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債権者代位権の要件とは?公務員試験や国家試験用に解説

公務員試験の民法Ⅱの範囲で出題される専門性の高い内容の一つが債権者代位権です。こちらの単元をマスターするには、要件をしっかりと押さえる必要があります。

この記事では、債権者代位権の要件について解説します。公務員試験を中心に、行政書士や宅建試験でも役立つので参考にしてみてください。

◆この記事でわかること◆
・債権者代位権の仕組み
・債権者代位権ができない例
・公務員試験で狙われやすい箇所

 

 

債権者代位権とは

債権者代位権とは債務者がお金を返済しないときに、債権者が第三債務者に対して権利を行使できる仕組みのことです。言葉だとわかりづらいので、図を用いて解説します。

債権者代位権における債権者、債務者、第三債務者の関係を示した図

AさんはBさんに対してお金を貸していたものの、資力がないために返済してもらえなかったとします。

このとき、Bさんからお金を借りていたCさんがいました。本来ならば、BさんがCさんからお金を返してもらう権利があります。

しかし、Aさんからすれば「早く自分にお金を返してよ」と思うでしょう。債権者代位権の要件を満たしていれば、AさんはCさんに対してBさんへ貸していた分の金銭を要求できます

 

債権者代位権の要件

債権者代位権の要件については、民法423条で定められています。

第423条

債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。
2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
3 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。

引用:e-Gov法令検索

ただし、条文だけ記載されても何を書かれているか理解しにくいでしょう。ここでは、当該条文の内容をよりわかりやすく説明します。

債権保全の必要があるとき

債権者代位権の要件とされているのは、債権保全の必要があるときです。

基本的には、債務者が無資力となっており弁済される見込みがない場合に発動できます。

その理由は、債権者代位権が債権者自身の財産の保護を目的としているためです。第三債務者へ権利を行使できるのはあくまで債務者であり、代位権の行使は例外的な規定と捉えられています。

また無資力とは、債務に対して財産が足りていない状態を指します。必ずしも、一銭もお金がない状態を示しているわけではありません。

しかし、債権者代位権の転用と認められる事例は債務者の無資力要件に該当しないとされています。

主な例として挙げられるのが、賃貸人や抵当権者が建物における不法占有者を妨害排除するケースです。債務者の財産の保護とは間駅がないため、無資力の要件は除外されます。

権利に関する要件

債権者代位権は、どの権利において発動するかでも適用されるか否かが変わります。基本的に対象として認められる権利が以下のとおりです。

  • 請求権(債権や登記請求権、物権的請求権)
  • 形成権(取消・解除・相殺)

しかし、中には債権者代位権を発動できない権利も存在します。その具体例が以下の2点です。

  • 一身専属権
  • 差押え禁止の債権

この対象とならない種類について詳しく解説しましょう。

一身専属権

一身専属権とは、特定の人のみが持つ権利のことです。婚姻のように、誰にも譲渡できず自分だけが持つ権利を指します。

債権者代位権の対象にならない種類も含め、具体的な例をまとめましょう。

  • 離婚にかかる財産分与
  • 認知の請求
  • 名誉毀損に関する慰謝料請求
  • 遺留分侵害額請求

ただし、離婚にかかる財産分与と慰謝料請求については、手続きの中で具体的または客観的な金額が確定したときは債権者代位権の対象となります。

遺留分侵害額請求も「第三者に譲渡する」など、権利の行使を外部に表明したとき債権者代位権が認められます。

これらの例外も試験では問われやすい部分の一つです。原則と例外をそれぞれ覚えてください。

差押え禁止の債権

債権の中には、差押えが禁止されている種類もあります。一身専属権とともに、債権者代位権の対象にはならないので覚えてください。

  • 給料債権(※)
  • 年金債権

(※)として記載しましたが、給料債権は必ずしも差押えが禁止されるわけではありません。手取りの4分の3または33万円を超えない金額が差押え禁止と考えられています。

とはいえ、ここまで細かくは出題されないので単純に債権者代位権の対象からは外れると押さえましょう。

履行期到来と権利不行使

債権者代位権の要件として、以下の2つも押さえなければなりません。

  • 履行期が到来している
  • 債務者が権利を行使しない

まず、原則として債権者は履行期が到来していない債権に代位権を発動できないとされています。期間を定めているのであれば、過ぎるまで待ちましょう。

一方で、保存行為の場合は例外的に履行期がなくとも債権者代位権の発動が可能です。主な例として、時効の完成猶予や更新のための請求が該当します。

また、債務者が自ら権利行使に着手している以上は、たとえ方法が不適切でも債権者代位権を使えません。債務者の意思も尊重しなければならないためです。

この辺りも公務員試験では、引っかけ問題として出されやすいといえます。何度も確認して、必ず正答できるように準備してください。

期間については、以下の記事でも詳しくまとめているので合わせて参考にするのをおすすめします。

 

債権者代位権の行使

次に、債権者代位権の行使について基本的な内容を記載します。ただし、債権ごとの具体的な方法については別の記事で説明する予定です。ここでは、名義や範囲の内容をまとめましょう。

債権者代位権の名義

債権者代位権は、債権者が債務者の代理人として権利を行使するわけではありません。あくまで、債権者が自己の名で行うものとされています。

したがって、債権者代位権そのものは債権者の権利となります。

よく正誤問題で問われやすいので、受験生は間違えないように注意してください。

債権者代位権の範囲

例えば、債権者Aさんが債務者Bさんに100万円を貸していました。一方で、債務者Bさんは第三債務者Cさんに150万円分の債権があります。

このとき、Aさんは債権者代位権によってCさんへいくらまで請求できるでしょうか。

正解は100万円です。つまり、Aさんは自己の債権額の範囲でしか権利を行使できません

債権者代位権は、あくまで債権者自身の財産の保護を狙いとしている制度です。したがって、債権者の権利も自己の範囲で留める必要があります。

考えてみれば当然の話ですが、試験ではわざわざ難しい言葉で出題されます。言葉の意味を正確に覚え、具体例をイメージしながら問題に挑んでください。

裁判にする必要なし

債権者代位権は、裁判上で権利を行使しなくても問題ありません。こちらのルールについては、民法の大改正で改められました。

2020年の改正が行われるまでは、債権者代位権は裁判上で権利を行使する旨が規定されていました(旧民法第423条2項)。

しかし、改正法ではその規定が取っ払われます

これまで当該事由で裁判を行った回数があまりにも少なく、民事保全制度でも似たような手続きが可能だったことが要因のようです。

法改正して間もないため、今後の試験でも狙われやすいかもしれません。余裕があったら、改正前との違いも比較してみるとよいでしょう。

 

まとめ

今回は、公務員試験を中心に民法の債権者代位権をまとめました。民法の中でも独特なスタイルであり、イメージするのは案外簡単かもしれません。

しかし、細かいルールも覚えないと点数には結びつきにくくなります。債権者代位権は比較的問われやすい内容でもあるので、基本的な問題は答えられるようにしてください。