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均衡予算乗数の定理とは?政府支出と増税が与える効果

どーも、ヤマトノです!

社会保障費の財源確保のため、経団連が消費増税を視野に入れているとニュースで紹介されていました。

おそらく、大半の方が反対されるのではないかと思います。

今回は、増税と政府支出の関係性について解説する記事です。

マクロ経済学の均衡予算乗数の定理を見ていきましょう。

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均衡予算乗数の定理とは

まずは、均衡予算乗数の定理について解説します。

ここでポイントとなるのが、政府支出の増加と増税です。

これらが国民の所得にどのような影響を与えるのかを解説しましょう。

均衡予算の特徴

均衡予算乗数の定理を見る前に、均衡予算を説明します。

均衡予算とは、政府支出と増税の額を等しくすることです。

例えば、政府支出を5億円出したとしましょう。この財源を確保するため、5億円分の増税を図ります。

政府支出を大きくするとGDPを高められると考えられています。一方で、増税はGDPに負の効果をもたらす作用です。

両者が同じ金額であるため、国民の所得はプラマイゼロではないかと感じるかもしれません。

しかし、政府支出と増税の額が同じであれば、国民所得はプラスに働きます。この関係性は数学的に表せます。

均衡予算乗数の定理の計算

続いて、均衡予算乗数の理論を数学で示します。政府支出と税金の関係性を捉えましょう。

GDPや乗数理論の復習

均衡予算乗数の定理を学ぶ際には、GDPの内容をあらかじめ復習してください。

さらに以前は乗数理論の説明もしました。こちらもあわせて押さえておくといいでしょう。

マクロ経済学の乗数は、波及効果と似ていると考えてもらって構いません。

例えば、政府支出で公共事業に着手し、見事に国民所得が増えたとしましょう。

手元のお金が増えた国民は、今まで以上に買い物をすると考えるのが自然です。

順調に経済が回れば、消費(C)も増えるきっかけが作れます。

消費が増えることで、政府支出の効果に上乗せして国民所得が増える可能性も高まります。

現実世界が理論どおりに進むわけではありませんが、経済は波及的に変化していくものと捉えるのは大切です。

政府支出乗数の公式

均衡予算乗数の定理でよく取り上げられる概念が、政府支出乗数と租税乗数です。

GDPの増減は、政府支出と租税の判断がカギを握る部分もあります。

まずは、政府支出乗数について見ていきましょう。

数式で表すと、
⊿Y=\dfrac {1}{1-c_1}⊿Gです。

cは消費性向を指します。消費性向とは、消費に使う所得の割合です。

まず、国が政府支出を1億円出したとしましょう。消費性向は0.6と仮定します。

政府支出乗数に当てはめると、 ⊿Y=\dfrac {1}{1-0.6}⊿1と表せます。

このときの国民所得の変化量は2.5億円です。つまり、政府支出の2.5倍の効果があるのを示しています。

租税乗数の公式

次に、政府支出と同額の増税をしたときの公式について紹介します。

政府支出をどんどん増やそうとしても、国には財源が存在します。

税金は財源ではないという主張も見受けられますが、社会保障費や地方への還元も税金を頼っている状態です。

税金の話は、以下の記事も参考にしてみてください。

いろいろな意見はあると思いますが、ここでは伝統的な考えに基づいて税金を財源と捉えましょう。

租税乗数の公式は
⊿Y=\dfrac {−c_1}{1-c_1}⊿Tです。

まず、増税は国民所得を減らすため負の符号(マイナス)を置きます。

加えて、政府支出と異なる部分が分子の値です。1ではなく、{−c_1}となります。

1億円の増税、消費性向0.6を当てはめてください。

 ⊿Y=\dfrac {−0.6}{1-0.6}⊿1で、国民所得の変化量は−1.5億円です。

1億円の政府支出およぼ増税を行うと、国民所得の変化量は2.5億円の上昇と1.5億円の下降を招きます計算すると1億円増

 

 

閉鎖経済と均衡予算乗数

次に、少し特殊な事例を紹介します。

ここで取り上げる内容は、閉鎖経済の世界です。

国が閉鎖経済であり、さらにいくつかの条件が組み合わさると均衡予算乗数の計算が簡単になります。

試験問題をスピーディーに解けるため、内容を押さえてください。

閉鎖経済=貿易しない国

閉鎖経済とは、他の国と金融取引および貿易しない国家のことです。

具体例としてタリバン政権のアフガニスタン(1996年〜2001年)が挙げられます。

日本も江戸時代に鎖国が行われていました。そのため、閉鎖経済に近い状態ではあったといえます。

ただし清(中国)やオランダとは貿易していたため、完全な閉鎖経済ではありません。

該当する国は極めて少なく、稀なケースを想定したモデルです。

均衡予算乗数が1になる条件

閉鎖経済のもとでは、均衡予算乗数が1になる条件が存在します。

この特殊なケースが、意外にも公務員試験で問われます。覚えておくと時短に繋がるため、しっかり押さえて1問を確実に当てましょう。

均衡予算乗数が1になる条件は次のとおりです。

  • 閉鎖経済である
  • 税金は定額税である
  • 民間投資が一定である

 

定額税は、所得の発生や他の事情に関わらず一定額を納める税金です。

一応、日本にも住民税の均等割で採用されています。皆さんも、1,500〜4,000円程度の額を住民税(均等割)として納めているでしょう。

加えて、民間投資が一定(政府支出が増加しても変化しない)のときも条件に該当します。

これらの条件が全て揃うと、均衡予算乗数の定理に基づく国民所得の増加は政府支出の増加と等しくなります

マクロ経済学の理屈を知りたい方は、1冊解説本を読むといいと思います。

私は『島本昌和のマクロ経済学 ザ・ベスト+』で今も勉強しています。分かりやすくまとめられているため、皆さんもぜひ手にとってみてください。

 

 

まとめ

今回は、マクロ経済学より均衡予算乗数の定理を紹介しました。

一般的には、政府支出と同額で増税すると国民所得は大きくなるとされています。

政府支出乗数と租税乗数の式の違いを覚えてください。

⊿Y=\dfrac {1}{1-c_1}⊿G

⊿Y=\dfrac {−c_1}{1-c_1}⊿T

さらに、以下の条件では均衡予算乗数が1になります。

  • 閉鎖経済
  • 定額税
  • 民間投資が一定

点数が取れるチャンスなので、性質は押さえておきましょう。