ヤマトノ教室|勉強ブログ

公務員試験、資格試験、進学受験の対策

パレート最適とは?身近な例とエッジワースボックスを解説

ミクロ経済学の中でも、個人的に好きなジャンルがパレート最適です。

公務員試験の勉強をしなければ、大半の人がこの言葉について知らないかと思います。

名前を見ると極めて難しそうな内容に思えますが、具体例を用いると一気に理解しやすくなります。

この記事では、パレート最適について身近な例をエッジワースボックスと共に解説しましょう。

 

パレート最適とは

パレート最適とは複数の経済状態のうち、誰かが損失を招かないと、もう一方の利益が得られないことです。

例えば、姉と妹が2人でまとめて4,000円のお小遣いを貰うとしましょう。普通は1人2,000円ずつと公平に分配するはずです。

では、4,000円のうち3,000円を姉に渡した場合はどうなるでしょう。妹は残りの1,000円しか貰えなくなります。

このように一方が得をすると、もう片方が損をする状態がパレート最適です。身近な例を押さえれば、パレート最適の定義もイメージしやすくなります。

 

パレート最適のポイント

パレート最適の分野では、押さえておきたいポイントがいくつかあります。公務員試験でも問われやすい部分です。ここで紹介するポイントは試験本番前には覚えてください。

配分の公平さは測れない

パレート最適は、所得分配の公平さを測る概念ではありません。あくまで、効率的な資源配分を示したものです。公平と効率では、意味が異なることを押さえましょう。

お小遣いの例をもう一度出すと、姉の配分を増やしたい場合は妹の分を減らすのが手っ取り早いです。

仮に全体の金額を増やす際には、お小遣いを渡す側の稼ぎを増やさなければなりません。今あるお金の配分する割合を変えた方が、スムーズに姉の金額を増やせます。

しかし、このやり方では妹が損してしまいます。このようにパレート最適は、どちらか一方が損をするため公平性を実現できません

完全競争市場で成り立つ

パレート最適が成り立つのは、完全競争市場の世界です。不完全競争市場の世界では、原則としてパレート最適が生じません。

完全競争市場とは、限界費用が価格と等しくなる世界のことです。企業の恣意的な判断に左右されず、価格が固定される状態を指します。ガソリンが主な代表例として挙げられます。

一方で、不完全競争市場は限界費用と限界収入が等しくなる世界です。企業や消費者が恣意的に価格を操作できる市場であり、ほとんどの市場が該当します。

完全競争市場と不完全競争市場については、過去にもブログで紹介しました。以下の記事も併せて参考にしてください。

完全競争市場にしかパレート最適が起こらない理由は、資源が無駄なく配分されているためです。

基本的に需要と供給の変化のみで価格と購入量を決めるのが、完全競争市場とされています。

必要な分だけ市場に出され、全て購入される世界と考えれば分かりやすいでしょう。

結果的に効率的な資源配分につながり、パレート最適の現象をもたらします。

ちなみに、この原理は「第一の定理」と厚生経済学の世界では呼ばれています。

不完全競争市場とパレート最適

不完全競争市場では、原則パレート最適が生じないと説明しました。世の中、どの国の経済も不完全競争市場が基本です。では、現実世界ではパレート最適が見られないのでしょうか。

実は、不完全競争市場でもパレート最適が見られる場合もあります。主な例が、国の完全競争市場に近づけるための政策です。

そもそも不完全競争市場でパレート最適が生じないのは、はじめから持っている富(初期保有)に差があるためと考えられています。都会と田舎では、どうしても田舎の方が富が少なくなるのが証拠です。

国がそれぞれの富を最適な形で配分することで、パレート最適が実現します。この状態が厚生経済学の「第二の定理」です。

とはいえ、初期保有に差がある状態で再配分を行うには多額の予算が必要となります。

理論上は国の政策次第で不完全競争市場でもパレート最適が生じるものの、現実的に考えたら難しいのかもしれません。国の規模や人口によっても変わると思います。

とりあえず難しい話は置いといて、ここでは「第二の定理」だけ覚えてください。

 

 

エッジワースボックスとは

パレート最適の内容で押さえてほしい概念が、エッジワースボックスです。このモデルは、二者の効用を分析する際に役立ちます。細かい見方と分析方法について詳しく解説しましょう。

エッジワースボックスの作り方

まずは、エッジワースボックスの作り方について解説します。作り方は公務員試験では出題されませんが、分析方法を知るうえで基礎となる内容です。

外枠を決める

ここでも身近な例として、姉と妹の二者による効用の変化を捉えましょう。さらにここでは、アメとチョコの交換として2つの財の変化も考慮します。

以上の条件を踏まえると、エッジワースボックスの外枠は下記のように作れます。

図を見ても分かるとおり、180°回転させても両者の動きを捉えられるように作るのがポイントです。

無差別曲線を描く

続いて、エッジワースボックスの中身を完成させます。このときに使われるのが無差別曲線です。無差別曲線の具体的な内容に関しては、以下の記事でも詳しく紹介しています。

無差別曲線の特徴は、曲線が軸から離れるほど効用が大きくなることです。この特徴は、エッジワースボックスでも使われます。

仮に姉の効用が変化する様子を描いてみましょう。すると以下の図のように、いくつかの曲線ができます。

無差別曲線の本数は特に決められておらず、無数に描ける点も特徴です。すると曲線同士が接したり、クロスしたりする図が完成しました。

特徴的な形ですが、パレート最適の問題では頻繁に見られます。

契約曲線を描く

2人の効用を無差別曲線で描いたら、次に契約曲線もエッジワースボックスに示します。契約曲線とは、パレート最適となるポイントを示した線のことです。

つまり、この線上であれば効率的な資源配分が行われています。一方が得をしたとき、もう片方が損をする状態ですね。

契約曲線を描くときのポイントは、二者の無差別曲線の接点をなぞることです。すると以下のような図が完成します。

契約曲線はWW'で表示されるケースが多いかなと思いますが、特徴的であるため記憶に残りやすいでしょう。無差別曲線と共に、最低限押さえてほしい概念です。

予算制約線が描かれることも

エッジワースボックスの応用になると、予算制約線が描かれるケースもあります。

予算制約線を描くことで資源配分のみならず、効用の最大化の分析も可能です。基本的には、右肩下がりの鋭角な直線が使われます。

契約曲線や二者の無差別曲線の接線と交われば、競争均衡が実現されている状態です。すなわち価格の調整により、パレート最適を達成しています。

この分野については、別の記事で細かくまとめたいと思います。

エッジワースボックスの見方

エッジワースボックスを見ると、どの箇所でパレート最適となっているかが分かります。公務員試験では、図について正しく説明しているものを答える問題がよく出題されます。

この手の問題に正答できるよう、エッジワースボックスの見方を解説しましょう。

パレート最適が起こる箇所

エッジワースボックスでパレート最適が起こる箇所は、契約曲線に交わる部分です。「契約曲線を描く」の部分でも説明しましたが、改めて下記の図を用いて解説しましょう。

仮に点Qから点Sに移動した場合、姉の効用は軸から離れていくので高くなります。一方で、妹の効用は軸に近づくため効用が下がります。

どちらか一方の効用が上がり、もう片方が下がっていることからパレート最適を実現していると読み取れました。

パレート改善が起こるポイント

次にパレート改善が起こるポイントを紹介します。パレート改善とは、誰の効用も下げずに少なくとも1人の効用を上げる現象のことです。

図の青い線(点P→点Qへの移動)に着目してみましょう。

無差別曲線は同じ線上であれば、効用が等しくなる性質を持ちます。点Pから点Qに移動しても、青い曲線の効用(妹の効用)は同じです。

次に黒い線を見てください。点Pから点Qに移動するともう一つの無差別曲線である赤い曲線にぶつかるはずです。つまり、姉側の無差別曲線が離れていくので効用は高くなります。

妹の効用は変わらず、姉の効用が上がっているため点Pから点Qへの移動はパレート改善を指します。

コア配分が起こるポイント

エッジワースボックスを分析する際には、コア配分が起こるポイントも押さえましょう。コア配分とは、パレート最適とパレート改善の双方を実現できる範囲のことです。

定義だけだと何を意味しているか分かりづらいと思うので、具体例を用いて説明します。

例えば、姉と妹でアメとチョコを3個ずつ配るとします。仮に姉は2個ずつ、妹は4個ずつ配分すると、姉は不公平に感じて満足度が下がるはずです。

効率的な資源配分ではあるものの、いずれかの効用を下げる通常のパレート最適の状態ですね。

では、仮に姉はアメが欲しくて、妹がチョコを欲しがっていたらどうでしょう?

この場合、姉のアメと妹のチョコを交換すれば、それぞれの効用が上がるようにも思えます。

このようにお互いの効用を下げず、さらに効率的な資源配分が行われるのがコア配分です。

先程の図を使うと、初期保有である点Pから点Qへの移動がパレート改善を指します。ここで分かりやすく点Pの反対側に点Tを置きましょう。

この点Pと点Tの範囲内は、パレート改善が発生する部分となります。さらにこの範囲の契約曲線上(赤い線の部分)が、コア配分の実現されるポイントです。

なお契約曲線上になければ、パレート最適は実現されません。点Eはコア配分にはならないので注意してください。

 

まとめ

今回は、ミクロ経済学のパレート最適の解説をしました。パレート最適は、ミクロ経済学の中でも専門性が高い分野です。多くの曲線を扱うので、複雑だと感じる方もいるでしょう。

そのため、勉強する際には身近な例をイメージすることをおすすめします。理屈が分かれば、パレート最適に関する理解もスムーズに進むはずです。

パレート最適は、エッジワースボックスの分析が主に試験で問われます。パレート改善やコア配分の条件をしっかりと押さえましょう。

ここで紹介した内容のほかにも、パレート最適に関する重要な分野があります。別の記事でまとめる予定なので、少しお待ちいただけると幸いです。