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生産関数のy=KLを使いこなす!労働投入量と資本投入量の計算

ミクロ経済学の話は、消費者からの目線と生産者からの目線に二分できます。

消費者からの目線において、よく使われる関数が費用曲線です。以前も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

ここでは、生産者からの目線に立って生産関数を説明します。

公式であるY=KLを使い、労働投入量や資本投入量の計算をできるようにしましょう。

 

生産関数とは?

生産関数とは、ある生産要素と生産量を見比べて、どの程度の生産技術を誇るかを測るための概念です。

生産活動においては、原材料(生産要素)を加工して製品をつくるのが基本的な流れです。

機械が優れていれば、より効率良く製品を作れます。このポイントを押さえ、生産関数の仕組みを掘り下げましょう。

生産関数はY=KL型が基本

次にY=KLの公式を使った生産関数について紹介します。

Kは資本投入量、Lは労働投入量を指すアルファベットです。

ある企業が生産活動を行うには、資本家と労働者の2つの立場を考慮しなければなりません。

例えば、 Y=K^{0.6}L^{0.4}と式がありました。

この場合は資本投入量に60%、労働投入量に40%分配される状態を表しています。

資本投入量について

資本とは本来生産活動に必要な要素全てを指しますが、ここでは機械といった設備だと捉えてください。

資本投入量は、企業がどの程度の資本に費やしているかを示す数値です。

我々が仕事をするときは、全て手作業で行うところは少ないと思います。

工場の機械以外にも、コピー機やパソコンなど至る場面で資本を使うはずです。

なるべく機械化(AI化)を進めるのが望ましいものの、導入には膨大なコストもかかります。

企業の大きさにも左右されるため、簡単に投入量を変えられないのが資本の特徴です。




AIを導入するときも企業のキャパは無視できない!

 

労働投入量について

今度は労働者の視点に立って解説します。

労働投入量とは、企業がどの程度の割合を労働力に依存したかを示す値です。

一般に労働者数×労働時間で示されます。

生産性から見ると、労働投入量が多い企業は効率悪いと捉えられています。

あまりにも人が長時間働きすぎると、資本にかけるコストが減ってしまいます。

労働投入量を抑え、機械やAIも使いながら補う取り組みが企業にとっては重要です。

なお、労働投入量が増えるほど、資本投入量が下がる現象を技術的代替率と呼びます。技術的代替率のお話はこちらです。

あわせて覚えるようにしてください。

 

 

Y=KLの性質

続いて「Y=KL」の性質について確認します。

こちらの式は費用関数と同じようにコブ=ダグラス型が使われています。

コブ=ダグラス型とは、 Y=K^{0.6}L^{0.4}のような式です。

公務員試験レベルでは、この式さえ押さえてしまえば問題ありません。

式の詳しい仕組みについては、後日改めて記事を書きたいと思います。

練習問題を解きながらコブ=ダグラス型の式をおさらいしましょう。

最適資本量を求める問題

ここでは、y=KL型の最適資本量を求めます。

最適資本量とは、利潤が最大化されるときの資本投入量のことです。

問題は次のとおりです。

式が Y=K^{0.6}L^{0.4}のときの最適資本量を求めよ
資本と労働の価格はそれぞれ3と64で産出量を20に固定

 

手順を3つに分けて解説します。 

技術的限界代替率の式を作る

最適資本量を求める際には、技術的限界代替率の式を作ります。

技術的限界代替率は、等量曲線と接する線の傾きのことです。等量曲線についてはこちらの記事を参考にしてください。

技術的限界代替率(MRTS)の式は次のとおりです。

MRTS= \dfrac {⊿K}{⊿L}

つまり\dfrac {⊿K}{⊿L}= \dfrac {⊿MPL(労働の限界生産力)}{⊿MPK(資本の限界生産力)}となります。

この式に生産関数を当てはめて考えてください。

微分をしながら解く

ミクロ経済学は頻繁に微分を用います。まずは、資本の限界生産力から考えます。

生産関数の資本は、 K^{0.6}でした。

微分するときは、指数の値をKの係数に位置へ持っていきます。

0.6Kとなり、指数の部分は−1をするのがルールでした。

 0.6K^{−0.4}L^{0.4}が正しい値です。

同じ容量で労働の限界生産力は 0.4K^{0.6}L^{−0.6}となります。

MRTSは \dfrac{0.4K^{0.6}L^{−0.6}}{0.6K^{−0.4}L^{0.4}}です。

一度「係数は無視して」考えてください。

すると指数がたくさん残ったKとLが残ります。

 \dfrac{K^{0.6}L^{−0.6}}{K^{−0.4}L^{0.4}}

公務員試験レベル(地方上級や市役所は特に)であれば、とりあえず\dfrac {K}{L}になることを覚えてしまったほうが手っ取り早いです。

問題を解く時間も限られてくるため、考える時間はなるべく削減しましょう。

後は、係数を合わせて考えれば、\dfrac {0.4}{0.6}×\dfrac {K}{L}といった式が作れます。

ちなみに、どうしても指数の計算で\dfrac {K}{L}を求めたいときの方法はこちらです。気になる方は参考にしてください。

 \dfrac{K^{0.6}L^{−0.6}}{K^{−0.4}L^{0.4}}

 K^{0.6-(-0.4)}L^{−0.6-0.4}
※分数(割り算)の場合、指数同士の計算は引き算になる

 K^{1}L^{−1}

\dfrac {K}{L}
※指数が「−(マイナス)」のときは逆数を取る

要素価格比率との計算

最後に価格(労働64、資本3)を用いて計算します。ここでは、要素価格比率を覚えてください。公式は次のとおりです。

要素価格比率=\dfrac {w(労働の価格)}{r(資本の価格)}

上の公式に当てはめると、要素価格比率は\dfrac {64}{3}です。

先程の技術的代替率を用いると、以下の式が作れました。

\dfrac {0.4}{0.6}×\dfrac {K}{L}\dfrac {64}{3}

この式を計算してください。

\dfrac {2}{3}×\dfrac {K}{L}\dfrac {64}{3}

\dfrac {2K}{3L}\dfrac {64}{3}

L=\dfrac {1}{32}K

最適消費量を求める

最後に最適消費量を求めます。まずは、L=2Kの式を生産関数に代入しましょう

 Y=K^{0.6}×(\dfrac{1}{32}K)^{0.4}

 Y=K^{0.6}×K^{0.4}×\dfrac{1}{32}^{0.4}

 \dfrac{1}{32}^{0.4}の0.4は、\dfrac {2}{5}に直した方が分かりやすいです。

 \dfrac{1}{32}^{1/5}  \dfrac{1}{2}と改められます。

さらに2乗(分子が2)されることから、 \dfrac{1}{32}^{0.4}の値は  \dfrac{1}{4}です。

 Y=K^{0.6}×K^{0.4}の値は指数の計算でKとなります。

  \dfrac{1}{4}Kと整理できるはずです。

加えて産出量(Y)の値は20でした。

  \dfrac{1}{4}K=20となり
K=80が求めたい答えです。




指数の計算ややこしいな〜…。




指数が分数、負の数のルールは再確認しよう!

 

まとめ

今回はY=KLの公式を使いつつ、生産関数の仕組みについて解説しました。

労働投入量や資本投入量を求める計算は、指数のルールをしっかりと押さえなければなりません。

特に Y=32K^{0.4}は、 Y=K^{0.4}×32^{0.4}と分けて計算する方法を押さえると簡単です。

どうしても指数の計算が難しい場合は、\dfrac {K}{L}が式に出てくる点を暗記してください。

この分野も理解してしまえば、生産者から見たミクロ経済学は問題なく解けると思います。