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プライマリーバランスの黒字化とは?意味ないは本当なのか

皆さんも、日々のニュースでプライマリーバランス(基礎的財政収支)という言葉を聞いたことがあるかと思います。

財政で頻繁に議論される定義であり、否定的な見方をする方も少なくありません。

この記事では、プライマリーバランスを黒字化させることが意味ないの見解を説明します。

日本の経済を議論する際のキーワードともなるため、内容をしっかりと理解してください。

 

プライマリーバランスとは

プライマリーバランスとは、税収および税外収入と歳出総額から国債費を除いた額(政策的経費)のことです。

簡単に「収入と支出のバランスを見たもの」と言い換えられます。日本語では、基礎的財政収支と呼ばれる考え方です。

プライマリーバランスの内容を掘り下げて説明しましょう。

プライマリーバランスの計算

プライマリーバランスの黒字化とは、支出よりも収入の方が多い状態のことです。式に直すと税収・税外収入−政策的経費>0と表せます。

プライマリーバランスを黒字化させる簡単な方法は増税です。家庭の収支では、何となく黒字と聞くと良いイメージを頭に思い浮かべるでしょう。

しかし、一歩間違えると私たちの生活に大きな負担がのしかかる可能性もあります。

黒字化の目標がデフレに繋がった?

プライマリーバランスの黒字化を目指した施策が、日本でデフレを招いたケースもありました。それが1997年時の消費税率引き上げです。

1986年に消費税を導入された段階では、消費税は3%でした。そこから1997年に社会保障を充実させる観点から5%に引き上げられます。

なお、5%に引き上げたタイミングで地方消費税が導入されました。国税と地方税の双方で納めてもらう格好となります(国4%、地方1%)。

その結果、日本はデフレーション(物価の下落)に陥ってしまいます。人々の消費量が少なくなり、市中に貨幣が回らなくなったためです。

このようにプライマリーバランス黒字化の目標は、国民の生活を苦しめる場合もあります。

黒字化させるメリット

プライマリーバランスが黒字となるのは、税収や資源などで社会が成り立っている状態です。そのため、国債を発行する量が少なくなります。

国債の発行量が減少すれば、日銀が貨幣を余分に刷る必要はありません。黒字化でデフレに進んだことからも、激しいインフレが起きたときには有効です。

今後の物価がどのように伸びるかで、考え方も変わってくるでしょう。

日本のプライマリーバランス

日本のプライマリーバランスについて細かく見ていきましょう。

2022年ベースで見た場合、政策的経費が83.7兆円、税収等は70.7兆円になるそうです。ここで計算すると、プライマリーバランスは13.0兆円の赤字となります。

https://www.mof.go.jp/zaisei/reference/reference-03.html(財務省)

世界各国と見比べると、日本は2021年時点で184位中167位になるようです(対GDP比)。なお、1位はアフリカのリビアです。

www.globalnote.jp

リビアは石油大国であり、豊富な資源を確保できます。一方で、2020年4月のLNA(リビア国民軍)による石油施設の影響で経済政策には大打撃を与えていました。

2020年9月に規制が緩和されて以降は、着実に歳入を伸ばしています。他にも要因はあると思いますが、歳入の劇的な増加が影響を及ぼしたのかもしれません。

 

 

黒字化が意味ない理由

プライマリーバランスの黒字化は意味がないと唱える方は、いくつかの根拠に基づいています。ここでは、その根拠を具体的に説明しましょう。

さまざまな解釈はあると思いますが、1つの見解として捉えていただけると幸いです。

日本の経済状況を考える

世界ランキングを出したのに恐縮ですが、経済は各国の政治や風土を考えなければなりません。

リビアはプライマリーバランス(対GDP比)が1位でしたが、石油大国といった強みは無視できないはずです。

また、プライマリーバランスが赤字状態でも財政破綻のリスクが低いこともあります。これらを踏まえて、日本の経済状況を考えましょう。

日本の国債の使い道を見る

プライマリーバランスの話をするのであれば、国債の使い道を見るのが大切です。

国債にはさまざまな役割があります。お金を借りる先は、主に対外か対内です。

日本の場合は、国債を最も保有している機関が日本銀行です。保有率は約5割となっています。

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf(財務省)

残りの4割は、地銀や生損保などです。海外が日本国債を持っている割合は、わずか7%程度しかありません。

国債を日本だけで消化できれば、厳密にはお金は消えていないはずです。

分かりやすいように「家計」で例えてみましょう。親が子どもにお金を渡しました。子どもがこのお金をコンビニでの買い物に使えば、家からお金は消えてしまいます。

しかし、実家が商売をやっていて、子どもが商品を購入したと考えてください。お金の動きはあるものの、家庭内で回しているだけです。

日本の国債も、ほとんどが国内で交換されています。したがって、赤字といえどもお金が足りなくて困っているわけではありません。

「赤字」の言葉に惑わされないことが大切です。

インフレとのバランスを見る

日本国内で国債は消化されているものの、いくらでもお金を発行していいわけでもありません。激しいインフレーションが起きるのを避けるためです。

どの程度の貨幣を発行すればいいかは、さまざまな見解があると思います。

上述したとおり、かつての日本は黒字化を目指してデフレーションに陥りました。この歴史を踏まえても、無理に黒字化を目指すのは逆に危険です。

現在の経済状況を見ると、CPIの数値ではインフレが発生しているかのように思えます。

ただし、コアコア指数やGDPデフレーターなど、物価を測る数値もまたさまざまです。特にGDPデフレーターでは、1%あたりを前後しています。

インフレ目標は2%が世界水準であるため、黒字化は意味ないとする説も間違いとはいえなさそうです。

 

まとめ

今回はプライマリーバランスを説明しました。

日本では、たびたび黒字化を目指す動きが繰り広げられています。しかし、これまでの政策の中でデフレーションを呼んでしまったのも事実です。

国債の動きやインフレ率を見ても、プライマリーバランスの赤字はそこまで気にする必要はないでしょう。

とはいえ、今後の物価の動きは慎重に見ていく必要はあります。

現在の状況では、プライマリーバランスの黒字化が意味ないとする主張は間違いではありません。