どーも、ヤマトノです。
経済の議論において、政府支出がよく使われているなと感じています。
実際にGDPを分析するうえでも、政府支出は重要な存在です。
一方で、国の対策としては減税策も挙げられます。特に消費税が下がるのを望んでいる方も少なからずいるでしょう。
ここでは、政府支出と減税の効果について紹介します。
あわせてマクロ経済学用語でもあるクラウディングアウトも確認しましょう。
政府支出と減税の効果
政府支出と減税には、それぞれGDPを増加させる働きがあると期待されています。
GDPを求める計算式は次のとおりです。
Y=C+I+G
日本の場合は開放経済なので純輸出(XM-IM)も計算式に含まれます。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
今回は閉鎖経済を例に出し、政府支出と減税の効果を見ていきましょう。
政府支出=経済成長が狙い
国が行う政府支出は、経済成長を狙いとしています。種類は大きく分けて2通りです。
- 政府最終消費支出
- 公的固定資本形成
それぞれの内容を解説しましょう。
政府最終消費支出
政府最終消費支出を簡単に言えば、公務員の給料や政府の仕事に必要な消費のことです。
公務員の給料は、社会の景気によって左右されます。ボーナスアップに不満を述べる方もいますが、社会には必要な動きです。
他にも、医療が必要な方へ薬や包帯を支給することも該当します。
一方で、社会保障として支給される生活保護(現金)や失業手当は政府支出ではありません。
家計を支える役割を担うものの、GDPの成長とは無関係です。
一律給付金を配る行為も、GDPには直接影響を与えないとされています。
そもそも、GDPは国内で生み出された付加価値の合計のことです。
給付金は単純にお金を移転させただけで、新たな価値を生み出していません。
積極的に投資や消費に使うのなら間接的な影響はあるものの、念のため別にして覚えておきましょう。
公的固定資本形成
公的固定資本形成とは、国が行うインフラや住宅への公共投資を指します。
皆さんも車で工事中の道路を通ってしまい、不便に感じた経験があるでしょう。
しかし、国のGDPを高めるには公共事業も重要と考えられています。
交通の改修は、奈良時代あたりの頃から経済活動に良い影響を与えていたようです。
現代社会でも、インバウンドの観点から公共事業の効果に注目が集まっています。
いろいろな見解はありますが、とりあえず問題を解くときは政府支出がGDPを増加させると捉えてください。
減税も国民所得を高める
政府支出の他にも、減税が国民所得を高めるのではと期待されています。
皆さんは良い印象を持っていないかもしれませんが、増税そのものは悪いわけではありません。
仮に激しいインフレーションを引き起こした場合、収束させる方法として採用されるケースもあります。
減税と増税は、国の経済状況によって左右される政策です。
とはいえ、私も現在の日本では増税政策は良くないと思っています。
計算して政策を考えよう
政府支出と減税の効果を実際に計算して求めましょう。公務員試験で問われやすいため、方法をしっかりと押さえるのが大切です。
ここで1つ問題を出してみます。以下の例題を条件に、正しい選択肢を選んでください。
国民所得にどのような影響を与えるか
Y=C+I+G
C=0.6(Y-T)
それぞれの内容を見ていきましょう。
政府支出を計算した場合
問題文には、政府支出を2兆円出したと書かれています。この条件を用いて、国民所得の額を求めてみましょう。
まずは、計算式から変化していない要素を除外します。
⊿Y=⊿0.6(⊿Y-⊿T)+⊿I+⊿G
政府支出を求める際には、⊿Iのほか⊿Tも0にしてください。
すると⊿0.4Y=⊿Gとなり、
⊿Y=2.5×⊿Gとなるはずです。
つまり、政府支出乗数が2.5と求められます。
政府支出2兆円と計算すると
2.5×2=5兆円が国民所得の変化分です。
租税を計算した場合
同じ要領で、租税乗数も計算してみましょう。
次は⊿Iに加え、⊿Gを0と仮定します。政府支出と租税は別々に解いてくださいね。
⊿0.4Y=-0.6×⊿T
⊿Y=-1.5⊿×⊿T
2兆円の減税(-2兆円)であるため、代入するとY=3兆円と求められます。
まとめると
- 政府支出では国民所得が5兆円増える
- 減税では国民所得が3兆円増える
です。
したがって、政府支出の方が減税よりも国民所得を高められることが分かります。
クラウディングアウトとは
最後にクラウディングアウトを紹介します。
クラウディングアウトとは、積極的な財政出動が民間投資を圧迫してしまう現象のことです。
この話には、利子も関わってきます。
クラウディングアウトの仕組み
クラウディングアウトについて知るには、グラフで解説した方が分かりやすいです。
こちらはIS-LM分析と呼ばれるモデルでした。詳しい内容は以下のリンクを参考にしてください。
政府支出や減税は財政出動の一種であるため、IS曲線を右に動かします。
一見、右側に動いたことで国民所得が増加したように見えるでしょう。
しかし、同時に縦軸の利子率の増加も招いています。
利子が高くなると、企業は積極的に銀行からお金を借りようとしません。
返済する際のリスクが高まるからです。このように財政出動は、⊿Iを減少させる恐れがあります。
政府支出と減税の双方とも、クラウディングアウトを引き起こす作用だと押さえてください。
日本の経済に当てはめると
この現象がある場合は、積極的な政府支出や減税が難しいといえます。
では、日本の経済を考えたときに双方の策を取ることは不可能なのでしょうか。
クラウディングアウトの効果を見るには、金融政策も捉える必要があります。
すると、もう1つの答えが見えてくるのです。
金融政策で防ぐことが可能
政府支出と減税を行い、IS曲線を右に移動すると利子が高くなりました。
この状態では、結局元の位置に戻ってしまう恐れがあります。
ここで、クラウディングアウトを防ぐ作用として欠かせないのが金融政策です。
貨幣供給量の増加や金利の引き下げを行えば、LM曲線は一般的に右へ移動します。
すると、利子率を下げながら国民所得も増加できました。
LM曲線を右に動かせば、IS曲線を移動させても利子率は元の位置に戻るだけです。
なおかつ、国民所得をさらに増やすメリットもあります。
無論、あくまで理論上の話ですが、金融政策と組み合わせることでクラウディングアウトを防げます。
流動性の罠では発生しない
LM曲線が横軸と水平になる(ゼロ金利状態になる)現象が流動性の罠です。
流動性の罠であれば、いくら政府支出や減税を行っても利子率は上がりません。
現状の日本では、金利がGDPデフレーター換算でも1.2%を推移しています。
ゼロ金利政策の終了に伴い、流動性の罠からは脱しました。
そのため、2023年現在の日本には当てはまりませんが、少し前までは政府支出と減税をしても利子率は上がらなかったと想定できます。
日本は、基礎的財政収支に重きを置いているため、財政出動は控えていました。
個人的な意見にはなるものの、増税の判断は時期尚早だったかなと思っています。
基礎的財政収支のお話は、こちらの記事をお読みください。
まとめ
今回は政府支出と減税の効果について紹介しました。
どちらもGDPを増やす際に必要な取り組みだと考えられています。
乗数効果も計算に用いるため、公務員試験突破に向けて勉強を進めてください。
また、クラウディングアウトについても取り上げてみました。
IS曲線との兼ね合いもあり、政府支出や減税も金融政策を進めてからすべきだといえます。