皆さんは今の日本経済について何か思うことはありますか?
食料品やガソリン価格がどんどん上昇しているものの、賃金が増えずに困っている人も少なくないでしょう。
今回の記事では、日本経済を
「IS-LM分析」を用いて解説します。
1.IS-LM分析とは?
「IS-LM分析」とは
「財政政策」と「金融政策」が金利と国民所得にどのような影響を与えるかを示す理論です。
突然、訳のわからない言葉が出てきて混乱する人もいると思います。
「IS」と「LM」に分けて紹介します。
・「IS」とは
「IS」とは以下の意味を合わせた言葉です。
- 「投資(Invest)」
- 「貯蓄(Savement)」
マクロ経済学では、貯蓄量と投資量は「=」で考えられます。
「貯蓄した分だけ投資する」と捉えるんですね。
こちらは「財政政策」として位置付けられます。
主な担当機関は「財務省」です。
IS曲線は「右肩下がり」で描かれます。
- 利子が上がれば国民所得は下がる
- 利子が下がれば国民所得は上がる
上記の2点を押さえましょう。
また、IS曲線自体を左右に移動する政策もあります。
右側へ移すと一般的に国民所得は上がります。
- 公共事業を拡大する(インフラ整備など)
- 減税
上のパターンが主な具体例です。
ただし、上側にもシフトすることから「利子」も高くなります。
・「LM」とは
一方で「LM」は以下の意味を持ちます。
- 「流動性選好(Liquidity Preference)」
- 「貨幣供給(Money Suply)」
ただ、わかりづらいので言い換えましょう。
- 「貨幣を保有しようとする欲求」
- 「市場に出回っている貨幣の量」
「資産としてお金を持ちたい」と思う人が増えれば、併せて国全体で貨幣の量が増えると仮定した考え方です。
「金融政策」と位置づけられ、主に「日本銀行」が担当します。
日本銀行は「日本で唯一貨幣を発行できる銀行」ですからね。
LM曲線は右肩上がりで描かれます。
金利が高くなれば、利息を多く貰えるので国民所得も上がる現象を示しています。
IS曲線と同じように、金融政策を積極的に進めると右側にシフトすることが特徴です。
具体的な政策は次のものが挙げられます。
- 金融緩和政策(金利を下げる)
ちなみに、日本銀行が多く貨幣を刷れば、その分価値も下落するため金利も下がります。
2.IS-LM曲線のシフト
では、ここで「IS-LM分析」の本格的な計算方法を解説しましょう。
まず、それぞれの線を図のように描いてください。
「IS-LM曲線」とはありますが、ここではわかりやすく直線を用いて解説します。
例えば、財政が公共事業の改革を始めて「IS曲線」が右側にシフトしたとしましょう。
するとLM曲線と接している点が「右上」に移りました。
とはいえ、この状態では国民所得が上がったものの、利子も同時に増えています。
高金利となった場合、企業や個人は「利息」を恐れてお金が借りられません。
借金している間に返済額がどんどん膨れ上がるからですね。
利子の上昇を抑えるべく、今度は日本銀行が「金融緩和」を実行します。
「LM曲線」が右側にシフトすれば、接点を右下に移動させることが可能です。
国民所得はさらに上がり、健全な経済活動が実現できるでしょう。
後は、景気の過熱との兼ね合いを見ながら、上手くバランスを調整するだけです。
世の中は儲かりすぎてもお金の価値が下がって不況に陥るため(インフレーション)、ときには増税したり、金利を上げたりする政策も必要となります。
3.日本経済と流動性の罠
最後にIS-LM分析でも重要な「流動性の罠」を説明します。
今の日本経済において注目されるポイントのひとつが「超低金利」です。
銀行に預けると「0.002%」などと恐ろしく低い数値が現れます。
単位も「%」なので注意してくださいね。
このような低金利が生まれた理由は以下の背景があるといわれています。
- バブル崩壊による反省
- リーマンショック以降の「ゼロ金利政策」
- アメリカの意向に従っている
これらは別記事でまとめる予定ですが、簡単に説明すると日本はかつての歴史のなかで「高金利が生んだ失敗」を繰り返してきたのです。
また、アメリカによる指導もあって超低金利政策に走っています。
日本経済のごとく「超低金利」状態になると「LM曲線」は下記のように描かれます。
もはや横一直線ですね。
つまり、いくら金融緩和政策を行おうとしても「国民所得」は上がりません。
言い換えれば、国民所得の増減が金利に全く影響を受けないのです。
もし、所得を増やしたいのであれば「財政政策」だけが頼りとなります。
国際収支も無視したIS-LM分析の考え方ですが、今の日本経済は「金融緩和」を実施しても国民所得の上昇には繋がりません。
だからこそ、財務省による「減税」や「公共事業の増加」が必要だと考えます。
「金利を上げろ」と声も上がりますが、下手をすると個人や民間企業の消費が落ち込んでしまうでしょう。
財政政策は黒字や赤字にこだわらず、国民所得の倍増に集中することが必要不可欠です。
なぜ、黒字や赤字にこだわる必要がないのかについても、いつかまとめたいと思います。
4.まとめ
ここでは、IS-LM分析についてまとめました。
経済にはさまざまな立場があります。
金融政策だけで賃金の改善が実現できるという見方もあるものの。
やはり、マクロ経済学の基礎に立ち返って動向を見たほうが望ましいでしょう。