ミクロ経済学を勉強する上では、生産者からの目線も大切です。つまり企業側の視点に立つことで、市場の状況をさらに深く分析できます。
今回勉強する内容は、完全競争と不完全競争の違いです。これらの違いを理解するだけで、ミクロ経済学の計算への理解度が大きく変わります。
また、利潤最大化の計算の話も併せて触れたいと思います。それぞれの重要となるポイントをしっかりと押さえてください。
完全競争と不完全競争の違い
まずは、完全競争と不完全競争の違いを解説します。
企業は、日々の業務の中で多くのライバルと戦っています。業績を上げるには、多くの顧客から商品やサービスを買ってもらうことが重要です。
ミクロ経済学では、市場を大きく完全競争市場と不完全競争市場の2つに分けています。それぞれの特徴を押さえてください。
完全競争=需給が必ず一致
完全競争とは、需要と供給が必ず一致する世界です。実際に説明すると、さまざまな概念があります。
主な概念をまとめたものがこちらです。
- 多くの人が市場に参入できる
- 情報収集の差別が起こらない
- 生産量や購買量の変化が市場に影響しない
さらに、企業が勝手に価格を決められない世界と押さえてください。価格は、需要と供給で全て決められます。
この辺りも押さえ、具体的な解説を見てみましょう。
完全競争ではP=MCが成立する
完全競争の世界では、価格(P)と限界費用(MC)が一致するといった法則があります。
なぜなら、完全競争市場は利益を出し続けるまで生産活動を続けることが前提だからです。
式で表すと「P=MC」となります。
限界費用とは、生産量が1単位増えたときの総費用の変化量を指します。総費用を生産量で微分して求められる費用です。
定義の説明だけでは、何を言っているか分からないでしょう。もう少し噛み砕いて説明します。
P=MCが成立する具体例
皆さんは電気屋さんになったつもりで考えてください。
テレビ1台を10万円で販売するとします。見事に売ることができたら、お客さんから10万円がもらえます。
しかし、必ずしも10万円が利益になるわけではありません。なぜなら、テレビを製造する際にお金がかかるからです。
本当は人件費や電気代などの費用もありますが、分かりやすくここでは製造費のみで考えましょう。
1台の製造で3万円かかるとします。
その1台のテレビが売れた場合、利益は
「10万円-3万円」で7万円です。
しかし、1台の製造のみでは多くの顧客を集められません。そこで、より多くのテレビを製造します。
一方で、あまりにもテレビを作りすぎると費用が積み重なってしまいます。費用が販売価格を超えてしまったら、たとえ売れても利益が出せません。
そこで、製造の基準となるのが限界費用が価格に到達するときです。基本的には、生産量が増えると限界費用は次第に下がります。
- 0→1台で3万円
- 1→2台で2万5,000円
- 3→4台で2万2,000円
これらを組み合わせ、販売価格と同じ金額になるまでが利益を出せる範囲です。
完全競争は、生産量が増えても価格を変えずに販売できると考えます。そのため、「P=MC」の式が成り立つのです。
実際に完全競争市場を作り出すのは不可能に近いものの、ミクロ経済学では研究材料として重視されています。
不完全競争=現代の状態
不完全競争は需給が必ずしも一致しない市場を指します。現代の経済状況をより正確に表している概念です。
不完全競争には、どのような特徴を持つのかを具体的に解説しましょう。
企業が価格を決定できる
不完全競争市場は、需要の変化に応じて供給量も変わる世界のことです。
ある商品の価格が下がれば、購入する人の数も増えるでしょう。反対に、価格が上がると購入量は減ってしまうのが基本です。
特に、現代社会では寡占市場が存在します。
主な例が携帯業界であり、菅義偉前総理が介入するまでは大手三社が牛耳っていました。この影響により、携帯料金がなかなか下がらなくなってしまいます。
参入する会社が少なければ、暗黙の了解でそれぞれが価格を高めに設定できるからです。
その他の業界では、ある程度は需要と供給に左右されます。とはいえ、価格を設定する権利が奪われたわけではありません。
このように、現代では企業側が需要と供給にかかわらず価格が決められるのが一般的です。
完全競争市場の例って何かある?
一般的には「ガソリン」だね。売り手も買い手もたくさんいて、差別化を図るメリットがほとんどないんだ。
不完全競争はMR=MCが成立
不完全競争市場では、MR(限界収入)とMC(限界費用)が一致します。
限界収入とは、生産量が1単位変化したときに収入がどの程度変わるかを示した値です。
テレビを作り続けるとき、費用の増加分と収入の増加分が最低限同じ値になるよう生産量を決めなければなりません。
とりあえずは、完全競争と不完全競争の違いをしっかりと押さえましょう。
利潤最大化の計算
完全競争と不完全競争の双方においても、重視される概念が利潤最大化です。
ミクロ経済学の問題でも、基本的な部分として問われる可能性があります。
利潤最大化の概要も踏まえ、計算方法について説明しましょう。
利潤=利益と同じ意味
公務員試験レベルでは、利潤は利益と同じ意味だと覚えてしまって問題ありません。
定義を説明すれば、企業の所得になる部分です。10万円のテレビを3万円のコストをかけて売ったら、7万円の利益が出ます。
ミクロ経済学上の計算式で表すと
「π(利潤)=TR(総収入)-TC(総費用)」です。
利潤最大化=行動基準
利潤の考え方に基づき、企業の生産活動をどこまで進めるかを示したモデルが利潤最大化です。
利潤を出し続けるのであれば、企業はより多くの製品を作ります。たくさん売れた方が、儲けも多く得られるからです。
とはいえ、闇雲に生産活動を続けるとコストの負担も大きくなってしまいます。
これらのバランスを見て、企業は一定の行動基準(利潤最大化)を導き出します。
利潤最大化を示す一般的なモデルが、完全市場と不完全市場で用いる計算式です。
- P=MC
- MR=MC
要するに上で散々説明した内容は、すべて利潤最大化に基づいています。
計算問題で問われるケースが多いため、しっかりと押さえておくといいでしょう。
利潤最大化の求め方
完全競争や不完全競争の違い、利潤最大化について細かく説明しました。
ここからは、実際の公務員試験に使える内容を紹介します。まずは、上に示した練習問題を解いてみてください。
試験では、数式とともに「利潤最大化したときの最適な生産量を求めよ」という問題が出題されます。
計算時のチェックポイント
ここで紹介する練習問題では、総費用曲線が示されています。
ポイントとなるのが、利潤最大化を指す公式です。つまり、総費用を限界費用に直さなければなりません。
ミクロ経済学に慣れてきた方は、「限界」の文字を見ただけで計算方法がひらめいたはずです。練習問題の解き方について解説しましょう。
生産量の求め方
まず、問題に「完全競争市場」と書かれています。したがって、利潤最大化の式は「P=MC」です。
こちらの数式を頭に入れ、解いていかなければなりません。
次に、総費用を限界費用に直します。このときに使われる計算方法が微分です。微分については、こちらの記事も参考にしてください。
ミクロ経済学で「限界」の文字があったら、微分をすぐに想像しましょう。
限界費用を出したら、価格とイコールになる数式を作ります。あとは、2次方程式の要領でXを求めるだけです。すると、画像のとおりになるでしょう。
慣れてくればスムーズに答えを出せます。何度も練習問題を繰り返してくださいね。
まとめ
今回は、完全競争と不完全競争の違いについて解説しました。
ミクロ経済学の基本となる概念です。両者の特徴をしっかりと押さえてください。
- 完全競争は需給が必ず一致
- 不完全競争は企業が価格を決める
加えて、利潤最大化の計算方法も勉強しました。企業の行動基準となる概念で、限界まで生産活動を続けるラインのことです。
完全市場と不完全市場では、利潤最大化を以下のように表します。
- P=MC(完全競争)
- MR=MC(不完全競争)
限界費用を求めるときは、微分の計算が必要です。ミクロ経済学では頻繁に出てくるため、しっかりと正答できるように練習してください。