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不動産物権変動とは?登記と第三者の関係をわかりやすく解説

行政書士試験の民法で狙われやすい範囲の一つが、不動産の物権変動です。登記の仕組みについて勉強しつつ、有名判例も押さえておく必要があります。

この記事では、行政書士試験に一発合格した筆者が、不動産の物権変動と登記の関係についてわかりやすく解説します。行政書士試験を受験される方は、ぜひ参考にしてください。

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不動産物権変動と登記

不動産の物権変動をするには、登記を済ませないといけません。物権変動とは売買や相続などの理由で、不動産の所有権などを変更することです。登記は、不動産の権利または義務を登記簿に記録する行為を指します。

家や土地といった不動産は、常に自分のカバンなどに携帯できるものではありません。登記せずに「自分の家だよ」と主張しても、客観的に示すのが難しくなります。登記がなされていないと、その後の権利関係次第では不動産を失う恐れもあります

 

不動産物権変動・登記と第三者

不動産物権変動と第三者との関係をわかりやすく示した図

不動産の物権変動には、さまざまな種類があります。登記の手続きについてもそうですが、第三者との関係も押さえなければなりません。

ここで紹介する内容については、行政書士試験で出題される可能性が極めて高いといえます。したがって勉強する際には、以下のような問題集も併せて揃えておくとよいでしょう。

 

 

取り消しと登記・第三者

まずは取り消しする前に、第三者が現れたケースを紹介します。たとえば家の売買契約をしたものの、事情によって契約が取り消されたとしましょう。

しかし売主が契約の取り消しをしようとしたところ、買主は第三者に不動産を売却してしまいました。この場合、第三者との関係は取り消す前に現れたか、後に現れたかで区別しなければなりません。

取り消し前に現れた第三者

契約を取り消した原因が、制限行為能力や強迫を理由とする場合、取り消し前に現れた第三者には登記せずに対抗することが可能です。制限行為能力や強迫については、第三者が現れても取り消しが認められています。

契約の取り消し前に第三者が現れたのであれば、買主が勝手に売っ払った行為も含めて効果が抹消されます。したがって所有権を主張する際に、登記を済ませる必要もありません。

一方で取り消しの原因が詐欺であるとき、善意の第三者に対抗できないと民法第96条に定められています。このように取り消した原因により、対抗できるかどうかが変わる点に注意してください。制限行為能力や意思表示については、以下の記事で詳しく説明しています。

取り消し後に現れた第三者

契約の取り消し後に現れた第三者に対しては、登記を済ませていないと権利を主張できません。仮に制限行為能力や強迫を理由に取り消しても、登記なくしては対抗できないとされています。

この場合、売主と第三者はどちらも登記がない状態です。買主は売主に不動産を返すのが義理ですが、第三者に渡したときは二重譲渡したとみなされます。

不動産が二重譲渡されたとき、権利を主張できるのは先に登記を済ませたほうです。したがって売主は、第三者よりも早く登記を済ませる必要があります。

解除と登記・第三者

売主が買主に不動産を売却したものの、買主側がお金を払えなかったとしましょう。このケースでは契約取り消しではなく、一般的に契約が解除されます。契約の解除と第三者との関係についても、解除の前後で区別する必要があります。

解除前に現れた第三者

はじめは買主が不動産を所有していたものの、第三者に転売しました。転売したあと、買主の債務不履行により契約が解除されたと仮定します。

本来であれば買主は、不動産を売主に返還しなければなりません。このように契約前の状態に戻す義務が原状回復義務です。

一般的に原状回復義務を理由に、第三者の義務を害することはできません(民法第545条)。ただし第三者が保護されるには、登記を済ませている必要があります。つまり第三者が登記をしていなければ、売主は不動産の返還を要求できます。

解除後に現れた第三者

解除後に現れた第三者との関係は、契約の取り消し後と同じです。二重譲渡の関係になるため、売主が第三者に権利を主張するには先に登記を済ませておく必要があります。

取得時効と登記・第三者

取得時効とは、期間の経過により権利を取得できる制度のことです。第三者がいない場合、時効取得すれば登記をする必要がありません。取得時効が完成したタイミングで、自動的に所有者とみなされるためです。

一方で第三者との対抗関係については、条件によって細かく異なります。ここでは時効完成前と時効完成後に分けて説明します。なお取得時効の仕組みについては、以下の記事でまとめているので併せて読んでみてください。

時効完成前に現れた第三者

たとえば時効取得する前に、第三者が不動産の移転手続きを終わらせたとしましょう。この場合に取得時効が完成したら、取得者は第三者に対して登記なくして所有権を主張できます

当該ケースにおいても、取得時効の完成時に所有者とみなすといった原則が適用されるためです。第三者からすると理不尽にも思えますが、あくまで時効の効果が優先されます。

時効完成後に現れた第三者

次に時効が完成したあと、第三者に不動産が売却されたケースを解説します。仮に不動産を時効取得しても、登記していないときはすでに登記を完了させた第三者に対抗できないのが原則です。こちらも二重譲渡の効果が適用されます。

ただし第三者が登記を完了させたとき、時効取得者が長年にわたって占有していた事実を認識していたら、背信的悪意者とみなされる場合もあります。このケースでは、時効取得者が登記なくして所有権を主張することが可能です。

併せて第三者が登記をしたあと、占有者が引き続き不動産を取得時効に必要な期間占有したとしましょう。その際にも、登記なくして対抗しうるとするのが判例の見解です。

相続と登記・第三者

不動産の物権変動では、相続との関係も重要なポイントとなります。相続が行われると、あらゆるシチュエーションが起こるため、それぞれを分けて考えていかなければなりません。

共同相続と登記の関係

たとえば親が亡くなり、財産を兄弟2人で相続したとします。財産の中に不動産があったとしても、民法上は相続分に従って持分権が与えられるのが原則です。

兄弟2人で相続するのであれば、持分権はそれぞれ2分の1ずつ与えられます。兄は登記を済ませていなくても、弟に対して2分の1については所有権を主張することが可能です。

登記には権利を公示する力はあっても、その内容が信頼される力(公信力)はありません。そのため他の相続人の持分権を自己の所有物であると登記しても、取得できないと判例でまとめられています。

遺産分割と登記の関係

相続は、必ずしも民法で定められた相続分に従わないといけないわけではありません。相続人全員が集まり、遺産分割協議でどのくらい相続するかを決めることも可能です。

遺産分割によって相続分を決めたときは、第三者に対抗するには登記が必要とされています。民法上のルールと異なる遺産分割は、新たに相続分を決める手続きです。したがって第三者にもわかりやすく公示すべく、登記を必要としました。

遺贈と登記の関係

遺贈とは、故人が死亡したあとに発生する財産の贈与のことです。単独行為であるため、一般的な贈与契約とは異なりますが、物権変動の効果上は単なる贈与とみなされます。

したがって遺贈によって不動産を得た受遺者は、第三者に対抗するうえで登記が必要です。遺贈と登記の関係についても、狙われやすいポイントであるため必ず押さえてください。

相続放棄と登記の関係

相続放棄とは、故人の財産をすべて相続しないといった意思表示です。仮に相続放棄が成立したら、その効果は登記なくして発生します

登記を不要とする理由は、相続放棄には絶対的な効力が働くためです。手続きも短期間であり、処分行為が見られたら効力を失います。つまり条件が厳格な中、第三者が現れる可能性はあまりにも低いため、登記する必要ないと判例で述べられました。

 

中間省略登記とは

中間省略登記についてわかりやすく示した図

中間省略登記とは「A→B→C」の順番で家が売買されたとき、Bを挟まずに「A→C」と登記をすることです。ただし原則としては「A→B→C」の順番を守らないといけません。取引の流れについて、正しく公示させるためです。

ただし3人全員の同意があったら、特別に中間省略登記が認められます。ここでBの同意が得られないまま登記をしたとき、AやCが無効を主張できるかを考えてみましょう。

結論から言うと、物権変動に矛盾がなければAやCからは無効を主張できません。登記を省略されて、一番困るのは記録されていないBです。

つまり中間省略登記に全員の同意を必要としているのは、Bが抵抗できるようにするのを特に重視しています。そのため何ら影響を受けないAやCは、抹消を請求する必要がないと判旨されました。

 

不動産物権変動のまとめ

今回の記事を整理すると、不動産の物権変動においては「登記」が必要となります。登記は不動産の取引記録について、公示する制度のことです。

不動産の物権変動と登記では、しばしば第三者との関係が出題されます。試験で間違えずに解くには、理由も含めて登記が必要かどうかをきちんと理解しなければなりません。

不動産の物権変動の範囲は、行政書士試験の記述式問題でも出題される可能性があります。自分でも図を描きながら、問題文の内容をわかりやすく整理できるようにしましょう。