法律行為をする際に、期間との関係をしっかりと考慮しなければなりません。民法の期間の計算方法は、時効にも大きく関わる内容です。
この記事では、主にどのような計算パターンがあるかを解説します。起算点と満了点の違いについても取り上げるので、公務員試験を受ける方も必見です。
なお、時効については下記の記事で詳しくまとめています。こちらも合わせて参考にしてください。
期間の計算パターン
民法に定められた期間を計算する場合、大きく分けて2つのパターンがあります。
- 秒〜時間
- 日〜年
同じ法律行為でも秒〜時間単位か、日〜年かで計算方法が異なります。実際に契約を結ぶ際には、これらの違いを意識してください。
主に異なるのは、いつから期間がスタートするかです。こちらの内容については、後述の「起算点と満了点」でまとめます。
起算点と満了点
民法の期間を計算する際には、以下の2点を必ず押さえてください。
- 起算点(民法139〜140条)
- 満了点(民法141〜142条)
起算点は期間の開始地点、満了点は終了地点を指します。設定の仕方により考え方が変わるので、それぞれの違いを区別することが重要です。
起算点
起算点については、民法139条と140条に規定されています。それぞれの条文をご覧ください。
第139条 時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。
第140条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
起算点は、主に秒〜時間と日〜年で細かく異なります。
秒〜時間の場合
秒〜時間で期間を定めた場合は、起算点の考え方も簡単です。即時から起算するため、その瞬間から計算されます。
午前9時〜正午12時を期間とする場合、起算点は午前9時となります。短時間であれば、期間を定めた瞬間にスタートした方が自然であるためです。
日〜年の場合
一方で、日や月、年で定めた場合は初日を起算点に算入しません。この考え方が初日不算入の原則です。
期間を3日間で設定したと仮定しましょう。民法の考えとしては、3日とも丸々24時間の長さがなければなりません。
初日も含めてしまうと、期間が設定されるタイミングによって差異が生じます。午前9時と午後9時では、同じ日でも12時間の開きがあります。
タイミング次第で有利、不利が出ないように初日を含めないのが一般の考えです。
しかし、例外として「期間が午前0時から始まる場合」は初日も起算点に算入します。
満了点
満了点は、その名の通り期間が終了する日です。日・週・月・年の期間の満了は「末日の終了をもって」と定められています。
第141条 前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。
つまり、満了日の「午後11時59分59秒」までが期間として計算が可能です。満了点を押さえるうえでは、主なルールを2点押さえてください。
末日が休日だった場合
期間の満了点の計算において押さえたいポイントのひとつが、末日が休日だった場合です。民法の定めでは、末日が休日・祝日なら期間の終了は翌日になります。
例えば、期間が「5月15日(午後)から1ヶ月」と設けられたとしましょう。初日不算入の原則により、起算点は5月16日です。
通常であれば、満了点は6月15日です。しかし、6月15日が日曜日だったとします。民法のルールに従えば、満了点は6月16日(月)まで延びます。
ただし、この規定が適用されるのは休日に取引しない慣習がある場合のみです。休日や祝日関係なく取引する地域であれば、問題なく満了点として扱えます。
暦に従って決める
民法の期間は、暦に従って決めるのが原則です。
第143条
1 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
例えば、期間が以下のように設定されたとします。
- 7月15日正午から1ヶ月
- 2月15日正午から1ヶ月
7月15日正午から期間を設定する場合、初日不算入の原則により起算点は7月16日となります。7月16日の1ヶ月後は8月16日です。ちなみに同じ日にちのことを応当日と呼びます。
民法のルール上、満了点は基本的に応当日の前日です。そのため、7月15日正午〜を期間とする際の満了点は8月15日に設定されます。
一方で、2月15日正午から期間を設けた場合も、翌日スタートで満了点は3月15日です。7月は31日ありますが、2月は通常28日しかありません(うるう年は29日)。
しかし、期間を1ヶ月と定めたときは民法のルールとして日で換算しないこととされています。したがって、日数関係なく起算点の翌月が満了点となります。
また、5月31日を起算日に1ヶ月間の期間を設定したとしましょう。通常であれば、応当日は6月31日です。ただし、暦には6月31日は存在しません。この場合は、6月末である6月30日が満了点とされます。
まとめ
今回は、民法の期間の計算方法について詳しく解説しました。いろいろと掘り下げましたが、公務員試験では当該分野はあまり問われません。
しかし、時効の内容を勉強する際に期間の考え方が重要になります。また、今後の人生においても活用するタイミングがあるかもしれません。
特に市役所や県庁で勤務すると、部署によっては期間の計算方法を仕事に使うケースもあります。公務員を目指すのであれば、知っておいて損はありません。
民法に記載されている内容を押さえ、期間の計算を自分自身でもできるようにしてください。