日本の経済活動を捉えるには、貨幣需要の仕組みをマスターすることが大切です。我々国民は、さまざまな動機に従って貨幣を保有しています。
この記事では、貨幣需要の3パターンに挙げられる取引的動機・予備的動機・投機的動機を押さえます。なぜ、人々が貨幣を持つのかも踏まえて解説しましょう。
公務員試験で、専門科目のマクロ経済学も出題分野に入っている方におすすめな記事です。
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・それぞれの動機がどの要素に依存するか
貨幣需要の3パターン
(※イメージ画像)
貨幣需要には、大きく分けて3つのパターンが考えられます。
- 取引的動機
- 予備的動機
- 投機的動機
あまり聞き馴染みのない言葉であるため、何について書いているか理解しにくい方もいるでしょう。これらの3つの動機を具体例も用いながら解説します。
取引的動機=買い物したい
取引的動機は、買い物する目的で通貨を保有している状態です。日本も含め、世界では全体的に通貨が使われています。
衣食住と生きるために必要なインフラを整えるには、お金をいくらか持たないといけません。貨幣需要の中でも、極めて一般的な動機の一種です。
予備的動機=リスクヘッジ
予備的動機は、不測の出費に備えるため通貨を保有するような心理状態です。貨幣需要の基本は取引的動機であるものの、貯金の全てを使い果たす人はあまりいないでしょう。
不測の出費に備え、いくらかお金を残す人が多いはずです。このようなリスクヘッジの目的でも、貨幣需要が見られます。
投機的動機=資産の保有
投機的動機は、資産を保有するために通貨を持ちたがる心理状態です。今の世の中、通貨も金や銀、プラチナと同じように資産として扱われます。
仮に全てのお金をプラチナに変えたとしましょう。プラチナは金と比べると安定性が低く、ハイリスク・ハイリターンな投資になりやすい点が特徴です。
全ての通貨を交換すると、資産が一気に失われる恐れもあります。そのため多くの人が、資産保有の目的で通貨を保有しています。
取引的動機の分析
3つの貨幣需要を押さえたら、各動機を経済学的に分析しましょう。はじめに取引的動機の分析から行います。グラフを用いて説明するため、図もしっかりと参考にしてください。
取引的動機は所得に比例
取引的動機のポイントは、所得(国民所得)に比例して変化することです。以下の図を用いて解説しましょう。
縦軸に貨幣需要量(L)、横軸に国民所得(Y)をとります。所得に比例するため、取引的動機を示すグラフは右肩上がりに描けます。
取引動機が所得に比例する理由は、単純にお金が増えると多くのモノが買えるためです。
所得が100万円の人と、1000万円の人であれば後者の方がたくさん買い物ができます。宝石や車といった高級品にも手が出しやすいでしょう。
特に問題なくグラフの構造をイメージできるはずです。
予備的動機も含まれる
取引的動機を見る際には、基本的に予備的動機も合わせて分析されていると考えてください。不測の出費に備える目的でも、取引で使うお金には変わらないためです。
予備的動機も、取引的動機と同様に所得に依存する特徴を持ちます。それぞれの動機の場合は、貨幣需要の動き方も同じであると認識しましょう。
投機的動機の分析
取引的動機と予備的動機は、主に貨幣需要と国民所得から分析すると説明しました。ここでポイントとなるのが投機的動機の分析方法です。
資産として管理するのが目的の場合、所得を軸に考えるのは手段として望ましくありません。所得と資産はほとんど同じ意味を指すためです。
要するに、投機的動機では「なぜ人が通貨を持つか」をベースに考えます。この考え方を踏まえて、分析方法も押さえてください。
人が通貨を持つ理由
まずは、人が通貨を持つ理由について考えます。皆さんはなぜ株や宝石ではなく、通貨として資産を持つのでしょうか。
理由は簡単に答えられると思います。日本であれば通貨の方が安定しているためです。
株は会社の業績によって、秒単位で細かく変動します。宝石も採掘状況やニーズによって、価値が変動するのが特徴です。
一方で、日本国内においての通貨の価値はあらかじめ決められています。持っている1万円札が、次の日に5000円へ下落することは一般的にありません。
外国通貨の関係であれば、金融政策によって円の価値は変わります。しかし、日本国内で買い物する場合は、通貨が資産の中でも最も安定します。
この特徴が、多くの人が通貨を資産として保有する理由です。
反対に金利があまりにも高く、通貨が信用されていない国も存在します。中東アジアや南米、アフリカに多いイメージです。
このような国は、例外的に通貨ではなくその他の金融資産を持つケースもあります。近年では、仮想通貨(暗号資産)も代替される資産の一種です。
投機的動機を分析する際には、国々の経済事情を把握しておくとイメージしやすくなります。
今回のテーマとは関係ありませんが、マト塾では仮想通貨の記事もいくつか掲載しています。興味のある方は、勉強の合間に覗いてみてください。
投機的動機は利子率で分析
投機的動機の場合は、利子率に依存する形で貨幣需要の分析を行います。以下の図を見てみてください。
分析する際には縦軸に利子(r)、横軸に貨幣需要(L)を置きます。
ある資産を保有するうえで、便利か否かを測る指標が流動性選好です。図を見ても分かるとおり、一般的には右肩下がりの曲線で描かれます。
利子率が高いとき、貨幣需要が小さくなるのは資産保有のリスクが高くなるためです。皆さんの中でも、金利の高い国の通貨を積極的に持ちたがる人は少ないでしょう。
一方で、日本円のような利子の低い通貨は比較的持とうとする人も多くなります。そのため、貨幣需要量も大きくなるのが一般的な形です。
貨幣需要のポイント
今回は、貨幣需要について詳しく紹介しました。まず、人々が貨幣を持つ動機には大きく分けて次の3種類があることを押さえてください。
- 取引的動機
- 予備的動機
- 投機的動機
マクロ経済学には、それぞれの動機を科学的に捉える見方もあります。公務員試験を解くうえでは、基本的な特徴を優先的に覚えるといいでしょう。
この辺りの問題は、文章題の穴埋めや5肢1択の形式で出題されるケースがほとんどです。自身でも過去問にチャレンジしながら、練習を繰り返してください。
なお、マクロ経済学の問題は次のテキストを揃えておくことをおすすめします。むしろ、これら2つのテキストだけあれば公務員試験には対応できます。
早いうちに購入しておき、繰り返し何周も目を通すようにしてください。
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