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「税金は財源ではない」は本当なのか?消費税の廃止は可能か

私たちは、普段の買い物で消費税分も同時に支払っています。

消費税は間接税のひとつで、買い物先のスーパーに支払ったうえで納めてもらうものです。毎日の支払いを負担に感じる人もいるでしょう。

特に高額な商品を購入した方は、消費税として納める額も大きくなります。

そこで、最近よく耳にするのが「税は財源ではない」です。何となく税は財源だと認識している方も多いと思います。ここでは、その実態について解説しましょう。

 

税金は財源ではないのか

税は財源ではないと主張する声は、ここ最近で増えたように感じます。まずは、この意見が正しいかを言葉の意味で捉えましょう。

財源の定義を考える

そもそも財源とは何を指す言葉でしょうか。正確な意味は「収入を生み出すもと」です。分かりやすくいえば、金の出所を指します。

国は公共事業や社会保障費を捻出する際に、あらかじめ予算を作っておきます(当初予算)。しかし、予算は基本的にオーバーするものです。

そのため、補正予算を組んで不足分に対処します。国だけではなく、地方も基本的に対応方法は同じです。一定の時期になると、補正予算で役場も残業づくしでした。

予算を作るにあたってコストをどう捻出するかが、「税は財源ではない」の真偽を決めるポイントです。

税金は「歳入」の要素である

私たちが普段納めている税金は、国の会計上では歳入に組み入れられます。

歳入の項目は、大きく分けて「租税及び印紙収入」と「公債」です。そのうち租税及び印紙収入は約6割となっています。

www.nta.go.jp

さらに掘り下げると、消費税は当該項目の中でも3割強の比重を占めています。国の歳出は、歳入と合わせるのが普通です。支出し切れなかった分は、剰余金としてその後の対応は異なります。

結論を急ぐ前に、税金は歳入の一部となる事実は押さえなければなりません。

日本銀行は紙幣を増やせる

日本銀行は、日本で唯一紙幣を発行する権限を持ちます。政府とのやり取りにおいても、極めて重要な制度です。

日本政府が何か政策を始めても、手元にお金がなければ対応が遅れてしまいます。そこで、日本銀行にお金を借りるよう願い出ることが可能です。

方法としては、国債(借金の証書)を発行して紙幣と交換します。国債には種類ごとで期限が定められており、期日が到来したら返還する仕組みです。

なお、長期国債であれば返還期日は50年にも上ります。現段階で発行したら、お金を返す時期には筆者は立派な老人です。ギリギリ生きているくらいの年齢ですね。

そのため、税金以外にも臨時的にお金を調達する方法はあります。「税は財源ではない」と主張される方は、国債が財源だと考えているケースが多いように感じます。

 

 

税金の意義や仕組み

税の概念は、現代社会で生まれたものではありません。律令国家の時代から、人々は税を国に納めています。

「税金は財源ではない」を考えるときは、制度の内容を理解する必要があります。

国に利益を還元させるため

今も昔も、税の役割は大して変わりません。前提は、国に利益を還元させるためです。

現代ではお金が使われていますが、古代の時代は物々交換が基本でした。和同開珎が使われるなど変化もありましたが、税には稲や特産物とさまざまなものが使われています。

特に面白い種類が雑徭です。こちらは「国のために仕事する」という内容の税でした。

生活を支えるべく、少しでも国のために利益を還元させるのが税の狙いです。古代の税の仕組みは、下記の記事でも詳しく記載しているので参考にしてください。

とはいえ、古代と現代では経済の在り方が大きく異なります。管理通貨制度に移行して以来、日銀が通貨発行量をコントロールできるようになりました。

応益負担と応能負担

税金の種類は、応益負担と応能負担の2つです。

応益負担とは、個人の所得にかかわらず一定の利益を得た場合に負担することを指します。消費税は、応益負担の一種です。

所得にかかわらず、5,000円のゲームを購入したら500円の消費税を納めなければなりません。富裕層も一般人も、皆が同じ税率で設定されます。

一方で、応能負担は所得に応じて負担の大きさが変わるタイプです。所得税が応能負担に該当します。

一般的に所得税は累進課税制度が採用されています。所得が大きくなるほど、税率も高くなる仕組みです。

稼ぎが少ない方は、所得税が免除されるケースもあります(非課税)。こうして上手くバランスが保たれているのです。

物価を調整している

税金を説明する上では、物価を調整する役割も外してはなりません。税率の調整は、国の景気にも大きく左右されます。

例えば、税率をあまりにも上げすぎたとしましょう。国に納める分が多くなり、生活するのが苦しくなってしまいます。

この生活が続くと物の売買が行われにくくなり、物価が下がるのが一般的な考え方です。

 

消費税の廃止は可能か

「税は財源ではない」の論争では、必ず消費税の廃止が争われます。

皆さんの中にも消費税を煩わしく思う方がいるかもしれません。ここでは、本当に消費税の廃止ができるか否かを論じてみましょう。

消費税が成立した背景

そもそも、消費税の仕組みがいつできたかご存知ですか?

日本では、1989年(平成元年)に竹下登内閣のもとでスタートしました。当初の税率は一律3%でした。

なお、導入が検討されたのは大平正芳内閣の頃です。まだ導入して30年程度しか経っておらず、歴史的には新しいといえます。

そこから1997年に消費税率が5%まで上昇しました。さらに第二次安倍晋三内閣で8%→10%と段階的に引き上げられます。

消費税が導入された理由

財務省の見解では、消費税は幅広い国民から社会保障の費用を負担させるためとあります。

基本的に社会保障制度は社会保険料で補うのが基本です。

ただし、社会保険料は仕事をしている現役世代が所得に応じて支払います。この状態では、現役世代ばかりが負担を抱えてしまいます。

こうした事態を防ぐべく、消費税が社会保障費に充てる目的で導入されたとのことです。

各国と消費税の関係

この話をするときは、世界各国の消費税の現状を知る必要があります。外国では、消費税は「付加価値税(VAT)」と位置付けられています。

付加価値税とは、生み出される価値に税を納める制度です。例えば原材料200円から500円の料理を作りました。この場合、付加価値は500円−200円で300円です。

付加価値税はこの300円の部分で発生します。

しかし、一般の消費者は原材料費の分も合計して付加価値税を支払います(0→200円)。そのため最終的に支払う額は消費税と変わりありません。

前置きが長くなりましたが、各国の消費税(付加価値税)率を比較してみましょう。

  • スウェーデン…25%
  • フィンランド…24%
  • オーストラリア…10%
  • スイス…7.7%
  • アメリカ…消費税なし(小売課税)

北欧は全体的に高い印象ですが、それ以外の国と比較すると大きな差はないように感じます。

日本より消費税の高い国だけではなく、あらゆる国々の数値を参考にしたいですね。

消費税には使い道がある

消費税の場合は、法律で社会保障費に使うと定められています。

したがって、基本的には社会保障費を構成するもののひとつです。ただし、消費税はあくまで一般財源に数えられます。

一般財源とは使途を定めず、あらゆる目的に利用できる財源のことです。

消費税の場合は、法律で使い道が決められているものの、税の種類上は自由に利用できるタイプとなります。

正直なところ、一般財源の括りにするとややこしく感じる部分です。かつて衆議院で質問されていましたが、答弁の内容は曖昧でした。

法律上では社会保障費に使うことが明確化されており、決算資料を見るとある程度は使われている点もうかがえます。

とはいえ、不明確な部分も多いことは確かであると思います。

消費税は地方税でもある

一般的に消費税は、国税とイメージするかもしれません。しかし、消費税の一部は地方税にもなっています。

地方消費税の税率は、全国で22/78に統一されています。要するに10%を納めた場合、国が7.8%で地方は2.2%です。

国税であれば、他の財源でも何とか対応できるかもしれません。一方で、地方税の場合は各都道府県の行政において欠かせない存在となっています。

一般的に地方消費税は、福祉サービスや学校などの施設に使われます。

地方税は、自治体にとっては欠かせない財源の一種です。「税金は財源ではない」の言葉も、国では数々の捉え方があるかもしれませんが、自治体レベルは当てはまりにくいでしょう。

地方も国を形づくる一部と考える立場に立った場合、「税金は財源ではない」は真実ではないといった結論に至ります(この辺りは見解によって異なります)。

消費税の廃止よりも減税

消費税については、廃止よりも減税を目指すことが良いかなと思います。

まず、消費税は数ある税金の中でも取りやすい種類です。所得の影響にかかわらず、全員が等しく同じ割合で徴収できます。

日本の税収の中でも割合が最も高く、少なからず頼りにしているのは間違いありません。

廃止した場合、他の税の項目で負担が大きくなる可能性はあります。全て国債で賄うとしても、20.3兆円の額を刷らないといけません。

一度廃止すれば再復活は大批判が起こると予想されるため、仮にインフレが発生したときに手が打てなくなるケースも考えられます。

様子を見る上でも、段階的に引き下げていくのが望ましそうです。

 

税金は財源ではないの結論

最後に「税金は財源ではない」の結論部分を解説します。

確かに、現代の制度は日銀に通貨発行権を認めています。政府が国債を発行することで、発行量の調整も可能です。

ただし、日銀があまりにもお札を刷りすぎるとインフレーションを引き起こす危険があります。

世界の国々とのバランスを見ても、税負担の形で国民のお金を使う仕組みは必要です。

公共事業や社会保障に税を充てているため、原資の一部になっているのは事実でしょう。

したがって、事実上は「税金は財源」となっているといえます。

とはいえ、何か大きなイベントがあったときには臨時的に国債が刷られるのも事実です。税金のみが財源ではありません。

いくら国の予算が苦しくとも、税金を多く取ろうといった政策は間違えています。国債を上手に使い、経済成長で税額が自然に増える努力が欠かせません。

財務省がよく持ち出すプライマリーバランスにも、疑いの目をかけた方が賢明です。

この辺りは、人によって解釈の異なる部分です。今後もさまざまな視点から議論を必要とするでしょう。