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取得時効と消滅時効の違いとは?時効の援用や利益の放棄も解説

皆さんも「時効」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。刑事ドラマでよく使われますが、民法でも重要なテーマのひとつです。

ここでは、主に取得時効と消滅時効の違いを中心に解説します。あわせて、時効の効力や援用の意味も説明しましょう。

公務員試験でも重要なテーマとなるため、しっかりと押さえてください。

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取得時効と消滅時効の違い

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まずは、取得時効と消滅時効の違いについて見ていきましょう。名称だけではなく、具体的な制度の違いも覚えることが大切です。取得時効と消滅時効の仕組みを詳しく紹介します。

取得時効=権利を取得できる

取得時効は、物を一定期間占有していた方が所有者となる制度です。

例えば友達のカメラと知りながら22年間占有したAさんを例にしましょう。取得時効は、善意か悪意かで期間が次のように変わります。

  • 善意の所有が10年間
  • 悪意の所有が20年間

善意と悪意の違いはすでに押さえていると思いますが、不安な方は下記のリンクから確かめてください。

Aさんはカメラを取得できるか

Aさんの場合は、「友達のカメラ」と知っているため悪意の占有者です。先程も説明したとおり、悪意者の場合は20年間物を占有することで所有者になる権利を得ます。

Aさんは、22年間カメラを占有しています。つまり、時効はすでに過ぎている状況です。これらをまとめると、Aさんは友達のカメラを所有できるとわかります。

取得時効が適用される対象

取得時効が適用される対象は、所有権だけではありません。所有権に付随する地上権や地役権といった用益物権も対象の一つです。

地上権は他人の土地を建物等の設置に使う権利、地役権は他人の土地を通行に使う権利を指します。ただし、留置権や抵当権、占有権は対象とならないので注意しましょう。

地上権や地役権の内容については、以下の記事にもまとめています。こちらも併せて参考にしてください。

取得時効と果実の関係

土地を所有する際に併せて農作物不動産収益も手に入れることもあります。これらを果実と呼びますが、同じく取得時効成立したら新たな所有者が権利を行使できます。

時効の前に果実が発生していた場合も、権利行使の考え方は同じです。取得時効で所有者となった方は、はじめから所有していたものとみなされます(原始取得)。

消滅時効は権利が消滅する時効

消滅時効は、反対に期間の経過で権利が消滅する制度です。ここでは「借金の返済を15年以上要求しなかった」ときを想定して説明しましょう。

消滅時効の仕組み

消滅時効の制度は下記の通りです。

  主観的期間 客観的期間
債権 5年 10年
債権・所有権
以外の財産権
20年
生命・身体への
損害賠償請求
5年 20年

「借金の返済を15年以上要求しなかった」ケースに当てはめると、借金の返済は債権に該当します。請求できるときから10年以上が経過しているため、返済を要求する権利が消滅していると考えてください。

消滅時効の対象

特に狙われやすいポイントとして、所有権は消滅時効の対象になりません

併せて所有権に基づく物権的請求も消滅時効の対象外となっています。例えば「知らない人が勝手に土地へ建物を建てようとしているのを止める」ような権利を指します。

ほかにも、留置権や占有権も消滅時効の対象になりません

一方で地役権や地上権、抵当権は消滅時効にかかります。「債権や所有権以外の財産権」に該当するため、期間は請求できると知ったときから20年です。

抵当権の場合は制度が複雑であり、抵当権設定者(債務者)が消滅時効を主張することはできません。

短期消滅時効にあたる債権が、判決や裁判上の和解で確定した場合の期間は10年です。

消滅時効の起算点

消滅時効の始まり(起算点)は、いつからカウントされるかを以下にまとめました。

  起算点
確定・不確定期限
のある債権
期限到来時
期限を定めない債権 債権成立時
不法行為 不法行為時
履行不能時の
損害賠償
履行を請求されたとき

ほかにもありますが、まずは上記の内容を優先的に覚えるとよいでしょう。

取得時効と消滅時効の違いをおさらいする際の、おすすめのテキストを紹介します。

テキストや問題集はひととおり揃えるようにしましょう。

 

 

 

時効の援用とその効力

時効は期間が過ぎることで、自動的に発動するわけではありません。時効の効力を主張するには、自ら援用(意思表示のこと)」をしなければなりません。援用によって、どのように効力を発揮するかを詳しくまとめましょう。

時効の援用

時効の援用の仕組みについて説明している図

時効を援用できる人は、当事者に限られています。その理由は、権利を受けられる当事者の意思を優先的に尊重する必要があるためです。

ただし当事者は、必ずしも本人に限られるわけではありません。消滅時効においては、保証人・物上保証人・第三取得者・その他正当な権利を有する者も対象です。

時効の利益の放棄

時効の利益の放棄について説明している図

時効を援用せず、効力を発動させない意思表示を時効の利益の放棄と呼びます。利益の放棄は、時効の完成前にはできない点を必ず覚えてください。

借金を抱えている債務者は、利益を放棄すれば債権者に返済をしなければなりません。つまり時効完成前にも認めてしまうと、債権者が事前に債務者を脅すことで、利益の放棄を強制できてしまうわけです。

このような権利の濫用を防ぐためにも、時効の完成後に限定されています。

時効の効力

時効を援用した場合、効力は起算日にさかのぼります。先程用いた「友達のカメラを22年間持っていたAさん」の例で説明しましょう。

たとえ悪意でも、20年以上カメラを占有しているため時効で所有者となれる旨を説明しました。この場合、Aさんは22年前からカメラを所持していたと認められます。

時効の起算点は、当事者が好き勝手に設定できるものではありません。勝手に起算点を変更されると、誰が権利を持っているかが客観的にわからなくなるためです。

 

取得時効・消滅時効まとめ

今回は、以下の内容について説明しました。

  • 取得時効や消滅時効の違い
  • 時効の効力と援用

まずは、取得時効と消滅時効の違いをしっかりと押さえなければなりません。加えて、時効が適用される期間や範囲を答えられるよう準備しましょう。

時効は、他にもこのような記事を書いているため参考にしてください。