ミクロ経済学で、効率的な資源配分を求める手法がパレート最適です。以下の記事でも、詳しい特徴や表し方についてまとめました。
今回は、パレート最適をもう少し深く掘り下げて価格とリンクさせたいと思います。その際に、よく使われる概念がオファーカーブです。
この記事では、オファーカーブの求め方や超過供給および超過需要の捉え方を解説しましょう。
オファーカーブとは
オファーカーブとは、2つの財の価格が変化したときの最適消費点を結んだ曲線のことです。図では、以下のように表します。
経済学の定義だけだと分かりづらいため、具体例も用いながら説明しましょう。
我々は商品を購入するとき、ある程度自分の中で予算を設定するはずです。経済学上では、設定した予算を全て使い切るのが最も高い効用を得られると考えます。
ここで2つの商品(X財、Y財)を購入すると仮定しましょう。2つの商品の購入における効用を確認するには、無差別曲線が使われます。
同時に予算も考慮したいので、予算制約線も引きます。この無差別曲線と予算制約線の2つを表したのが以下の図です。
なお、無差別曲線の話は下記の記事でも詳しく触れていますので、まだ読んでいない方はこちらにも目を通してください。
しかし価格は時と場合に応じて変動する可能性もあります。すると予算がいつもより高く設定できたり、低く設定できたりするはずです。
オファーカーブは、価格の変化に対応しつつ予算を変更させるプロセスを描きます。ここまでがオファーカーブの基本的な考え方です。
オファーカーブの描き方
オファーカーブの具体的な描き方について紹介します。
上の見出しでも説明したとおり、オファーカーブは最適消費点の変化を描いた曲線です。予算制約線の傾きが変化すると、最適消費点の位置も変わります。
今回は予算制約線を3本描き、予算制約線と無差別曲線をそれぞれ描いたらオファーカーブを引きます。作成する際には、最適消費点をなぞってください。最終的には以下の図が完成しました。
オファーカーブの求め方
オファーカーブは、公務員試験でも問題として出題される可能性があります。正直頻度は低い方だと思いますが、余裕のある方はチャレンジしてみてください。
超過需要と超過供給
オファーカーブが下記のように描かれていたとしましょう。
まずは超過需要と超過供給をそれぞれ求めます。超過需要とはモノが不足している状態、超過供給とはモノ余りの状態のことです。
超過需要と超過供給の詳しい内容については、以下の記事で詳しくまとめています。公務員試験で重要な範囲となるため、しっかりと復習してください。
Aさんの効用について確認します。Aさんの最適消費点は、予算制約線と接している(,)です。一方でBさんの最適消費点は(,)となります。
超過需要と超過供給の求め方は、X財とY財の各最適消費点の長さが各エッジワースボックスより長いか短いかです。エッジワースボックスより長ければ超過需要、短ければ超過供給を指します。以下の図をご覧ください。
最初にX財から見てみます。AさんとBさんのX財(,)はいずれもエッジワースボックスの半分の地点まで到達していません。それぞれを合わせても、エッジワースボックスのX財の長さには達しないはずです。
したがって、X財は超過供給を指します。
一方でY財はどうなるでしょう。(,)を見ると、いずれも半分以上の地点に到達しています。2つを合わせるとエッジワースボックスの縦の長さ以上になるため、超過需要となります。
効用の大小を求める
オファーカーブを示した図からは、各消費者の効用の大小も求められます。例として、下記の図を参照してください。
この点Pと点Qを比べた際、Aさんから見て効用が高いかを求めてみましょう。
無差別曲線が大きくなるのは、曲線が原点から離れていくときです。点Pと点Qはどちらも予算制約線上にあるものの、点Qの方がAさん側の原点の近くにあります。
つまり、上記の図ではAさんの効用は点Qよりも点Pが高いことを示しています。オファーカーブでは、効用の大小も問題に出されるので押さえておきましょう。
パレート最適か否かを求める
最後にパレート最適の求め方についても解説します。以前もパレート最適の求め方は解説しました。以下の記事もあわせて確認してください。
パレート最適は一方の効用を下げなければ、もう一方の効用が上がらない状態を指します。つまり、効率的な資源配分が実現される現象です。
パレート最適が実現されるには、図のようにお互いの無差別曲線が重なり合う必要がありました。
なお、無差別曲線同士の接点を結んだ曲線は「契約曲線」と呼ばれています。パレート最適が実現している部分は、同時に契約曲線が引かれている場所と押さえましょう。
では、以下の図の点Pと点Qはパレート最適になるでしょうか?
正解は「✕」です。まず、Aさんの効用を示す点PとBさんの効用を示す点Qはお互いに接していません。
「移動すれば接するのでは?」と思いたくなりますが、「効用の大小を求める問題」でも見たとおり点Qに無理やりAさんの効用を交わらせると以下の画像のようになります。
つまり、点Pと点Qはともにパレート最適を示す部分でなければ、契約曲線が結ばれるポイントにもならないわけです。
まとめ
今回は、オファーカーブの求め方について詳しく紹介しました。まずは、最も基礎的な部分である超過供給と超過需要について押さえてください。
オファーカーブの描き方をつかめれば、実際に公務員試験で問われた際にも解き方のポイントがわかってくるはずです。
また、オファーカーブの範囲は無差別曲線やパレート最適にも深く関わります。繰り返し復習を重ね、これらの問題にも対応できるようにしましょう。