公務員試験の民法では、連帯債務の内容が問われることもあります。この分野を勉強するうえで、特に押さえたいポイントが相対効の覚え方です。
この記事では、連帯債務の相対効の覚え方を解説します。イメージさえできれば、特に難しい内容でもないので公務員試験を受験される方はしっかりと押さえてください。
連帯債務とは
まずは、簡単に連帯債務の仕組みを紹介します。連帯債務とは、複数人の債務者が独立して1つの債務を履行する制度のことです。図で表すと以下のようになります。
仮に1人の債務者が全額を弁済したら、他の連帯債務者に対して求償権を行使できます。連帯債務と似た制度がいくつかあるので、これらを区別しながら覚えましょう。
分割債務との違い
連帯債務と間違いやすい種類として、分割債務が挙げられます。分割債務とは、複数人の債務者がそれぞれ等しい割合で債務を履行することです。例えば、以下の図を見てください。
仮に90万円の借金に対して3人の債務者が分割債務を取ると、各々30万円ずつ返済します。債務者側からすれば、この手段の方が平等で望ましいと感じるでしょう。
しかし、自分がお金を貸している側(債権者)の立場に立って考えてみてください。
AさんやBさんは返済能力があったとしても、Cさんが無職で借金地獄に陥っていた場合、残りの30万円を回収できなくなる恐れがあります。
連帯債務は全員平等の返済も可能ですし、誰か1人だけが全額返すのもOKです。
債権者の保護に重点を置くのであれば、連帯債務の方が無事にお金が戻ってきやすくなります。
連帯保証との違い
連帯債務と連帯保証も、名称は似ていますが全く異なる制度です。連帯保証は保証債務の一種であり、図では以下のように表せます。
連帯保証において、本来の返済者は主たる債務者です。債権者はあくまで主たる債務者にお金を貸しているのであり、2人のやり取りで解決するのが望ましい形となります。
しかし返済に苦しんだ場合、お金を借りた側が突然夜逃げすることもあるかもしれません。行方不明になったら、債権者はお金を取り戻せず生活に大きな支障が出ます。
こうしたケースが起こったとき、主たる債務者の代わりに返済義務を負うのが連帯保証人です。
連帯保証人は債権者に返済の要請があったら対応しなければならず、「お金を借りた張本人と最初に掛け合ってくれ」という抗弁が使えません。
上記のような催告の抗弁権や検索の抗弁権が使えないのが、通常の保証人との違いです。「連帯保証人にはなるな!」といわれるのも、連帯保証人には非常に不利な制度となっているのが要因として挙げられます。
このように連帯債務と連帯保証は、制度の内容は全然似ていません。仕組みを少し調べれば、これらを混同することはほとんどないでしょう。
連帯債務の相対効と絶対効
連帯債務を勉強する際には、相対効と絶対効の区別を付けなければなりません。
相対効とは、債権者とのやり取りで生じた効果が他の連帯債務者に及ばないことです。一方で絶対効は、他の債務者にも共通して及ぶ効果を指します。
言葉の意味をある程度押さえたうえで、相対効と絶対効が働くケースを取り上げましょう。
連帯債務は相対効の原則が働く
連帯債務に関しては、基本的に相対効の原則が働きます。1人の債務者が債権者とのやり取りで生じた効果は、通常であれば他の債務者には及ばないと考えましょう。
その理由は、連帯債務があくまで一人ひとりの債務者と別個に交わした契約であるためです。仮にTさんとAさんの契約が解消されたとしても、BさんやCさんには関係ありません。
そのため、TさんとBさん・Cさんの間で引き続き連帯債務は継続します。
絶対効の例外もある
相対効の原則を貫くと、逆に運営上で支障が出るケースもあるでしょう。こうした場合には、例外として絶対効を認めることもあります。
絶対効が認められる種類には、以下のような例が存在します。
- 相殺
- 更改
- 混同
他にもいくつかありますが、最低限上記3つは覚えるようにしてください。
相殺:債権は消滅する
相殺とは、お互いに債権を持っている状態にあって打ち消し合うことを指します。
例えば、甲が乙に100万円を貸したとしましょう。本来は返済しなければなりませんが、ある日甲が車を運転していたら誤って乙を轢いてしまいました。
乙にかかる慰謝料が諸々で100万円に到達したとします。
乙の立場であれば「慰謝料は払わなくていいから借金をチャラにしてくれ」と相殺することが可能です(甲からはできません)。
相殺は絶対効が働くため、他の連帯保証人にも効果が及びます。
仮にA〜CがTに100万円の借金を負っており、Aと30万円の範囲で相殺が生じたらBやCの返済すべき額は70万円まで引き下げられます。
更改:債権は消滅する
更改とは、債務の要素に変更が生じることです。具体例として以下のケースが挙げられます。
- 給付の内容が変わった
- 債務者・債権者が別の人になった
中でも、甲が乙にお金を貸していたものの「全額を返す代わりにその宝石が欲しい」といった状況がイメージしやすいでしょう。
もしTとAの間で更改が発生した場合、BとCの債務は消滅します。
新しく生まれ変わった債務についても、BとCは責任を負う必要がありません。TとB・C間のやり取りはあくまで旧債務に限定されたものであり、新債務とは無関係だからです。
混同:弁済したとみなす
混同とは、債権や債務が同一人物に帰属することです。
お金の貸し借りでいえば、親が債権者で子が債務者の場合に混同が生じるケースもあります。親の死亡により、子が相続するといった事例が主なパターンです。
仮にTとAの間で混同が生じると、BやCは弁済をしたとみなされます。そのため、連帯債務を履行する義務はありません。
連帯債務は絶対効を先に覚えよう
連帯債務を勉強するときは、絶対効のケースから先に覚えた方が賢明です。絶対効は内容が絞られるため、まずは記事で紹介した3つのパターンを押さえましょう。
一方で相対効の例は、債務の免除や時効の完成あたりが問われやすいかなと思います。
とはいえ、相対効の3点以外のケースが絶対効にあたると押さえれば簡単です。
過去問も上手く活用しながら、両者の違いをしっかりとマスターしてください。