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等量曲線と等費用線とは?技術的限界代替率もわかりやすく解説

公務員試験のミクロ経済学で、資本と労働を使った分析手法として等量曲線と等費用線が有名です。これらを使えば、企業の生産活動における投資方法を分析できます。

この記事では公務員試験に一発合格した筆者が、等量曲線と等費用線の特徴に加え、技術的限界代替率を解説します。ミクロ経済学の勉強をしている方は、ぜひ参考にしてください。

 

等量曲線とは

等量曲線とは、企業が商品を生産するうえで、資本(K)と労働(L)をどのように用いるかを示したグラフです。資本は商品の製造に使う機械、労働は従業員を指します。

たとえば企業が100個の商品を作るとき、本来であれば20の機械が必要だとしましょう。しかしコストの問題で機械を20も用意できないのであれば、代わりに従業員の数を増やさなければなりません

等量曲線は、このような性質を考慮して描かれます。ここではグラフの描き方に加え、技術的限界代替率の求め方も見ていきましょう。

等量曲線は右下がりに描く

等量曲線を描くときは縦軸に資本(K)、横軸に労働力(L)を置き、右下がりに描くのが特徴です。つまり資本と労働は、お互いに負の相関を持ちます。

生産数を同じにする場合、労働者を増やすのであれば、自ずと機械の導入数が減少します。反対に機械を増やしたら、労働者を少なくしないといけません。つまり同じ

資本と労働の両方を増やしたい場合は、生産量自体を増やす必要があります。生産量を増加させたときのグラフは、右上方向にシフトさせるのがポイントです

等量曲線を無数に描いたとしても、これらの曲線は接触しません。

無差別曲線と等量曲線の違い

等量曲線の描き方は、無差別曲線と似たような性質を持っています。しかし無差別曲線は満足度の度合いを示す概念であり、抽象的なグラフとなっています。単に満足度の高低を示す、序数的なグラフとも言い換えられます。

一方で等量曲線は、無差別曲線とは異なり具体的に表せるのが特徴です。したがって序数的ではなく、数値で示せる基数的なグラフといえます。無差別曲線については、下記の記事で詳しく触れているので併せて参考にしてください。

技術的限界代替率との関係性

等量曲線を勉強する際には、技術的限界代替率との関係性も押さえてください。技術的限界代替率とは、等量曲線の変化の割合です。

式では \dfrac {⊿K}{⊿L}と示されます。

先程も触れたとおり、資本と労働には負の相関があります。つまりコストが変化しない場合、労働数を増やすのであれば、資本を減らさないといけません。この法則を技術的限界代替率逓減の法則と呼びます。

限界生産力との関係

技術的限界代替率は \dfrac {⊿K}{⊿L}と示されると説明しましたが、もう1つ重要な概念が限界生産力です。

限界生産力とは、生産要素(資本、労働)のいずれかを増やすときに得られる生産物の増加分を指します。各生産要素の限界生産力は、以下のように表します。

  • 資本の限界生産力:MPK
  • 労働の限界生産力:MPL

たとえば、労働力を⊿L単位増加させたとしましょう。このときの限界生産力は「⊿L・MPL」です。

労働力を上げると資本は⊿K分下がるため、⊿K・MPKが同時に減少します。お互いに変化量は同じであるため、以下の関係性が成り立ちます。

⊿L・MPL=⊿K・MPK

式を変形したものがこちらです。

 \dfrac {⊿K}{⊿L}=\dfrac {MPL}{MPK}

技術限界代替率が、限界生産力の比と等しくなることを示しています。

 

等費用線とは

等費用線とは、企業が生産要素にかかる費用を示したグラフのことです。記号を使って解説するため、下記の条件を押さえてください。

  • C…費用
  • L…労働力
  • K…資本
  • w…賃金
  • r…レンタル料

グラフの描き方と費用最小化について解説しましょう。

等費用線を式で表す

C(費用)については、以下の関係式が作れます。

 C=wL+rK

つまり労働者への賃金と機械にかけるレンタル料の合計です。等費用線を描くときは、縦軸に「K」を置くので「K=」の式に直すようにしましょう。

それぞれの項を以降した結果、式は以下のように整理できます。

 K=−\dfrac {w}{r}L+\dfrac {C}{r}

この式を用いて、実際に等費用線を描いてみましょう。

まずK軸に接しているのは、切片の \dfrac {C}{r}です。

等費用線の傾きは、 \dfrac {w}{r}Lの絶対値が該当します。

複雑に思えますが、グラフの描き方は中学校の数学で習う一次関数と大して違いはありません。

費用最小化=等量曲線の接点

上述したとおり企業が生産活動をするうえでは、いかに費用を抑えるかです。労働と資本に効率よく投資すべく、それぞれの量を調整します。

ここで等費用線に等量曲線を組み合わせてみましょう。等費用線と等量曲線の接点が、費用を効率よく使えるポイントとなります。

接点は費用最小化と呼ばれるため、併せて押さえておきましょう。費用最小化は、等費用線と等量曲線の傾きが等しくなるポイントでもあります。

等量曲線の傾きは、技術限界代替率 \dfrac {⊿K}{⊿L}でした。

 \dfrac {MPL}{MPK}とも書き換えられます。

この値と生産要素の価格比である \dfrac {w}{r}が等しくなります。

つまり、費用最小化では以下の法則が成り立つと覚えましょう。

 \dfrac {MPL}{MPK} \dfrac {w}{r}

 

等量曲線・等費用線の計算問題

次に等量曲線と等費用線は使った計算問題を紹介します。まずは以下の問題文を見てください。

◆問題◆
等量曲線がx=L・Kである。
労働(L)のコストが10、機械(K)のコストが20であり、企業はコストを最大で1000使える。この場合に最大の生産を得るには、労働と資本をそれぞれいくらずつ投入すべきか。

①労働50、資本25
②労働50、資本30
③労働60、資本25
④労働60、資本30

 

さまざまな解き方がありますが、ここでは等量曲線や等費用線の性質を使って答えを求めていきます

等費用線を作成する

等量曲線は問題文にありますが、等費用線は自分で作成しなければなりません。ここで等費用線は、次の公式が成り立つことを思い出してください。

 C=wL+rK

次に問題文から判明している数値を、上記の式にそれぞれ代入します。すると次のようになりました。

 1000=10L+20K

このように形を整えておけば、後々計算しやすくなります。

 10L+20K=1000

費用最小化を求める

等量曲線と等費用線を組み合わせるとき、はじめに費用最小化を求める必要があります。費用最小化を示すポイントは次のとおりです。

 \dfrac {MPL}{MPK} \dfrac {w}{r}

さらに等量曲線は、x=L・Kで描かれています。仮に労働の限界生産力(MPL)を求めるときは、等量曲線をLで微分しなければなりません

x=L・KLで微分した場合、以下のように作れます。

x'=K

つまり MPL=Kという関係になるわけです。同じ要領でMPKについても求めると、以下の関係式が作れます。

 \dfrac {MPL}{MPK}=\dfrac{K}{L}=\dfrac{w}{r}

 \dfrac{K}{L}=\dfrac{10}{20}

労働の値を求める

関係式を整理できたら、計算しやすい「労働」の値から求めていきましょう

 \dfrac{K}{L}=\dfrac{10}{20}

 \dfrac{K}{L}=\dfrac{1}{2}

K=\dfrac{1}{2}L

こちらの式を先程作成した「等費用線」の式に代入していきます

 10L+20K=1000

 10L+20・\dfrac{1}{2}L=1000

 20L=1000

 L=50

この時点で、選択肢は①と②のいずれかに絞れました。

資本の値を求める

労働(L)の値を求めたら、資本(K)も簡単に算定できます。以下の式のLに50を代入し、Kの値を求めるだけです。

K=\dfrac{1}{2}L

K=\dfrac{1}{2}・50

K=25

最終的に正解は①となります。

 

等量曲線と等費用線のまとめ

等量曲線と等費用線の勉強をするには、関数の仕組みをきちんと押さえないといけません。等量曲線の特徴として、最低限以下の内容は必ず覚えてください。

  • 基数的なグラフである
  • 限界的代替率=限界生産力の比率
  • 限界代替率逓減の法則が働く
  • 2つ以上の等量曲線は交わらない

また等量曲線と等費用線を組み合わせ、資本や労働の値を求める計算問題にも対応する必要があります。中学校や高校数学も併せて勉強しておくとよいでしょう。