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マネーサプライとマネタリーべースの違い|信用乗数の計算方法

経済力を高めて、国力を安定させるには通貨の供給が不可欠です。通貨の供給量を分析する方法には、大きく分けてマネーサプライとマネタリーベースがあります。

この記事では、マネーサプライとマネタリーベースの違いを解説します。通貨供給量の定義、記事からしっかりと押さえてください。

 

マネーサプライとは

マネーサプライとは、家計や企業、政府が持つ現金と預金の総和を指します。簡単にいえば、我々の持っているお金の総計です。なお、日銀が管理しているお金はマネーサプライに含みません。

皆さんも普段の生活で、お金を現金(財布やタンスで管理)預金(銀行口座に入れる)で管理するでしょう。これらを全て合わせたのがマネーサプライとなります。

マネーサプライにもさまざまな種類があり、次のように大きく分けられます。

  • M1(現金通貨+預金通貨)
  • M2(+準通貨+譲渡性預金<CD>)
  • M3(M2+ゆうちょ

マネーサプライの具体的な仕組みを説明しましょう。

マネーサプライの計算式

マネーサプライの計算式は
M=C+Dです。

Mはマネーサプライ、Cは現金、Dは預金をそれぞれ指します。実際に具体例を用いて、数値を求めてみましょう。

現金:20億円
預金:480億円
支払準備金:10億円

 

こちらの例にある支払準備金は、中央銀行(日本では日本銀行)が管理するお金のことです。マネーサプライは、中央銀行の持つお金を数には含みません。

つまり現金と預金を合わせた数値が答えとなるため、20億円+480億円でマネーサプライは500億円です。

マネーサプライの変化

マネーサプライに中央銀行のお金はカウントしませんが、金融政策によって金額を上下できます。主な政策が次の3つです。

  • 公定歩合操作
  • 公開市場操作
  • 支払準備率操作

公定歩合は、中央銀行が各民間銀行へ資金を調達する際に示す金利のことです。現在はこの名前があまり使われておらず、基準割引率および基準貸付利率と称されます。

公定歩合の頃は0.3%の金利が設定されていましたが、2023年時点では0.1%とレートが低くなっています。仮に公定歩合が低下(金利が低下)すると、企業も積極的にお金が借りられるはずです。

したがって公定歩合の低下はマネーサプライの増加、公定歩合の上昇はマネーサプライの低下を招きます。

ほかにも、公開市場操作もマネーサプライの変化に重要な要素です。公開市場操作の基本は、買いオペと売りオペです。

日銀が政府の発行する国債を購入するのが買いオペ、売却するのが売りオペとなります。

日銀の資金を市場に供給させる買いオペは、マネーサプライを増加させます。反対に売りオペはマネーサプライが減少する作用です。

支払準備率操作については、後述で詳しくまとめます。

マネーサプライと物価の関係

少し話は逸れてしまいますが、なぜマネーサプライをコントロールする必要があるのかを解説します。普通に考えれば、市場に出回る流通を増やした方が我々の生活に良い影響が出るのではと思うでしょう。

ただし、あまりにもマネーサプライを増加させるとインフレ(物価の高騰)が発生しやすくなります。モノの値段が上がり続けると、結果的に国民の生活を苦しめてしまいます。

そのため、景気の状態によっては公定歩合の増加や売りオペでマネーサプライを減少させる施策も必要です。マネーサプライと物価の具体的な関係については、別の記事でまとめようと思います。

 

 

マネタリーベースとは

マネタリーベースとは家計や企業、地方政府の持つ現金と中央銀行が管理する支払準備金の総和のことです。日本銀行が市場に直接供給するお金を指します。

すなわちマネーサプライの基礎(ベース)を決める概念であるため、マネタリーベースと名付けられました。

公定歩合操作・公開市場操作・支払準備率操作は、マネタリーベースを操作する作用でもあります。

支払準備金の定義も含め、この概念の詳しい特徴を解説しましょう。

支払準備金について

支払準備金とは、各民間銀行が中央銀行に預けているお金のことです。

普段の生活で多くの人が銀行を利用していますが、預けたお金は全て金庫で管理しているわけではありません。大半を企業に貸し出すことで、積極的に経済を回しています。

ただし全てのお金を貸し出し、手元の1円も残らないのはさすがにリスクが大きすぎるでしょう。そこで日本銀行(中央銀行)にいくらか預けるのを義務付けられています。

このときに預けるお金が支払準備金、その割合が支払準備率です。

マネタリーベースの計算式

マネタリーベースの計算式は、
H=C+Rです。

Hはマネタリーベース、Cは現金、Rは支払準備金をそれぞれ指します。Hがマネタリーベースを指すのは、別名でハイパワードマネーと呼ばれているためです。

現金:20億円
預金:480億円
支払準備金:10億円
 
先程出した例であれば、現金(20億円)+支払準備金(10億円)=30億円がマネタリーベースとなります。

支払準備率操作について

ここで、先程紹介を省いた支払準備率操作についてまとめましょう。こちらは名称のとおり、支払準備金をどの割合で管理するかを決める作用です。

支払準備率を上下させることで、市場に流通する通貨の量をコントロールします。

支払準備率を下げれば、中央銀行に預けるお金も少なくなります。全国の民間銀行が保有できる通貨も増える状態です。つまり支払準備率の低下はマネーサプライを上昇させます。

反対に、支払準備率の上昇はマネーサプライの低下を招きます。中央銀行の保有する部分が増え、市場に出回る分が抑えられるためです。

 

マネーサプライとマネタリーベースの違い

マネーサプライとマネタリーベースの違いは、どの機関が通貨供給量をコントロールするかです。マネーサプライは民間銀行が、マネタリーベースは中央銀行が主に関与します。

ここでは定義の違いや変動するときのポイントを細かく捉えましょう。

定義の違い

マネーサプライは、各民間銀行が社会全体に供給するお金を指します。我々の預金は、日本銀行ではコントロールできません。民間銀行の規模やサービスによって、利用者の数も上下するためです。

過疎化が進む地域の地方銀行と、都会で営業する銀行では後者の方が利用者および預金額も多くなるでしょう。つまり、マネーサプライは各銀行の経営能力や営業力に大きな影響を与えます。

一方で、マネタリーベースは日本銀行から各民間銀行および社会全体へ供給されるお金のことです。日本銀行が直接操作できる概念であり、国の金利設定にも大きな影響を与えます。

マネタリーベースは、FXの取引でも重視される点が特徴です。

マネタリーベースが拡大すると、市場全体の通貨供給量(マネーサプライ)も増加するのではと期待されます。供給量が増えると一般的に金利は低下するため、その国の通貨は売られる傾向にあります。

投資にも重要な概念となるため、トレードに挑戦したい方も押さえておくといいでしょう。

変動するときのポイント

マネーサプライとマネタリーベースは、動きにも違いが見られます。

まずマネタリーベースの方を確認しましょう。こちらは、日銀が自由にコントロールできる部分でした。したがって金融政策により、マネタリーベースは簡単に変動できます。

一方でマネーサプライはどうでしょう。こちらは、民間銀行の経営力や営業力の影響も少なくありません。いくらマネタリーベースを増加させても、民間銀行の事情によってマネーサプライが増加しないケースは十分考えられます。

これまでの日本での動きも見ていきましょう。

画像引用:第1-2-9図 マネタリーベース・マネーストックの推移 - 内閣府

例えば、2021年4月はマネタリーベースを大きく引き上げましたが、マネーサプライは伸び切っていません。短期的に見ると2つの動きは連動しないケースもあることが分かります。

しかし、2018年〜2021年を全て見ると動きは大体似ているような気もします。以上から、マネタリーベースとマネーサプライの動きは長期的には連動しやすい点が特徴です。

 

信用乗数の計算方法

最後に信用乗数の計算方法を解説します。信用乗数とは、マネーサプライとマネタリーベースの比率のことです。基本的な計算方法は次のとおりです。

信用乗数=マネーサプライ÷マネタリーベース

例えばマネーサプライが1500億円で、マネタリーベースが500億円の場合は信用乗数が「3」と求められます。

この計算式を使った問題について深く見てみましょう。

信用乗数式を使った計算

マネーサプライとマネタリーベースの分野で、よく見られる数式が信用乗数式です。とはいえ、考え方は先程の信用乗数の計算式と全く変わりません。

マネーサプライ÷マネタリーベースを数学的に分解したものが信用乗数式です。

マネーサプライとマネタリーベースはそれぞれ以下のように求められました。

  • M=C+D
  • H=C+R

信用乗数の計算式に当てはめると、次のように書き換えられるはずです。

 \dfrac {M}{H}=\dfrac {C+D}{C+R}

このように書き換えることで、信用乗数を頼りにマネーサプライを求めるような計算もできます。実際にこの式を使い、マネーサプライを求めてみましょう。

「M=」に直せばいいので、左辺と右辺にそれぞれHをかけ算します。すると、下記の式ができるはずです。

  M=\dfrac {C+D}{C+R}H

式は自分でもしっかりと作り変えられるようにしてください。

現金・預金比率と支払準備率

信用乗数式は、現金・預金比率や支払準備率を求める際にも役立ちます。先程紹介した公式をもう一度見てください。

 \dfrac {M}{H}=\dfrac {C+D}{C+R}

「マネーサプライ÷マネタリーベース」を表していますが、変形することで現金・預金比率と支払準備率も求められます。

方法は右辺の分子と分母をDで割り算するだけです。すると以下のように式を変形できます。

 \dfrac {M}{H}=\dfrac {C/D+1}{C/D+R/D}

このC/Dが現金・預金比率、R/Dが支払準備率です。

現金・預金比率は家計や企業において、現金と預金をそれぞれどの割合で持ちたいかを指しています。

信用乗数式を用いると、実際のお金の管理の仕方について詳しく分析できます。なお式をさらに変形させて、マネーサプライを現金・預金比率や支払準備率から求める方法も可能です。

信用乗数式の練習問題

ここで実際に練習問題を解いてみましょう。

国民が現金・預金比率0.2でお金を保有している。
銀行の支払準備率は0.04となっている。
買いオペで新たにマネタリーベースを1000億円増やした場合、マネーサプライは最終的にいくら増加するか?

 

初見では難しい用語が並んでいると感じるかもしれませんが、信用乗数式の計算を押さえてしまえば問題ないでしょう。

  M=\dfrac {C/D+1}{C/D+R/D}H

上の式に、問題文で書かれている数値を代入してください。全て代入すると、最終的に式は以下の形で作られるはずです。

  M=\dfrac {0.2+1}{0.2+0.04}×1000

あとは完成した式を整理しましょう。

  M=\dfrac {1.2}{0.24}×1000

  M=5×1000

最終的にマネーサプライは、5000億円と求められました。

 

まとめ

今回は、マネーサプライとマネタリーベースの違いについて解説しました。

マネーサプライは民間銀行がコントロールし、中央銀行は直接手を加えられない部分です。一方で、マネタリーベースは中央銀行が直接手を加えられるお金に値します。

通貨供給量をコントロールする施策として、公定歩合操作・公開市場操作・支払準備率操作も押さえておきましょう。

またマネタリーベースの増減がマネーサプライにどの程度反映されるかは、信用乗数から分析できます。信用乗数式の計算も押さえ、公務員試験で問題なく解けるようにしてください。