建士が免許の更新を必要とする旨が定められています。
一方で、執行命令である宅建業法施行規則では「90日前〜30日前」と免許更新のタイミングが具体的に記されています。
執行命令が定める内容は、以下の2点です。
- 必要的な事項
- 細目的事項
なお、執行命令には法律の根拠は必要ありません(一般的な法律の授権で足りる)。
つまり、ルールを作るうえで法律の「理由」が問われない種類です。
委任命令=新たに内容を作る
次に委任命令とは、新たに国民の権利や義務の内容自体を創設する命令です。
法律が行政の命令に効果を与える行為は、授権行為と呼ばれます。
本来、国民の権利や義務に関するルールは法律以外では作れません。
授権行為がなされた命令のみ、こうした強制力の働く規制を行えます。
ただし、新たに国民の権利や義務に関するルールを作るため、法律の根拠が必要です。
法律の根拠の有無が、執行命令と委任命令の1番の違いといえます。
ちなみに、これらの問題は公務員試験や行政書士では必ず押さえたいポイントです。これらの試験を受ける方は、下記のテキストを用意するといいでしょう。
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委任命令にかかる判例
委任命令を定める際には、法律の範囲に留めなければなりません。
ただし、委任命令の内容によっては法律の規制を超えてしまうケースがあります。
その場合にルールの合法、違法を決めるのが裁判所の役目です。
ここでは、委任命令にかかる判例を3つ紹介しましょう。
法律の範囲内とされた判例
まずは、法律の範囲内とされた判例を紹介します。
公務員試験レベルの内容では、1つだけを押さえれば問題ありません。
ここで紹介する判例は、サーベル登録拒否事件です。
結論部分が分かっている方も、具体的な内容をもう一度押さえてください。
サーベル登録拒否事件
本来、我々が鉄砲や刀を所持すると「銃刀法違反」で罰せられてしまいます。
一方で、美術品や骨とう品として認められたものに関しては、例外的に所持することも可能です。
ある人物(原告)は、「外国剣(サーベル)」がこれらの品に登録しようと申請しました。
すると、教育委員会は「日本刀のみが該当する」と拒否されてしまいます。
最高裁は、教育委員会の判断が銃刀法の基準になぞらえていると判断しました。
結果的に命令は「合法」と認められ、サーベルは美術品および骨とう品に該当しないと判断されます。
公務員試験のみならず、行政書士や司法試験では「英語」の勉強も欠かせません。手始めに「TOEIC」を受けてみてはいかがでしょう。TOEICに特化したサービスとして、「KIRIHARA Online Academy」をおすすめします。
法律の範囲外とされた判例
次に、委任命令が法律の範囲外とされた判例を紹介します。
ここで取り上げるものが、以下のとおりです。
- 幼児接見不許可事件
- 児童扶養手当施行令の事件
事件の内容と最高裁の判決の双方を押さえましょう。
幼児接見不許可事件
こちらは死刑囚(X)と幼児(C)の話です。
死刑囚Xは、A(女性)の母親と養子縁組を交わしました。
そこで、Aの娘であるCと面会しても良いかを拘置所長に尋ねます。
しかし、拘置所長は旧監獄法施行規則に基づき「拒否」しました。
施行規則には、「死刑囚と幼児は面会してはならない」とあったためです。
この判断を不服に感じたXは、裁判を起こして最高裁まで到達しました。
最高裁の判決では、旧監獄法には面会の時間や回数の制限があるものの、幼児との面会は拒否していないと判断します。
したがって、旧監獄法施行規則は法律の範囲を逸脱しており「違法」とされました。
児童扶養手当法施行令の事件
児童扶養手当とは、ひとり親に対して生活費を助成する制度です。
X(母)が手当を受けながら生活していたものの、父親が認知したことにより受給を止められたケースがありました。
Xは、このような判断を不服に取消訴訟を起こします。
裁判は最高裁まで進み、当機関では児童扶養手当法施行令をチェックしました。
法律を見た場合、「父親の存否だけでは手当の支給を差し止める理由には当たらない」と判断します。
加えて、父から認知を受けただけでは扶養を期待できないとも認めました。
結果的に、父の認知だけで児童扶養手当の支給を停止する施行令の規定は「違法」とされます。
なお、執行命令と委任命令の違いに関してはYouTubeでも紹介しています。
ぜひ、以下の動画を参考にしてください。
まとめ
今回は、行政立法より執行命令と委任命令の違いを解説しました。
執行命令は、法律を実施するために具体的な基準を定める命令です。法律の根拠は必要ありません(ただし、一般的な法律の授権は必要)。
一方で、委任命令は法律の委任に基づいて国民の権利や義務に関するルールを作る命令です。
権利や義務を左右するため、執行命令とは違い法律の根拠が必要となります。
判例の部分もしっかりと押さえましょう。後は公務員試験の過去問でトレーニングしてください。